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日銀の導入したマイナス金利を考える
土井 一人
日本拠点投資運用部長、ポートフォリオ・マネージャー
1. 導入背景と狙い
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年初からの原油安、世界的な株安、円高の進行に加えて、今夏に参院選を控えることや甘利大臣の辞任など政治的圧
力、春闘などが背景
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マイナス金利の導入は、黒田総裁のこれまでの再三の否定コメントからサプライズ
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日銀の景気見通しは10月時点との対比でほぼ維持され(2016年は上方修正)これまでの政策成果を強調する一方で、
物価見通しは引き下げ、原因は想定以上の原油安
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これまでの量・質に金利を加えて3次元のアプローチによるパワーアップ
2. 政策のポイント
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金融機関の日銀当座預金を3つの階層構造に分割し、
「基礎残高(約218兆円)」に+0.1%、
「マクロ加算残高(約39兆円)
」に0%、
「政策金利残高(今後積上がる部分)」に-0.1%を適用する。ECBが全ての当座預金にマイナス金利を適用する
のとは異なる。スイス同様、量的規模の大きさを考慮し金融機関の負担への配慮が見られる。
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量的目標(年間80兆円のマネタリーベースの拡大)へのコミットメントへの配慮として、-0.1%以下の金利水準での長期
国債の買入れや金融機関の現金保有分へのマイナス金利の適応などの対応が図られている。ECBは付利金利水準以下
での買入れを行っていない。
3. 量的緩和とマイナス金利の関係
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日銀当座預金への付利金利がマイナスになれば、日銀への長期国債の売却のインセンティブは低下するため、量的緩
和とマイナス金利は両立し難い側面があるが、日銀の長期国債の買入れ金利水準が付利金利以下であれば、理論上は
売却インセンティブを維持できる。
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これまでのマイナス金利を原則的に回避しつつの量的拡大は、日銀の買入れ国債の満期年限の長期化圧力、イールカー
ブ・フラット化圧力であった。今後は変化する可能性大。
4. 意義と効果
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質・量に金利を政策オプションに追加したことで、量的限界が指摘される中での金融政策の持続性は向上。将来、量か
ら金利へのスムーズな転換を仕組みとして確保できた。
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当面、オペの札割れや均衡金利に収斂する過程において、債券市場は不安定化する公算。
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景気へのプラス影響として、円安株高等の資産価格上昇、銀行の貸出スタンス積極化が見込まれる反面、景気へのマイ
ナス影響としては、
マイナスの付利と市場金利の低下による銀行の収益圧迫の結果、金融仲介機能が低下する可能性
があげられる。
5. 予想される市場インパクト
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QQE(量の確保)とマイナス金利政策の両立を図るため、国債利回りは低下すると予想。
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イールドカーブは将来の金融政策の不確実性を反映し超長期セクターの利回りは相対的に上昇、また、今回マイナスの
国債金利を積極的に許容したことで短中期金利は相対的に低下することから、イールドカーブはスティーブ化を予想。
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国内クレジット市場のスプレッドは全般的にタイト化を予想。その結果、国内クレジット市場の投資機会は更に枯渇。
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政策の持続性が高まったことから政策リスクは低下し、期待インフレ率は上昇。物価連動債のブレーク・イーブン・イン
フレ率も上昇。
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円債からヘッジ外債へのシフトが見込まれ、欧米長期金利の低下圧力を高める。
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円高リスクは低下。
6. 今後の注目点
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マイナス金利と共に量的な拡大を本当に持続できるか
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銀行の収益への影響
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長期的なリスクとして、日銀の想定に反して物価上昇と景気回復が実現しない場合の政策への信認低下と期待剥落に
よる株安・円高。
ウエスタン・アセット
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2016年2月
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