FRBアップデート:政策金利の据え置きを決定

ジョン L. ベロウズ PhD
ポートフォリオ・マネージャー兼リサーチ・アナリスト
金融政策関連
FRBアップデート:政策金利の据え置きを決定
ジョン L. ベロウズ PhD
2012年∼現在 ウエスタン・アセット・
マネジメント・カンパニー
米連邦準備制度理事会(FRB)が9月17日に下した決断について、ベロウズは以下の見解
を提示している。
1.
ポートフォリオ・マネージャー、
リサーチ・アナリスト
2009年∼2011年 米国財務省
経済政策担当財務次官補代理、
マクロ経済分析副次官補、
経済政策担当室シニアアドバイザー
学歴:カリフォルニア州立大学バー
クレー校 経済学博士号 Ph.D.
ダートマス大学 B.A. (経済学 優等学位)
9月17日にFRBは政策金利の据え置きを決定し、2つの理由を挙げた。第1に世界的な
需要懸念の増大を指摘し、連邦公開市場委員会(FOMC)は「海外情勢を注視してい
る」とした。この指摘は市場参加者にとってサプライズとはならないだろう。世界経
済のダウンサイドリスクの強まりが8月以降の様々な市場動向(株式市場のボラティ
リティ上昇、原油を中心とするコモディティ価格に対する下落圧力、エマージング通
貨の軟化など)を招いてきたことは明白である。第2に、米国のインフレ率がFRBの目
標を下回り続けていることもFOMC内の懸念を強めている。FRBは2016年のインフレ
見通しを小幅下方修正し、声明に新たな文言を加え、物価安定の責務に向けて今後
も動向を監視していくことを示した。しかし、重要なことは、FRBが労働市場の改善が
向こう2年間のインフレ率の上昇につながるとする見方を堅持しているという点である。
2. より幅広い視点からすれば、今回の決定はFRBが見通しの変化に応じて金融政策を変
更する意志を強く反映するものとなった。見通しの変化に対して迅速に対応すること
はイエレンFRB議長の目標達成にとって不可欠な要素である。FOMCは初夏時点では
9月利上げの可能性もあったが、今回新たなリスクが顕在化しFRBは見直しを迫られた
格好である。見通しの変化や先行きを巡るリスクへの迅速な対応が今後もイエレン議
長率いるFOMCにとって重要な焦点であり続けよう。言うまでもなく見通しの変化には
好転と悪化の両方向の可能性があり、今回のFOMCで先行きを巡るリスクの増大が利
上げ先送りの根拠の一端となったように、先行きに安定感が強まれば向こう数ヵ月以
内の利上げを正当化する一因となろう。
3.
FRBは引き続き年内利上げの方向に動いているように見える。イエレン議長は今回の
決定の影響を最小限にとどめる努力を払い、そうすることで投資家にハト派スタンス
の強まりの兆候だと受け止められないようにした。特に、イエレン議長はFRBが中期見
通しを変えていないことに強く言及している(中期見通しは利上げ議論の根拠となって
きた要素であり、今後も根拠になると予想される)。また、イエレン議長はFOMCメンバ
ーの多くが年内利上げを依然適切と考えていることも強調した(断言はできないが、イ
エレン議長は年内利上げ不支持の陣営には含まれていないだろう)。
4. 債券市場の短期ゾーンは今回の利上げの可能性を小幅ながら織り込んでいた。FRB
が利上げを行わなかったことを受け、短期ゾーンの利回りは予想通り低下したが、市
場が織り込んでいた利上げの確率がかなり低かっただけに利回り低下は大幅なもの
とはならなかった。また、長期ゾーンの利回りも低下したが、基本的にFRBの政策は長
期債利回りを動かす主たる要因ではないため(経済成長率、インフレ率、リスク選好
の方がはるかに長期債利回りの動きを左右する)、長期ゾーンの反応はさらに小幅で
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FRBは政策金利の据え置きを決定
金融政策関連
ある。リスク資産市場はFRBの決定を冷静に受け止めている模様で、株式、社債、エマー
ジング通貨がいずれもFRBの発表を受けて横ばいかやや強含んでおり、市場にとっては
(今のところ)ポジティブな展開である。
5.
ウエスタン・アセット
結論:今回の決定により、FRBの今後の動きに対する当社の見方に変更はない。当社は
FRBが見通しの変化に今後も迅速に対応し、その一方で年内利上げの方向性を維持し
ていくと考えている。
2
2015年9月
リスク・ディスクロージャー
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