『阪南論集特別版 辰巳浅嗣学長退任記念号』発刊に際して

『阪南論集特別版 辰巳浅嗣学長退任記念号』発刊に際して
『阪南論集特別版 辰巳浅嗣学長退任記念号』発刊に際して
『阪南論集特別版 辰巳浅嗣学長退任記念号』の発刊にあたり一言ご挨拶申し上げます。
辰巳浅嗣教授は,1972 年に阪南大学商学部に専任講師として着任されました。以来,43 年の長
きにわたり阪南大学の教育研究を支え,学内行政に携わってこられました。その詳細は,次ペー
ジ以降の略歴・業績一覧をご高覧いただけますれば幸甚に存じます。
高校時代,担任の先生から大学教授への道のりを示されたことで,漠然とではあったけれども
研究者を目指し,大学院進学を念頭において進路を決めたという辰巳教授。元来,英語と共に文
学や漢文が好きだったこともあり,文学研究を目指されたようでありますが,結果,進学したの
は関西大学法学部。ところが,ご自身の性格と学問の相性を考え,看板学科である法律学科では
なく政治学科へと進まれます。とりわけ,大学時代に出会った上林良一教授の感化を受け,政治
社会学に興味を持たれます。大学院生の頃は,ひたすら学び,研究することに没頭され,資料や
書籍を探しに日本全国を飛び回る生活を送っていた辰巳教授。その信念は,本学に着任以降も変
わることはありませんでした。それは,
「研究成果があって初めて科目担当の資格を得るのだろう
し,難しい研究内容であっても,学生が理解できるように伝えることが,大学という教育機関に
務める教員の使命なのだ」と言い切られたことに集約されていると思います。
現在のヨーロッパ統合など想像もつかない絵空事であった 1970 年代前後の大学院生の頃,ヨー
ロッパ共同体,現在の EU について研究発表をされた時は,全面的に否定され夢物語として扱わ
れたとか。しかしながら,そこから 40 年,ご自身の生涯をかけた研究テーマであるヨーロッパを
一つにするという「夢物語」が実現に向かう姿を目にしたときには,「ようやく時代が歴史に追い
ついた」と確信されたといいます。国家の壁をいかに超えるかを考え続ける時間の中で出会った
一書,
“When Europe speaks with one voice”
(1979 年出版)は,原書発行から 2 年後,『欧州の声
がひとつになる時─ EC の対外関係』と題され本邦初翻訳書となりました。本翻訳書は,ヨーロッ
パの共通外交政策を取り上げた日本で最初の本でもあります。辰巳教授は,「訳した当時は興味本
位で面白そうだったから」とのことですが,翻訳から 2 年後の 1983 年のロンドン留学の際には,
翻訳書のテーマが 80 年代初頭のヨーロッパにおける主流研究でもありました。その点をふまえて
も,
研究者としての先見の明には瞠目すべきところがあります。やがて,2001 年に出版された『 EU
の外交・安全保障政策─欧州政治統合の歩み』と題する著書で 2002 年 3 月,母校の関西大学から
博士号を授与されています。
2009 年,本学学長就任以降,教育内容の拡充,社会連携の拡大,機構改革,新校舎建設と多く
の課題を遂行されながらも,研究者としての原点を忘れることなく次々と研究成果を公刊される
姿勢に私たちは啓発され続けてきました。そして,ご退任後も 2015 年 4 月から,学校法人阪南大
学顧問として,また本学名誉教授としてご教導下さっております。また,学外においても,2015
年 8 月から松原市教育委員会委員長という重責を担っておられます。
私たち編集委員一同は,辰巳浅嗣学長ご在任中に辰巳教授と共に大学運営に携わってきた者で
す。辰巳教授の功績をたたえ,先生の末永いご健康とご多幸を心からお祈り申し上げながら,本
退任記念号を編集させていただきました。
最後になりましたが,学内外から多数のご寄稿賜りましたことを厚く御礼申し上げる次第でご
ざいます。
2016 年3月吉日
辰巳浅嗣学長退任記念号編集委員会
編集委員長:神澤正典
編 集 委 員:梶山国宏・田上博司・足立照也・神尾登喜子
無断転載禁止
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