Global Market Outlook 貯蓄に励んだ後・・・ 2015年3月3日(火) 第一生命経済研究所 経済調査部 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】~PMI改善、ISM軟化~ ・2月ISM製造業景況指数は52.9と市場予想(53.0)に概ね一致して前月(53.5)から軟化。生産(56.5 →53.7)、新規受注(52.9→52.5)、雇用(54.1→51.4)が何れも低下した一方、指数を押し上げたのは 在庫(51.0→52.5)であり、バランスは良くない(NY連銀指数やフィリー指数も概ね同様)。生産活動 の鈍化が懸念されるところだが、PMI(markit、確定値)が2月に改善(53.9→55.1)するなど反発の兆 しも出ており、ダウンサイドリスクは限定的とみられる。なお、実際の生産活動をより忠実に追うのがP MI(Markit)、マーケットインパクトが大きいのはISM。どちらを重視するかは立場によりけりだ。 ISM・Markit 60 米 生産 (%) 15 70 ISM(右) 65 55 PMI(右) 10 60 50 5 ISM Markit 45 55 50 0 40 45 製造業生産 35 -5 07 08 09 10 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 12 13 14 40 10 11 12 13 14 (備考)Thomson Reutersにより作成 生産は3ヶ月前比年率 15 15 ・1月米名目個人消費支出は前月比▲0.2%と2ヶ月連続で減少したが、個人所得は+0.3%と堅調を維持。 名目消費は一見すると軟調だが、これはエネルギー価格下落の影響によるもので、実質ベースでみれば+ 0.3%と堅調、3ヶ月前比年率では+3.8%と高い伸びを維持している。PCEデフレータは前月比▲0.5%、 前年比+0.2%と弱かった。 ・2月ユーロ圏CPIは前年比▲0.3%と前月(▲0.6%)から下落幅縮小。エネルギー価格の下落幅が縮小 (▲9.3%→▲7.9%)したほか、食料・アルコール・タバコがプラス転化(▲0.1%→+0.5%)。コア物 価は前年比+0.6%で横ばい。サービス物価が+1.1%に加速した一方、コア財物価が▲0.2%に鈍化。2月 中頃から原油先物が下げ止まっていることから判断すると、CPI統計におけるエネルギー物価下落は一 旦ピークアウトした可能性がある。コア物価の底堅さに鑑みるとダウンサイドリスクは限定的だろう。 ・1月ユーロ圏失業率は11.2%と3ヶ月連続低下。失業者数も着実に減少している。 (前年比、%) 10 8 6 個人消費支出 (前年比、%) 4 ユーロ圏CPI 12 3 名目 (前年差、千人) 4000 3000 失業率 11 4 2 2 1 コア 2000 10 1000 9 0 8 0 -2 ユーロ圏 失業率 13(%) 実質 -4 0 7 総合 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 -1000 6 -1 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 失業者数(右) 15 -2000 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】~ユーロ圏CPI:反発の兆し~ ・前日の米国株は反発、欧州株はやや軟調。NASDAQは5000に到達、S&P500は高値更新。 ・前日のG10通貨はUSDの強さが目立った一方、NZDとAUDの弱さが目立った。USD/JPYは、軟調な米指標を尻 目に米金利が上昇、それを受けて120を回復。ユーロ圏CPIの予想比上振れを受けて上昇していたEUR/USDも 1.2割れに回帰した。3日日本時間でUSD/JPYは120付近でもみ合い(11:00)。 ・米10年金利は+8.9bpの2.082%。米指標はやや軟調だったが、米国株が堅調、その裏で米債は売り優勢。 【国内株式市場・経済指標他】~名目賃金:予想外に強い~ ・日本株は米株高、USD/JPY上昇を受けて高寄り後、過熱感(騰落レシオ130超)が意識されマイナス転化。 ・1月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比+1.3%と、ボーナス (%) マクロ賃金(常用雇用者数×一人当たり賃金) 5 増によって押し上げられた12月と同じ伸び率を確保。市場予想(+ 2.5 0.5%)を大きく上回った。今回も特別給与(+10.8%)が全体を押し 上げたが、最重要項目の所定内給与が(確報での下方修正含みながら) +0.8%と強く伸びておりポジティブな印象。常用雇用者数は前年比+ 1.8%増加してマクロ賃金は+3.1%まで伸びを高めた。4月以降は賃 0 -2.5 -5 05 06 07 08 09 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成.3ヶ月平均 上げが期待され、更に伸びが高まる見込み。 13 14 15 ・1月豪建設許可件数は前月比+7.9%と市場予想(▲2.0%)に反して増加。一部に住宅バブルの兆しも指 摘されるが、RBAの利下げ打ち止めに繋がるほどのインパクトはない。なお、本日はRBAのレートア ナウンスメントが予定されている。 【注目点】~貯蓄に励んだ後・・・~ ・米名目個人消費支出は過去2ヶ月に累積▲0.5%減少したが、これはエ ネルギー価格下落によって弱さが誇張されている。エネルギーを除い (%) 11 10 マインド悪化 貯蓄率上昇 たベースでは同+0.4%とまずまずだ。また、足もとで高水準をキープ 9 する消費者信頼感指数は向こう数ヶ月の消費が更に力強さを増してい 7 マインド改善 6 貯蓄率低下 くことを示唆している。過去の傾向に従うと、消費者信頼感指数の改 善から数ヶ月のラグを伴って貯蓄率が低下(消費性向が上昇)する傾 向があるためだ。1月の貯蓄率は5.5%と11月の4.5%から急上昇した が、これはガソリン支出の減少分が貯蓄に回ったと考えるのが自然。 米 貯蓄率・消費者マインド 0 税効果要因 20 8 40 貯蓄率 5 80 4 日経平均※ NYダウ DAX(独) FTSE100(英) CAC40(仏) <外国為替>※ USD/JPY EUR/USD <長期金利>※ 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン <商品> NY原油 NY金 終値 18826.76 18,288.63 11,410.36 6,940.64 4,917.32 120.05 1.1186 0.368 2.082 1.787 0.356 0.638 1.349 1.349 (円) 18900 前日比 -0.12 155.93 8.70 -6.02 -34.16 2 120 05 06 07 08 09 10 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 12 13 14 % % % % % % % 49.59 ㌦ 1208.20 ㌦ 0.018 0.089 -0.009 0.028 0.034 0.018 0.089 日経平均株価 10:44 現在 18800 18700 (㌦) 18300 -0.08 0.00 % % % % % % % -0.17 ㌦ -4.90 ㌦ ※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。 NYダウ平均株価 18200 18100 120.5 USD/JPY 120.0 119.5 119.0 (出所)Bloomberg 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 100 CB消費者信頼感(右) 3ヶ月先行 3 向こう数ヶ月間は貯蓄率低下を伴った消費加速が期待される。 <主要株価指数> 60 15
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