平塚中等教育学校 校長室の窓から 2015年(平成27年)6月1日 vol.110 教師は一個の職業人です。「聖職」という方もいますが、私はその名に隠れて精神主義に偏っていく態度には賛成できません。心さえあれ ばいい、熱意さえあればいいというわけではないと思うからです。熱心、結構です。いい人あたり前です。悪人であったら、たまったものではあ りません。(途中略)教師という職業の拠って立つものは何か。子どもに一人で生きていける力をつけること、そのための技術を持っていること でしょう。それを忘れた「いい人」ではちょっと困るのです。(大村 はま 『灯し続けることば』の「熱心結構、いい人当たり前です」より一部抜粋) ( ) 平塚中等では、5月25日から7名の教育実習(3 ~4週間)が始まった。実習生は大原高校(5名) と平塚江南高校(2名)の出身者だ。1期生が教育 実習に来るのはもう少しお預けだが、この時こそ、 生徒諸君は、大学の様子やその後の将来がどのよう に繋がっていくのかなど、先輩の話を身近に伺える チャンスだ。出会いを大切にして欲しい。 教育実習生は、どんな教師を目指すのだろうか、 楽しみなスタートだ。仮に、教員にならずとも、今、 生徒にとっては“先生”だ。“教師とは”をじっく り学び、考え、これからの人生の糧にしてもらいた い。必ず、役に立つ時が来るはずだから。 実習生が来ると、いつも、校長はシャキッとす る気持ちが湧いてくる。これから教師になろうと する者と相対して、自分はどんな教師であったか と、恥ずかしいと感じる時でもある。 『私が先生になったとき』 作者不詳(宮沢賢治という説あり) みてください 先生 辻野先生 あやまりを直してください 三重まるをください 三年生のときの宿題の 作文のように 2編の詩は、昨年に引き続き、教育実習生へのプ レゼントの詩だが、校長自身が自分を見つめ直すた めの詩でもある。そして、かつて実習生だった先生 方にも、こんな気持ちをいつまでも持ち続け、生徒 たちの学びの意欲に応えて欲しい。また、生徒たち には学びの意欲をむき出しにして欲しい、と願う詩 でもある。2編の詩の心と先生方の熱い思いが、生 徒に伝わるようにとも。 最後に、大村 はま 氏の一文を借用する。 いきいきとした教室、これは全部の先生の悲しいほどの 願いです。この「いきいきとした教室」というのは、単なる明る い教室、元気のいい教室とは違います。「ハイハイ」「ハイハ 私が先生になったとき 自分が真理から目をそむけて 子どもたちに本当のことが語れるか イ」と手をあげている、そのような程度ではないのです。ひとり ひとりが、それぞれに、確実な成長感というのでしょうか、一 歩一歩高まっている、自分が育っている、という実感といっ 私が先生になったとき 自分が未来から目をそむけて 子どもたちに明日のことが語れるか たらよいでしょうか、それが持てる教室のことなのです。もちろ ん、子どもはそんな表現でとらえてはいませんが、自分が伸 びていると感じることは、ほんとうに、人をいきいきとさせます。 私が先生になったとき 自分が理想を持たないで 子どもたちにどうして夢が語れるか 教師の仕事はこわいもので、あり合わせ、持ち合わせの 力でやっていても、やさしく、あたたかな気持ちで接してい れば、結構、良い雰囲気を作れるものです。子どもはもち ろん、父母や同僚とも、いい関係を持っていけるものです。 いい教師で過ごせるものです。そこが、こわいところです。 安易に流れず、なんとかすますのでなく、人を育てるほん とうの仕事を見つめ、畏れながら、力を尽くしたいと思い ます。端的に言えば、あり合わせ、持ち合わせの力で、 授業をしないように、ということです。何事かを加えて教室 へ向かい、何事かを加えられて教室を出たいと思ってい ます。「いきいきと」させるものは、そういうところから生まれ てくると思います。(大村 はま著『日本の教師に伝えたい こと』の「いきいきとした教室とは」より) 私が先生になったとき 自分に誇りを持たないで 子どもたちに胸を張れと言えるか 私が先生になったとき 自分がスクラムの外にいて 子どもたちに仲良くしろと言えるか 私が先生になったとき 自分のたたかいから目をそむけて どうして子どもたちに勇気を出せと言えるか 『辻野先生』 大木実(「きみが好きだよ」 童話屋) 詩ができました 先生みてください 本を読む楽しみを 文を綴る喜びを 教えてくださった 辻野先生 神奈川県立平塚中等教育学校 TEL 0463 (34) 0320 FAX 0463 (34) 3866 私の父母は本を読まず 私の家は貧しく 家には一冊の 字引もありませんでした 私は路地から路地を 走りまわって遊んでいた 腕白な少年でした 背筋がシャキッとなった感じがする。私だけだろ うか。 平塚中等 校長 鈴木 靖 〒254-0074 平塚市大原1番13号 URL http://www.hiratsuka-chuto-ss.pen-kanagawa.ed.jp/
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