インドネシア - 国際金融情報センター

インドネシア
米利上げ後のルピアの行方
インドネシア・ルピアは対ドルで
下落傾向にあり、9月末には年初来
%安の1万4657 /㌦をつけ
た。
9月の中銀の政策決定会合では、
市場の予想どおり、政策金利が据え
置かれた。金融市場においては、ア
メリカの利上げを巡る不透明感と、
中国経済の減速懸念が影を落とし、
新興国市場の撹乱要因となっている。
こ う し た 状 況 下 で、﹁ 中 銀 の 利 下 げ
はルピア安の加速と市場の不安定化
を誘発しかねず、金融政策の自由度
が制約されている﹂という見方が市
場関係者の間で広く共有されている。
9月の米連邦市場公開委員会︵F
OMC︶では、利上げが見送られた
が、後日行われたイエレン議長の講
演では、年内利上げの可能性が示唆
されている。利上げの有無は今後の
経済指標に左右されようが、FF金
利先物にみる、市場が織り込む 月
に利上げが実施される確率は約4割
である。
インドネシアの9月の消費者物価
指数︵CPI︶上昇率は、前年同月
比6・8%と、中銀目標圏︵3∼5
%︶を上回っているが、年末時点の
CPI上昇率は、 年 月実施の燃
料価格引上げの影響の一巡から、4
%台への低下が見込まれている。
経済閣僚の発言に目を移すと、
﹁アメリカの利上げ開始は、利上
げを巡る不透明感の払拭により、
ルピア安圧力を緩和させるだろ
う ﹂ と の 声 や、
﹁インフレの収束
は、景気浮揚のための利下げ余地
の拡大をもたらす﹂との意見が散
見される。これらの考え方は、一
部の政策担当者の間でみられる、
アメリカの早期利上げ期待と、そ
の後のインドネシア中銀の利下げ
待望論の根拠とされている。
しかし、景気浮揚を目的とする
政治サイドの要請を受けた利下げ
は、 年2月の利下げ後にみられ
た中銀の信認悪化・ルピア安が想起
され、安易な利下げには相場を撹乱
するリスクが伴う。
年初来、中銀が実施した為替介入
は外貨準備高の減少を招いている。
9月末時点の外貨準備高は輸入比7
・0カ月分であり、対外債務とのバ
ランスを示す諸指標も 年末時点に
肉薄する水準まで悪化している。
折しも、8月の資本財輸入の回復
などからは内需回復の兆しがみられ
るが、輸入拡大に伴う貿易黒字の縮
小は中長期的な経常赤字の拡大をも
たらし、市場に対外ショックに対す
ルピア高
ルピア安
90
年/月
90
12,000
80
14,000
70
100
16,000
60
る脆弱性を意識させることとなろう。
このように、ルピアをとりまく悪
材料は出尽くしておらず、現状のル
ピア安に鑑みると、中銀が打ち出す
数々の通貨安定化策は枝葉の策とい
わざるをえない。
図表に示した8月の実質実効レー
トは 年後半の水準を上回り、ルピ
ア高になっている。政府・中銀は方
向感の相違から名目レートを﹁実態
とかけ離れたルピア安﹂と表現する
が、現状の実質実効レート水準は、
ルピア安進行の可能性を示唆すると
読むのが妥当な見方だろう。
外貨準備高(左目盛)
80
12/1
13/1
14/1
15/1
(注) 直近値は15年8月。
(出所) 国際決済銀行、Bloomberg
100
10,000
110
8,000
10億ドル ルピア/ドル名目レート
120 (右目盛)
ルピア/ドル 2012=100
110
6,000
ルピア実質実効レート
(右目盛)
13
ルピア為替レート・外貨準備高の推移
〔図表〕
鷲尾 光博
国際金融情報センター アジア第2部 研究員
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2015.10.19 金融財政事情