固定為替相場制度 vs. 変動為替相場制度 国際金融論2006 1 世界各国の為替相場制度 ブレトンウッズ体制 1971年8月、ニクソン・ショック(金ドル交換 停止) 1973年、主要国が変動為替相場制度へ 移行 1978年、キングストン合意(自由に為替相 場制度を選択) 国際金融論2006 2 トリレンマの三角形 自由な 資本移動 通貨統合 カンレシー・ボード 変動相場制 金融政策の 自律性 資本管理・為替管理 国際金融論2006 為替相場の安定 3 為替相場制度の分類 自由変動 変 動 為 替 制 度 ソフト・ペッグ 管 理 フ ロ ー ト 制 度 B B C ル ー ル ハード・ペッグ 固定為替制度 バ ス ケ ッ ト ・ ペ ッ グ ド ル ・ ペ ッ グ 国際金融論2006 カ レ ン シ ー ・ ボ ー ド ド通 ル貨 化同 盟 4 両極の解 と 中間的為替制度 両極の解(two corner solutions):自由変 動為替相場制度(free float)または厳格な 固定為替相場制度(hard peg) 中間的為替制度(soft peg) :伝統的な固 定為替相場制度、管理フロート制度 WilliamsonのBBC(Basket, Band, Crawling)ルール 国際金融論2006 5 図4-3:為替相場制の推移 200 180 160 その他 変動相場 管理フロート 単一通貨に対する制限変動相場 協調為替取極め ある指標によって調整 SDR・通貨バスケットへの固定相場 その他の単一通貨への固定相場 ドルへの固定相場 140 120 100 80 60 40 20 0 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 国際金融論2006 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998Q3 6 中間的制度は消え行く? IMFの分類で中間的為替制度は消え行く。 (Fischer(2001), Mussa et al. (2000)) 実際には、IMFの分類と異なる為替政策を採用。 通貨当局は為替相場変動を恐れる。(←外貨建 て債務、名目アンカーとして為替相場) アジアはドル本位制(McKinnon(2000)) 。 アジア通貨危機以降、ドルとの連動性が高まっ ている。 国際金融論2006 7 両極の為替制度は通貨危機に 耐えられる? 変動相場制度は、定義上、通貨危機に陥らない。 通貨同盟内において、通貨危機に陥らない。但 し、外部の通貨に対し通貨危機の可能性がある。 ドル化経済国と米国と間では、通貨危機に陥ら ない。但し、「最後の貸し手」としての中央銀行が 存在しないので、金融危機が深刻化。 カレンシー・ボードでは、外貨準備でバックアップ されている部分については問題ないが、それを 超える部分については投機攻撃の対象となる。 香港ではダブル・マーケット・プレイによる投機 攻撃。 国際金融論2006 8 両極の為替制度 vs. 中間的為替制度 為替相場の変動性・固定性には、様々な メリット・デメリットによるトレード・オフ関係 がある。最適な為替制度が両極(corner solution)にあるとは一概には言えない。 どの為替制度が良いかは、ケース・バイ・ ケース。 中間的為替制度より両極の為替制度の 方が望ましいという理論的根拠はない。 国際金融論2006 9 固定為替相場制度のメリット 為替相場の安定性 インフレ的金融政策の抑制 金融政策に対する信認 国際金融論2006 10 為替相場の安定性(1) 企業が為替リスクに直面している。 企業の利潤 SP Q C (Q) * 12 S E S , S V S : 利潤、 S : 為替相場、 P* : 価格(外国通貨建て) 、 Q : 生産量、 C : 生産費、 S : 為替相場の期待値、 s : 為替相場の標準偏差 国際金融論2006 11 為替相場の安定性(2) 利潤の期待効用( E U ) E U E V 12 S P Q C (Q) S P Q * 国際金融論2006 * 12 為替相場の安定性(3) 利潤の期待効用最大化 S P C (Q) S P * * ⇒生産の限界費用に企業の危険負担費用 が上乗せされたものと価格が等しい生産 水準で最適化される。生産量が減少する。 国際金融論2006 13 インフレ的金融政策の抑制 政府にインフレを発生させる誘引(通貨発 行利益、インフレ税)がある。 固定相場制度下において、金融政策の自 由度を失うことによってその誘引を抑制す る。 インフレ抑制的な金融政策を行う外国の 通貨に自国通貨を固定することによって、 自国でインフレ抑制。 国際金融論2006 14 図4-4:政府収入に占める通貨発行利益の比率とインフレ率 インフレ率 % 50 40 30 20 10 日本 アメリカ 0 0 5 10 15 20 25 % 30 政府収入に占める通貨発行利益の比率 (資料)Cukierman(1992)pp48-49. 国際金融論2006 15 金融政策に対する信認 インフレ抑制的な金融政策スタンスをもつ 外国の通貨に自国通貨を固定することに よって、金融政策の自由度に縛りをかけ、 民間経済主体による金融政策に対する信 認を高める。(インフレ抑制の名声の輸 入) 国際金融論2006 16 変動為替相場制度のメリット 国際収支調整の費用 金融政策の自由度 安定的投機 国際金融論2006 17 国際収支調整の費用 固定為替相場制度下における国際収支 調整の費用=赤字の場合には失業の増 大 変動為替相場制度下における国際収支 調整の費用=為替相場の調整 国際金融論2006 18 金融政策の自由度 変動相場制度下においては、金融政策の自由 度が高まる。 外国の金融引締めによって外国利子率が上昇 すると、資本が自国から外国へ流出する。自国 通貨に対して減価圧力が作用する。 変動相場制度下では、貨幣供給を管理可能。 固定相場制度下では、為替介入によって貨幣 供給が減少。自国でも金融引締め。 国際金融論2006 19 マンデル・フレミング・モデル i IS LM ' A i0* i i* y y0 A E0 FF E XX 国際金融論2006 20 変動相場制下における金融政策の自由度 i IS IS LM B ' i i * A i* i i* y0 y y1 A E0 FF E1 FF B E XX XX 国際金融論2006 21 固定相場制下における金融政策の自由度 i B ' i i * A i* i i* LM IS LM y1 y y0 A E0 B FF FF E XX XX 国際金融論2006 FF 22 安定的投機 Friedman:投機の自然淘汰説 ファンダメンタルズを知らない投機家は市 場から排除される。 結果として、ファンダメンタルズを知ってい る投機家のみが市場に残る。 投機は為替相場をファンダメンタルズに向 かって安定化させるように作用する。 国際金融論2006 23 投機は本当に安定的か? バブルの発生 情報の不完全性⇒群衆行動 ①美人投票モデル ②名声モデル ③情報の段階的伝達(カスケード)モデル 合理的予想を持つ投機家vs.ノイズ・トレー ダ 国際金融論2006 24 固定為替相場制、カレンシー・ ボード、ドル化、通貨同盟 より厳格な固定制のメリット ①制度の信認 ②金利のリスク・プレミアムの軽減 より厳格な固定制のデメリット ①為替相場以外による調整 ②国内の中央銀行(最後の貸し手)の不在 国際金融論2006 25 固定為替相場と最適通貨圏 供給ショックの非対称性 生産要素の移動 経済の開放度 財政移転 国際金融論2006 26 固定相場制vs.管理フロート制 制度の透明性とアカウンタビリティ 信認⇒ハネムーン効果 介入の効果や制度の維持のための裁量 と曖昧さ 国際金融論2006 27
© Copyright 2024 ExpyDoc