News Letter - 配位プログラミング

Vol.4, No.3 / 2013年5月1日発行
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班員からの論文の紹介
文部科学省科学研究費補助金!新学術領域研究
領域略称「配位プログラム」領域番号 !"#$%
配位プログラミング
-分子超構造体の科学と化学素子の創製- !
はM*による梅本試薬の還元により生成したCF 3 ·ラジカ
ルがオレフィンに付加して新たなラジカルが生成し、
これが電子移動によって生成したM + によって酸化され
てカルボカチオン種となり、これに対して酸素求核剤
が付加している。この反応は太陽光照射でも 色なく
進行するクリーンかつグリーンな反応である。
今後他の触媒系と組み合わせて不斉合成などより緻
密な反応への展開を計画している。
(A03班 東工大資源研 穐田宗隆)
太陽光(可視光)で促進される有機触媒反応:
フォトレドックス触媒
最新の論文より
“ Three-component Oxytrifluoromethylation of
Alkenes: Highly Efficient and Regioselective
Difunctionalization of C=C Bonds Mediated by
Photoredox Catalysts”, T. Koike, Y. Yasu, M. Akita,
Angew. Chem. Int. Ed., 51, 9567 – 9571 (2012).
Double Helices of a Pyridine-Appended Zinc
Chlorophyll Derivative
今のエネルギー・環境問題の観点からグリーンな反
応の開発が望まれている。太陽は無尽蔵のクリーンな
可視光エネルギー供給源であるにもかかわらず、希薄
であったり、多くの有機物が太陽光の主成分である可
視光を吸収しないなどの難点がある。このような問題
に対して可視光を吸収できる増感剤を用いた水や二酸
化炭素などの無機小分子の活性化が研究されてきたが
利用されてきたが,有機物の変換反応への展開は限ら
れていた。
[Ru(bpy)3]2+及びそのイリジウム誘導体(以下Mと省
略)は数十年にわたってその可視光エネルギー捕捉能
に着目した研究が行われてきたが、我々はその励起状
態の酸化還元能に着目して、特に炭素!炭素結合生成反
応を念頭に置いて反応開発を行ってきた。 M の励起状
態 ( M * ) は二つの S O M O を含み、高エネルギー側の
S O M Oに含まれる電子は還元剤として、低エネルギー
側のSOMOに存在する正孔は酸化剤として作用する。
さらに電子を授受した金属種は、その後再び電子の授
受を経て基底状態に戻るため、一サイクルで還元!酸化
ないし酸化!還元を達成できる高機能触媒作用を示す。
(図には前者を示し
た。)このような触媒作
用は ” フォトレドックス
触媒 ” と称されており、
数年前から筆者のグルー
プなどの研究が端緒とな
って研究が開始され、今
では大きな研究領域に育
ちつつある。
本論文では、 M 触媒共存下でオレフィン、梅本試薬
(CF3化試薬)、酸素求核剤の混合物に可視光照射する
と、C-C, C-O結合生成を伴った三成分カップリングが
進行して医薬合成などで必要とされるトリフルオロメ
チル化合物が得られることを報告した。この反応系で
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Y. Shinozaki, G. Richards, K. Ogawa, A. Yamano, K. Ohara, K.
Yamaguchi, S. Kawano, K. Tanaka, Y. Araki, T. Wada, J. Otsuki,
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 5262–5265.
(班友 大月 穣, A04 田中 健太郎)
*領域内共同研究の成果
最新トピックス
研究成果の論文掲載および表
紙採択
Chemical Communications
www.rsc.org/chemcomm
Volume 49 | Number 39 | 14 May 2013 | Pages 4035–4426
本領域の研究に関する論文
(班友 杉本"秀樹) がChem.
Commun. 誌 (Vol. 49, Number
39) に掲載され、本号の表紙に採
択されました。
Emerging Investigators Issue 2013
ISSN 1359-7345
COMMUNICATION
Hideki Sugimoto, Kazuo Toyota, Shinobu Itoh et al.
Oxo-sulfido- and oxo-selenido-molybdenum(VI) complexes possessing
a dithiolene ligand related to the active sites of hydroxylases of
molybdoenzymes: low temperature preparation and characterisation
1359-7345(2013)49:39;1-Z
http://dx.doi.org/10.1039/C3CC90118A
日本化学会 進歩賞を受賞
山田鉄兵 氏 (A03班 九大院工)が日本化学会より第62
回 進歩賞を授与されました。
URL:
http://www.chemistry.or.jp/activity/prize/list.html#jyusyo-0
新学術領域「配位プログラミング」ニュースレター
第4巻・第3号(通算第72号)
平成25年5月1日発行
発行責任者:西原 寛(東京大学大学院 理学系研究科)
編集責任者:山元公寿(東京工業大学 資源化学研究所)
http://coord-prog.chem.nagoya-u.ac.jp