第 26 回万有仙台シンポジウム Poster 発表要旨 ジアルキルシリレンを用いたアズレンの骨格変換反応 Transformation of Azulenes using a Dialkylsilylene 小齋 智之、石田 真太郎、岩本 武明(東北大院理) カルベンのケイ素類縁体であるシリレンはケイ素化合物の重要な反応 性中間体である。当研究室ではこれまでに単離可能なジアルキルシリレ ン 1 とベンゼンとの光反応で脱芳香族化反応が進行し七員環化合物シラ シクロヘプタトリエン(シレピン)A を与えることを報告した 1。また、最 近では 1 と反芳香族化合物であるノルコロールとの反応でピロール部位 が環拡大した生成物 B が生成し、B が近赤外領域に吸収を示すことを見 出している 2。これらの反応はシリレンの不飽和 CC 結合への挿入反応と いう点でユニークであるのみならず、生じた含ケイ素環状化合物がケイ 素-炭素結合と電子系との軌道間相互作用(-共役)しうる構造を持つ 点で興味深い。今回私は 1 と代表的な非ベンゼン系芳香族化合物であるアズレン類との光反応 によって[4]デンドラレン骨格やヘプタフルベン骨格を持つ化合物が得られることを明らかに した。 シリレン 1 とアズレンのヘキサン溶液に波長 440±10 nm の光を照射するとアズレンに対して 1 が二分子付加した[4]デンドラレン骨格を持つ化合物 2 が収率 68%で得られた。化合物 2 の紫 外可視吸収帯は 368 nm に観測され、無置換の[4]デンドラレンのもの(217 nm)より顕著に長 波長シフトしていた。理論計算などによる考察からこの長波長シフトの原因は 2 のケイ素-炭 素結合の軌道および*軌道が電子系と有効に軌道間相互作用しているためであることが明 らかになった。また、シリレン 1 とグアイアズレンとの反応では 1:1 付加体としてヘプタフ ルベン骨格を持つ 3 が得られた。化合物 3 の詳細な性質と 2 と 3 の生成機構についても考察す る。 <参考文献> 1)Kira, M.; Ishida, S.; Iwamoto, T.; Kabuto, C. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 3830. 2)Fukuoka, T.; Uchida, K.; Sung, Y. M.; Shin, J.-Y.; Ishida, S.; Lim, J. M.; Hiroto, S.; Furukawa, K.; Kim, D.; Iwamoto, T.; Shinokubo, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 1506. 発表者紹介 氏名 小齋 智之(こさい ともゆき) 所属 東北大学大学院理学研究科化学専攻 学年 博士課程後期 1 年 研究室 合成・構造有機化学研究室
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