二酸化炭素を一炭素源とした環状ジシランによるアリール、 アルケニル及びアルキニルハライドのカルボキシル化反応の開発 Structurally Strained Disilane-Promoted CO2 Incorporation of Aryl, Alkenyl, and Alkynyl Halides 菅 健太、美多 剛、佐藤 香、佐藤 美洋 (北大院薬) アリールハライドと二酸化炭素から安息香酸誘導体を合成する場合、金属マグネシウムから発 生させたグリニャール試薬や、ハロゲン-リチウム交換により生じたアリールリチウム種を用い る方法が古くから知られている。しかし、これらの反応では発生するアリール金属種の高い求核 性のため官能基許容性が低いことが問題点として挙げられる。そのため、最近では Pd1 や Ni2、Cu3 などの遷移金属を用いた触媒的なカルボキシル化反応が開発されてきた (Scheme 1)。 こうしたなか、我々は歪みの大 きい四員環のジシランと CsF を用 いる新規カルボキシル化反応の開 発に成功したので報告する。本ジ シランにフッ化物イオンを作用さ せると、環歪みの解消を駆動力と して Si-Si 結合が容易に開裂する。 その結果生じたシリルアニオンが ハライド化合物と反応することで カルバニオン様の活性種が生成し、続く二酸化炭素への求核付加が順次進行することで目的とす るカルボキシル化体が得られると考えられる (Scheme 2)。検討の結果、1 atm の二酸化炭素雰囲気 下、室温、2 時間という非常に温和な条件下で、アリールハライドのカルボキシル化が効率良く 進行することがわかった。フェノール性水酸基やエステル、ケトン、ニトロ基などを有する基質 においても、 これらの官能基を損 なうことなく反応は進行した。 さ らにヘテロ芳香環やアルケニル ハライド、 アルキニルハライドに おいても高収率でカルボキシル 化体が得られた。 収率は中程度で あるものの、 アリルハライドやア ルキルハライドにおいても反応 は進行し、 基質一般性および官能 基許容性の非常に高い反応であ ることがわかった (Scheme 3)。 <参考文献> 1) Martin, R. et al. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 15974. 2) Tsuji, Y. et al. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 9106. 3) Daugulis, O. et al. ACS catal. 2013, 3, 2417. 発表者紹介 氏名 菅 健太(すが けんた) 所属 北海道大学大学院薬学研究院 学年 修士一年 研究室 精密合成化学研究室 研究室紹介写真
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