第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙 スズ上の直接置換反応を経由するラジカルカスケード反応を使った新規 な複素環合成 A novel synthesis of heterocyclic compounds via radical cascade reaction including radical substitution on tin atom 吉永達郎・上村明男(山口大学工学部) 最近我々は光学活性な 1,6-エンイン化合物 1a に対し、トリブチルスズを作用させるとラジカル 付加-環化-反応が一気に進行して高選択的かつ高収率で光学活性な二環性のスタノラン 3 が得られ ることを見出した(Scheme 1) 1) 。この反応では、スズ上でのラジカル置換反応(SHi 反応)を含む ラジカルカスケード反応が進行していると考えられる。 SHi 反応の速度定数は 30℃での反応を Bu3SnH の濃度を変化させて、化合物 2a と 3a の生成比を 求めることで決定した。生成物の生成比 2a/3a は、Bu3SnH 濃度が 0.5 M から 1.5 M の範囲で原点を 通る良好な直線関係を示し、傾きの値 0.828 とビニルラジカルが Bu3SnH から水素を引き抜く速度 定数の値(3.5×108M-1sec-1)から 2)、SHi 反応の 30℃での速度定数を 4.2×108sec-1 と見積もった。 1b を 10-2 M の PhBu2SnH 溶液で処理すると、スタノラン 3c は 68%で得られたが、Ph 基が脱離 したスタノラン 3b は全く得られなかった(Scheme 2)。化合物 3c はスズ上の不斉に起因する 2 つの 立体異性体の 1:1 混合物であった。この反応ではピペリジン 4b が 12%で生成し、Front-side attack でスズ上でのラジカル置換反応が起こっていることが示唆された。実際、化合物 1b を Ph3SnH で処 理すると、ピペリジン 4b が 50%で立体選択的に得られることがわかった。無溶媒条件での 1b と PhBu2SnH の反応では 3c と 2b が、それぞれ 10%と 57%で得られた。 <参考文献> 1)Kamimura, A.; Yoshinaga, T.; Noguchi, F.; Miyazaki, K.; Uno, H. Org. Chem. Front. 2015, 2, accepted; Kamimura, A.; Ishikawa, S.; Noguchi, F.; Moriyama, T.; So, M.; Murafujib, T.; Uno, H. Chem. Commun., 2012, 48, 6592. 2) Johnston, L. J.; Lusztyk, J.; Wayner, D. D. M.; Abeywickreyma, A.N.; Beckwith, A. L. J.; Scaiano, J.C.; Ingold, K. U. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 4594. 発表者紹介 氏名 吉永達郎 (よしながたつろう) 所属 山口大学 工学部 応用化学科 上村研究室 現所属 九州大学大学院総合理工学府修士 1 年 新藤研究室
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