45《雪》 - 神奈川県立平塚中等教育学校|HOME

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平塚中等教育学校
校長室の窓から
2014 年(平成 26 年)2月 24 日
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vol.45
夜になって風がなく気温が零下十五度位になった時に静かに降り出す雪は特に美しかった。真暗なヴェランダに出て懐
中電燈を空に向けて見ると、底なしの暗い空の奥から、数知れぬ白い粉が後から後からと無限に続いて落ちて来る。それ
が大体きまった大きさの螺旋形を描きながら舞って来るのである。そして大部分のものはキラキラと電燈の光に輝いて、
結晶面の完全な発達を知らせてくれる。
(中略)何時までも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が
静かに空へ浮き上がって行くような錯覚が起きてくる。
(中谷宇吉郎「雪雑記」
:青空文庫 http://www.aozora.gr.jp より)
(天からの手紙に、どう返事を書こうか)
いかという気がする。
・・・誰か数学の達者な人がやっ
「冬彦先生の随筆に、硝子の面に作った絹糸ぐら
てみたら、きっと面白いだろう。その後、理研の研
いの割れ目を顕微鏡で毎日覗いていると、小山の中
究室で線香花火も金米糖も予報的な実験がされ、そ
に峡谷があるように見えて来る。そうなると色々の
の報告も出た。
」
(中谷「寅彦夏話」
)に触発され、そ
現象が分かって来るというような意味の一節があっ
の数式化を試みた研究者もいる。
(物性研究「金米糖
たように憶えているが、どうもそういうことがあり
の形態」
:戸田盛和 凝縮系物理学・数理物理学)
<写真:中谷宇吉郎 雪
そうである。」
(中谷「雪雑記」より)
「金米糖(こんぺいとう)という菓子は今日では
ちょっと普通の菓子屋駄菓子屋には見当たらない。
聞いてみるとキャラメルやチョコレートにだんだん
圧迫されて、今ではこれを製造するものがきわめて
まれになったそうである。もっとも小粒で青黄赤な
どに着色して小さなガラスびんに入れて売っている
のがあるが、あれは少し製法がちがうそうである。
この金米糖のできあがる過程が実に不思議なもの
である。私の聞いたところでは、純良な砂糖に少量
の水を加えて鍋の中で溶かしてどろどろした液体と
する。それに金米糖の心核となるべき芥子粒(けし
つぶ)を入れて杓子(しゃくし)で攪拌(かくはん)
し、しゃくい上げしゃくい上げしていると自然にあ
あいう形にできあがるのだそうである。
中に心核があってその周囲に砂糖が凝固してだ
んだんに生長する事にはたいした不思議はない。し
の科学館(石川県加賀
市) HPより>
雪国の大変さを少
しだけ味わった2月
の関東圏。昔ほどで
は な い が 24 時 間 で
1mも積もる豪雪地帯もあり、雪についての知識も
持ち合わせているに越したことはない。外気温3℃
以下の新雪は約80㎏/m3、3℃以上の締まり雪(雪
の重みで固く締まった雪)では250㎏/ m3、粗目雪
(氷粒のようにざらざらした雪)は500㎏/ m3にな
る。例えば、100 m2=10m×10mの屋根に粗目
雪が20cm積もると何㌧になるだろうか。アフリカ
象は約7㌧だ。東急こどもの国駅ホーム屋根落下事
故があったが、雪国で屋根の“雪下ろし”が必要な
理由が分かるだろう。
<写真:上越市高田のバ
かし、なぜあのように角(つの)を出して生長する
ス停 H18年2月 162cmを
かが問題である。」
(寺田寅彦「備忘録」より)
記 録 ・ 2012 上 越 タ ウ ン
<写真:2月久々の
雪・校舎中庭 (校長
室の窓から)>
ジャーナル1月号より>
ソチ冬季オリン
ピックでは、人工降雪機がフル稼働だったようだ。
“雪博士”中谷氏
世界で初めて人工雪の生成を成し遂げた中谷博士
が理化学研究所・
は冬彦先生(物理学者 寺田寅彦)の弟子。冬彦先生
寺田研究室の助手
は漱石の弟子。
「どういう目的の研究かと聞かれるの
をしていた当時、
で、
『雪の成因が判ると冬期の上層の気象状態が分か
寺田先生は、
「なぜあのように角を出して成長するの
るようになって、航空気象上重要なことになる』と
か。金米糖の角の数がほぼ一定している。
」と疑問を
返事をするが、実は雪の結晶を勝手に作って見るこ
抱き、
「少し突起の出来た所は早く冷えるから先に固
とが一番の楽しみなのである。」(中谷「雪雑記」
)
まる。するとそこへ余計に砂糖が付く。それでます
ますそこが突起する。したがって余計に冷えてまた
固まるというぐあいにして角が伸びてくるんじゃな
神奈川県立平塚中等教育学校
TEL 0463 (34) 0320
FAX 0463 (34) 3866
“雪は天から送られた手紙である”とは、人工雪を
夢見た中谷博士の言葉だ。平塚中等 校長 鈴木 靖
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