特異な構造を持つ分子状有機ケイ素クラスターの構造と反応性

特異な構造を持つ分子状有機ケイ素クラスターの構造と反応性
(東北大院理)岩本 武明
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有限個のケイ素原子から構成されるクラスターである分子状ケイ素クラスターは、単
結晶あるいは非晶質のケイ素単体の部分構造を持つ分子として注目されている。これら
の分子状ケイ素クラスターのケイ素骨格変換反応は、化学蒸着による単体ケイ素生成に
関連する反応として重要である。これまでに多種多様な分子状ケイ素クラスターが合成
され、それらのケイ素骨格変換反応が報告されているが、その多くは Lewis 酸触媒存在
下や光照射条件下での骨格変換反応である 1。
最近我々は、嵩高いアルキル基で置換された R6Si5 の組成を持つ分子状ケイ素クラス
ター1 を合成した 2。この 1 は室温では安定であるが、40 °C に加熱すると、R8Si8 の組
成を持つ 2 および化合物 3 をともに高収率で与えた(Scheme 1)。この 1 が 2 を与える反
応は、ケイ素骨格が成長する反応であり、これまでにあまり例がなく興味深い 3。化合
物 3 は R2Si の組成を持つ 5 の熱異性化生成物であるので 4、この反応では 1 から熱的に
5 が脱離して、高度に歪んだケイ素-ケイ素二重結合を持つ化合物 4 を与え、4 のケイ
素-ケイ素二重結合の二量化により 2 が生成したと推定された (Scheme 1、下段)。
このクラスター1 の反応性について GRRM を用いて理論的に考察した。ケイ素上の
置換基をすべて考慮し、クラスター1 周りの反応経路を GRRM で探索した結果、最も
エネルギー障壁の小さい経路として 1 から 5 が解離して 4 を与える経路がみつかり、そ
の活性化障壁は 111 kJ mol-1(M06-2X/6-31G(d)レベル)と求められた。
化合物 4 の電子状態や 2 の更なる熱反応等についても考察する。
1. E. Hengge, R. Janoschek, Chem. Rev., 1995, 95 (5), 1495-1526. 2. T. Iwamoto, N. Akasaka, S. Ishida,
Nature Commun., 2014, 5, 5353. 3. D. Scheschkewitz, Angew. Chem. Int. Ed., 2005, 44, 2954-2956. 4.
M. Kira, S. Ishida, T. Iwamoto, C. Kabuto, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 9722–9723.