ウィークリーレポート 2016/11/07-2016/11/11 提供:新生銀行 市場金融部 米国大統領選挙、混戦の末クリントン候補は逃げ切れるか FBI 再捜査の結果、警戒感が和らいだクリントン候補が優勢のまま押し切れるか。トランプ候補の追い上げによる市場警戒 感の高まりは一服するものの大逆転劇には注意。 (先週の振り返り) 先週はクリントン候補の私用メール問題に関して FBI が再捜査を始めたことで「トランプリスク」が再浮上。不穏な空気の中、 ドル円は 104 円台前半から始まりました。週初めは月末需要もあり 105.23 円まで上昇する場面がありましたが、日米英各国 の中銀会合や米国雇用統計、翌週の米国大統領選挙を控え、トランプリスクに警戒しながら一つ一つのイベントを消化する 流れが続きました。まず、日銀金融政策決定会合では政策の現状維持・インフレ見通しの先送りと市場の予想通りとなり影 響は軽微なものとなり、FOMC では政策金利の据置き・12 月の利上げをサポートする文言からドル買いサポートとなり市場 への悪影響はありませんでした。そのためドル円相場は米国大統領選の動向に一喜一憂する展開が続きました。週後半に 入り両候補の支持率が拮抗し、一時トランプ氏が上回ると市場ではリスク回避の動きが加速、株安が進みドル円も 102.55 円の安値まで下落しました。10 月の米国雇用統計の内容は予想を下回ったものの堅調なペースは維持。しかし大統領選 挙を前にドルの買い戻しは限定的で米国株式市場が連日下落する中、トランプリスクへの警戒感からドル円は 103.10 円と 週初めの高値より約 2 円下落して終えました。 また、英国ポンドではポンド高が進む展開となりました。カーニー英国中銀総裁が 2019 年 6 月まで留任し英国離脱を支援す る意向を示したことにより英国ポンドは上昇。週後半には英国高等法院において「英国政府は EU 離脱の手続きを開始する 為には議会承認が必要」との判断が下されたことで 2017 年 3 月末に予定している Brexit(英国のEU離脱問題)の時期が遅 れるとの市場判断から英国ポンドの買い戻しが進みました。更に英国中銀が利下げを見送りインフレ見通しを引き上げ、緩 和バイアスの転換を示したことも後押し、1 ポンド=1.25 ドル台まで上昇、ポンド円も約 1 ヵ月ぶりの 129 円台まで買い戻され ました。 (今週の見通し) 今週のドル円相場は、大統領選挙一色となりそうで、神経質な展開が続くと見ます。まず、クリントン候補が勝利となった場 合は市場のトランプリスクが軽減され、短期的にドルの買い戻しが進み、FRB による 12 月の利上げを視野に再びドル円は 105 円を目指す展開となりそうです。新興国通貨でも、トランプリスクから売られているメキシコペソを中心に買い戻される展 開が見込まれるほか、リスク選好の流れから株の買い戻し、米債利回りは上昇基調に入ると予想します。しかし、ドル円は クリントン氏の円安牽制色が強まるおそれもあり、直近高値圏である 105.50 円を抜けて上昇するには更なる材料待ちとなり そうです。ドル円は 103 円台を底値に 12 月の FRB の利上げ織り込みを進める流れとなるでしょう。逆に、市場が警戒感を 高めているトランプ候補の勝利となった場合、リスク回避の動きが強まり、12 月の FRB の利上げ織り込みが低下、ドル安の 流れが短期的に市場を支配するでしょう。ドル売り・円買いが進行し、瞬間的に 100 円割れまで円高が進行する可能性も想 定しておく必要がありそうです。欠員がでている米国最高裁判所の判事も共和党寄りの判事が選定されると想定されること から共和党色の濃い流れが再び米国を支配していくでしょう。クリントン氏が大統領となった場合の好材料としては減税策 が挙げられますが、政治的手腕や政策の信憑性は不透明さが残り、市場は消化するのに時間を要し短期的にリスクオフが 進むと見ます。今週月曜の朝方よりクリントン氏に対する FBI 再調査の結論は変わらずとの報道にドル円は 104 円台半ばを 回復しています。クリントン氏優勢となる中ですが、ドル円相場は 99.50~105.50 円レンジにて乱高下することが想定され、 万が一の結果となる可能性もあり、その場合の大きく円高が進む展開にも引き続き注視したいところです。
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