平塚中等教育学校 vol.101 校長室の窓から 2015年(平成27年)3月30日 サクラは、前年の夏に翌春咲く花の元となる花芽を形成する。花芽はそれ以上生長することなく休眠に入り、 秋から冬にかけての低温に一定期間さらされると休眠から覚める(これを「休眠打破」という)。その後、花 芽は春先の気温の上昇とともに生長するが、この生長量は気温が高ければ大きく、春先の気温が高い年には早 く開花する。( 「新しいサクラの開花予想」気象庁観測部 解説資料第24号(1996)より) ( ) 校門前のソメイヨシノ(染井吉野:バラ科)の街 路樹が咲き乱れる、春が来た。サクラは大原高校創 立の頃からあったはずなので、樹齢約30年以上にな るだろう。3月14日(土)の卒業式では1期生との別 れがあったが、4月すぐの入学式で、7期生との新 たな出会いがある。日本人特有なのかも知れぬが、 咲いた桜には、散るのを待ってくれ、と願いたい。 このようなことを前提に、「新しいサクラの開花予 想」(気象庁 1996)がある。 さくらの開花日は、日平均気温から「DTS(温度 変換日数)」を積算開始日から積算し、規定値に最 も近い値になった日とする。ちなみに、DTSを用い た開花予想は、柑橘類、梨などの果樹でも研究され ているそうだ。 DTS(温度変換日数):ある温度における1日分 の花芽の成長が、標準温度(ソメイヨシノは15℃) に換算すると何日分に相当するかを示す量で、式は 次のようになる。 t は当該日平均気温(℃)、e = 2.71828・・・の値は 気象庁によると、昭和30年(1978)から毎年3月 ~4月にかけて、全国(沖縄・奄美地方除く)の気 象台等が観測しているさくらを対象に、さくらの開 花予想の発表を行ってきたが、全国を対象とした情 報提供が民間気象事業者から行われるようになった ため、応用気象情報として行ってきたさくらの開花 予想の発表を行わないことになった、とある。(平 成21年12月気象庁発表) 例年同じ頃に咲く桜だが、観光には付きものの開 花予想が毎年行 われている。図は 日本気象協会の ものだが、桜はい つ咲くのだろう か?ということ について、気象庁 のホームページ に資料がある。 「さくらの開花」について ・さくらは、前年の夏頃に翌春咲く花のもととなる 花芽(かが)を形成し、休眠状態に入る。 ・秋から冬にかけて低温(5℃前後)に、ある一定 期間さらされると休眠状態から覚める。(『休眠 打破』と呼ばれる) ・花芽は休眠打破のあと、春先の気温の上昇ととも に発育し、開花(花が5~6輪開いた状態)する。 「ネイピア数」といい、科目「数学Ⅲ」(本校の理 系生徒は5年次)で学ぶ。DTSの値は電卓では計算 が難しいが、手元のMicrosoft Excelでは簡単に計 算できる。例えば、適当なセルに、 =EXP(9.5*10^3*(A1+273-288)/((A1+273.15)*288.15)) と入力し、セルA1に温度の値を入力すれば計算で きる。5℃の値は0.3050=0.3日、25℃の値は3 日になり、15℃は1日に換算される。 桜の咲く温度は15℃で、その温度が平均して約 20日間続くと桜が開花する、という統計を利用して、 気象庁が開花予想のDTS計算式を新たに開発し、 1996年から使い始めたという。 簡単に説明するのが難しいが、仮に、ある地域の 2月から5月までの予想日平均気温が分かっている とすると、(過去の経験に基づく)起算日から連続 した日の予想日平均気温をDSTに代入し、その値の 合計値が19.6になるところを開花日と予想する仕 組みのようだ。 「花芽の休眠はある日突然破られるのではなく、 徐々に破られると考えられている。また、花芽の生 長は休眠打破の完了後に始まるのではなく、休眠打 破の進行中にも徐々に進んでいると考えられている。 つまり、花芽が休眠から生長するのに明確な区切り があるのではなく、休眠打破と生長の両方が同時に 進む過渡的な期間が存在すると考えられる。」(文 頭の掲載資料から引用) 勉強や部活動で、どんなに頑張ってもなかなか伸 びないスランプがある。だが、それは休眠ではない。 平塚中等 校長 鈴木 靖 神奈川県立平塚中等教育学校 TEL 0463 (34) 0320 FAX 0463 (34) 3866 〒254-0074 平塚市大原1番13号 URL http://www.hiratsuka-chuto-ss.pen-kanagawa.ed.jp/
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