厚さや硬さの微妙な違いが食感を大きく左右する、最中種(もなかだね)や麩焼種(ふやきだね)といった 「種もの」、昔から和菓子店ごとにつくることはせず専業の菓子種職人がいたことは、一般にはあまり知られ ていないかもしれません。 この種ものを140年近く作り続けてきたのが、加賀種食品工業です。 明治10年に東京・神田で創業し、最も適した原料を求めた二代目が祖 先の地・金沢に店を移したのが明治45年であり、以来日本三大菓子処 として菓子職人の技が息づく金沢で伝統的な製法を受け継ぎながらも、 洋菓子や和食にも合う、様々なタイプの種ものを生み出しています。 最中種はもち米を薄く伸ばして焼いたもの。加賀種食品工業では、北陸 だけで収穫されるもち米「新大正もち」の中でも、より最適な産地を見 極め、生産者を指定して契約栽培したもののみを使います。「ただ焼く だけ」だからこそ、こだわりぬきたい原料と製法があります。 1 2 今回完成した「獅子舞金箔梅こぶ茶」は、最中種には餡(あん)という 既成概念をリセット、「金沢箔」の名前を広めた「箔一(はくいち)」 の食用金箔をちりばめた梅こぶ茶です。こぶ茶をのせた最中種について いるのは食べられる寒天フィルム。そのまま湯呑に入れて熱湯をそそぐ だけなので粉末をこぼす心配がありません。シンプルでありながら奥深 く、思いの込められた「種もの」で、ほっこり温かいひとときをどうぞ。 9 7 5 3 10 8 6 4 1 契約農家から届けられたもち米は、精米・洗米・浸し・脱水してから製粉され、低温貯蔵したあと加水してセイロで蒸してから5分ほど搗く。よく伸び てコシの強いぷりぷりのお餅が搗きあがると、まわりにほんのり甘い匂いが充満する。 2 熱をとり圧力をかけて伸ばした餅を、種もののサイズにあわせ 裁断。 3 精巧な獅子舞の型。 4 2の状態から焼き上げる直前に1つずつの大きさに裁断。手早く1切1切を型に入れ圧力で広げて焼き上げる。 5 程よく乾燥させた最中種にこぶ茶の粉末と金箔を丁寧にのせ寒天フィルムで封入する。 6 「箔一」の金箔づくり風景。食用金箔は品質管理の 徹底した専用工場で作られる。 7 寒天フィルムのまま湯呑に入れてお湯をそそいでOK。 8 お目出度い獅子舞をモチーフにしたどこかユーモラ スな小箱。 9 加賀種食品の最中種の型は約1000種。最中種のあたらしいありかたを提案し続けている。 10 六代目社長の日根野幸子氏。
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