原油離れ? 藤代 宏一

Market Flash
原油離れ?
2015年12月24日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~米指標:住宅セクターの減速は特殊要因~
・22日発表のGDP確定値(3Q)は前期比年率+2.0%と速報値から僅かに下方改定された。もっとも何れ
の項目も改定幅は小幅で景気認識の変更は不要。コアPCEデフレータは前年比+1.4%へと0.1%pt上方
修正された。SNAベースの企業収益は前期比年率▲6.2%、前年比▲5.1%と減益。USD高が響き、海
外部門が前年比▲10.6%と大幅減益、国内部門も前年比▲4.3%と弱かった。
・22日発表の11月中古住宅販売件数は前月比▲10.5%、476万件と大幅に減少。集合住宅は+1.7%と堅調だ
った一方、主力の戸建て住宅が▲12.1%と2ヶ月連続で減少、寒波襲来の打撃を受けた2014年1Qと同水
準に沈んだ。もっとも、11月の落ち込みは住宅ローン規制の変更に絡んだ引き渡し(当指標は引き渡しベ
ースでカウントされる)の遅れが影響したとみられ、需要の減少を反映したものではないだろう。実際、
先行指標の販売制約指数は堅調で、その他関連指標もNAHB住宅市場指数が高水準を維持、MBAモー
ゲージ申請指数が景気後退後の最高を更新と好内容。次月以降は強さを取り戻す見込み。
米 企業利益
中古住宅販売件数・販売成約指数
(百万)
6
千
2300
2000
5.5
1700
5
1400
4.5
1100
4
800
3.5
500
3
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成
販売成約指数(右)
110
100
90
中古住宅販売件数
80
70
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成
・11月米名目個人消費支出は前月比+0.3%と予想に一致。実質ベースでも+0.3%と過去数ヶ月のトレンド
が続いた。他方、個人所得は+0.3%と堅調で、貯蓄率は5.5%と高止まり。消費者はエネルギー価格下落
によってセーブできたおカネを貯蓄に回しているようだ。今後は貯蓄率低下を伴う消費加速が期待される。
・11月米耐久財受注は前月比±0.0%と市場予想(▲0.6%)を上回った。国防航空機(+46.9%)の大幅増
が全体を押し上げ、自動車も+1.5%と堅調だったが、輸送用機器を除いたベースでは▲0.1%と精彩を欠
いた。最重要項目のコア資本財受注は前月比▲0.4%と弱く、3ヶ月前比年率では+1.7%と緩慢な伸び。
ISM製造業の50割れが象徴するよう、製造業セクターの業況は芳しくない。設備投資加速にはまだまだ
時間がかかりそうだ。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
千
名目個人所得
(前年比、%)
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
名目
(10億㌦)
80
コア資本財受注
75
70
65
60
55
実質
50
45
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成
・11月米新築住宅販売件数は前月比+4.3%、49.0万件。10月分の下方修正(+10.7%→+6.7%)により11
月分の“見た目”が強めに見えることに注意が必要だが、それでも年央から続いた下落トレンドには歯止
めがかかっている。NAHB住宅市場指数、MBA住宅ローン申請指数の強さに鑑みると先行きは加速が
見込まれる。
・12月ミシガン大学消費者信頼感指数(確定値)は92.6と速報値から0.8pt上方改定され、3ヶ月連続の改善
を確認。
新築住宅販売件数
(千件)
550
120
ミシガン大学消費者信頼感指数
110
500
現況
100
450
90
400
80
350
70
総合
期待
60
300
50
250
09
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
10
11
12
13
(備考Thomson Reutersにより作成
15
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。WTI原油が反発しエネルギー関連株に買い。3営業日で474㌦の上昇となり、年末ら
しいボラタイルな展開。個人の節税目的の売りが一巡した可能性もある。欧州株も全面高。独、仏が共に
2%超のラリー、英国株も強かった。
・前日のG10 通貨はまちまち。欧州通貨が全般的に弱く、DKKとEURが売られた一方、GBPが強め。USD/JPYは
日本が祝日だったこともあって120前半で小動き。EUR/USDは10.9まで下落した後、一進一退。
・前日の米10年金利は2.253%(+1.8bp)で引け。欧米株高、原油高でFOMC後の金利低下を取り戻す展開。
欧州債市場は総じて軟調。独10年金利が0.629%(+2.7bp)で引けたほか、イタリア(1.658%、+2.1bp)
スペイン(1.834%、+4.1bp)、ポルトガル(2.544%、+2.2bp)も金利上昇。対独スプレッドは区々。
【国内株式市場・経済指標他】
・日本株は欧米株高に追随して高寄り後、上げ幅縮小。
・12月FOMC通過後、WTI原油が一時35㌦割れを記録するのをよそに米国株は大きな振れを伴いつつも
一進一退となっている。これまで原油価格が安値を更新する場面では、しばしば米株は大幅な調整に見舞
われてきたが、ここへ来て両者の連鎖が弱まってきた印象だ。原油価格下落については、エルニーニョ現
象による暖冬が燃料需要を後退させるという特殊要因があるため評価が難しいが、一先ず米国株に“原油
離れ”の兆候があることは認識しておきたい。こうしたコモディティ価格と他資産の相関性低下は、AU
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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Dと鉄鉱石価格についても似たような現象が観察されている。豪雇用統計のポジティヴ・サプライズとい
うAUDの追い風が鉄鉱石価格下落という逆風を撥ね退けており、両者の相関性は低下傾向にある。2015
年はコモディティ価格下落が各種アセットに大きな影響を与えてきたが、そうした構図が徐々に変化して
いるのかもしれない。
WTI・S&P500
70
2200
S&P500(右)
60
(ドライトン/USD)
鉄鉱石価格・AUD
150
(AUD/USD)
1
130
0.9
2100
110
50
2000
AUD/USD(右)
0.8
90
0.7
70
40
1900
0.6
50
WTI
鉄鉱石
30
1800
15/01
15/03
15/05
15/07
15/09
(備考)Thomson Reutersにより作成
30
15/11
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
18935.65
17,602.61
10,727.64
6,240.98
4,674.53
(円)
19100
前日比
48.95
185.34
238.89
157.88
106.93
120.73
1.0922
0.5
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成(鉄分62% アルミ2% 青島)
日経平均株価 11:51 現在
18900
18700
(㌦)
17700
-0.19
0.00
NYダウ平均株価
17600
0.283
2.253
1.938
0.629
0.983
1.658
1.834
%
%
%
%
%
%
%
37.50 ㌦
1069.40 ㌦
0.008
0.018
0.063
0.027
0.029
0.021
0.041
%
%
%
%
%
%
%
17500
17400
121.5
USD/JPY
121.0
1.36 ㌦
-5.40 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
120.5
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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