中国経済の底入れは期待薄

No.2016-032
2016年10月19日
http://www.jri.co.jp
中国経済の底入れは期待薄
(1)中国では、2016年7~9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.7%と、2四半期連続
で前の期から横ばいで推移し、景気減速の動きが一服(図表1)。
(2)この背景として、以下の4点が指摘可能。
①小型車減税措置終了前の駆け込み需要によって、自動車販売が大幅増加(図表2)。当
局は2015年10月1日から2016年末まで、小型車の購置税を10%から5%に引き下げ。
②2014年11月以降の計6回の利下げを受けて、住宅販売が拡大(図表3)。企業が借入拡
大に慎重な姿勢を保つなか、金融機関は住宅ローンの拡大に注力。
③景気てこ入れのために、インフラ投資が拡大。本年1~9月のインフラ投資(除く電力)
は前年同期比19.4%増と、2015年通年の前年比17.2%増から加速。
④シャドーバンキングが拡大するなか、中小鉄鋼メーカーや他の中小企業、不動産開発企
業の資金繰りが改善し、設備投資を拡大。
(3)もっとも、このまま成長率が安定に向かう展開は期待薄。来年には購入刺激策の終了に
伴い自動車販売の反動減が生じるほか、住宅販売も10月にローンの頭金比率引き上げ等
の住宅価格抑制策が約20都市で打ち出されたこと等を受けて、頭打ちになる公算。さら
に、輸出は弱い海外景気が続くもとで低迷し、固定資産投資も構造調整のため減速基調
が続く見通し(図表4)。
(図表1)実質GDP成長率(前年比)
1
2
(図表2)自動車販売台数(前年比)
(%)
100
(%)
13
小型車減税の期限
(2009年1月~2010年末)
80
12
見通し
11
小型車減税の期限
(2015年10月~2016年末)
60
10
40
9
20
8
0
7
6
2008
09
10
11
12
13
14
15
16
(資料)国家統計局「国民経済計算」を基に日本総研作成
17
(年/期)
▲ 20
2008 09
10 11 12 13 14 15 16 17
(資料)中国汽車工業協会「汽車工業経済運行情況」 (年/月)
を基に日本総研作成
(図表3)住宅販売と価格上昇都市数
(2010年
=100)
200
(図表4)主要統計(前年比)
前月比価格上昇の都市数(右目盛)
分譲住宅販売床面積(季調値)
多くの都市で頭金比率引き上げ
(都市)
70
(%)
30
輸出
固定資産投資(年初累計)
実質小売売上高(CPIで実質化、右目盛)
13
60
180
50
160
40
140
20
12
11
10
10
30
120
20
100
9
0
8
10
80
2012
13
14
15
16
(資料)国家統計局「全国房地産開発投資和銷售
状況」、「70大中城市住宅銷售价格変動状況」
(注)日本総研が住宅販売床面積を季節調整。
0
(年/月)
(%)
14
▲ 10
2011
12
13
14
15
7
16 (年/期)
(資料)海関総署「貿易統計」、国家統計局「社会消費品零售総額」
「居民消費价格」「全国固定資産投資」を基に日本総研作成
【ご照会先】調査部 副主任研究員 関辰一 ([email protected] , 03-6833-6157)
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
17
16
15
14
13