Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
物価指標が上向き、賃金も加速すると、それは円高リスクを高める
2016年3月4日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~ISM非製造業:雇用が弱い~
・2月ISM非製造業景況指数は53.4と1月(53.5)から僅かに軟化したものの、市場予想(53.1)は上回
った。内訳は事業活動(53.9→57.8)がまずまずの改善を示した一方、新規受注(56.5→55.5)が横ばい。
一方、重要項目の雇用(52.1→49.7)は遂に50割れ。ヘッドラインよりもネガティブな印象。また、同日
発表のサービス業PMI(Markit)は49.7と2013年の政府機関閉鎖時を除くと統計開始以来の最低を更新。
雇用(54.3→53.7)も悪化した。BLS雇用統計の市場予想(+19.5万人)にとってダウンサイド要因。
ISM非製造業・サービスPMI(Markit)
ISM非製造業・NFP
60
(千人)
300
60
55
150
55
50
50
0
ISM雇用判断
サービスPMI
(Markit)
45
45
NFPサービス(右)
ISM非製造業
40
40
-300
35
35
07
08
09
10
11
12
13
14
15
-450
07
16
-150
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
・新規失業保険申請件数は27.8万件と前週(27.0万件)から増加したものの、4週移動平均では27.0万件と
4週連続で減少。昨年後半から一進一退を続けている。
・2月ユーロ圏総合PMI(確報)は53.0と速報値から0.3pt上方修正されたものの、1月からは0.6pt悪化。
1-2月平均(53.3)は10-12月平均を0.8pt下回っている。
・1月ユーロ圏小売売上高は前月比+0.4%、前年比+2.0%と市場予想を上回った。もっとも、先行きは消
費者信頼感指数が低下基調にあるため、ダウンサイドリスクが大きい。
・2月英総合PMIは52.8と2013年4月以来の低水準に落ち込んだ。製造業(52.5→50.8)、サービス業
(55.6→52.7)が共に減速基調にあり、実質GDP成長率の急減速を示唆している。不安定な金融市場と
EU離脱論争が経済活動を抑制している可能性がある。
60
ユーロ圏PMI
65
英 PMI
サービス
55
50
55
製造業
45
製造業
50
40
45
35
40
30
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
サービス業
60
13
14
15
16
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。原油価格の安定とISM非製造業の予想比上振れが安心感を誘った。欧州株はまち
まち。WTI原油は34.57㌦(▲0.09㌦)で引けた。
・前日のG10 通貨はJPYが独歩安となった一方、欧州通貨(SEK、NOK、EUR、DKK)が軒並み反発。資源価格
安定を受けてAUD、NZDも強かった。USD/JPYは113後半まで戻した一方、EUR/USDは1.10を窺う動きとなった。
・前日の米10年金利は1.834%(▲0.7bp)で引け。アジア株高を横目に時間外の米債は軟調に推移していた
が、原油価格が日中の高値から反落すると買い優勢に転じた。欧州債市場は総じて堅調。ドイツ10年金利
が0.169%(▲3.7bp)で引け、イタリア(1.422%、▲3.8bp)、スペイン(1.537%、▲3.4bp)、ポルト
ガル(2.993%、▲4.4bp)も金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは変わらず。
【国内株式市場・経済指標】
・日本株は米株高に追随できず安寄り後、下落幅縮小。
・1月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比+0.4%と市場予想に一致。所定内給与が前年比+0.1%
に鈍化するなか、所定外が▲1.3%(≒残業代)と減少し、反対に特別給与(≒ボーナス)は+7.1%へと
増加した。マクロ賃金(一人当たり賃金×常用雇用者数)は前年比+2.5%と好調持続。求人関連指標の著
しい増加基調に鑑みると雇用者数の増加傾向は続く見込みだが、企業収益が鈍化する下、一人あたりの人
件費は抑制された状態が続くだろう。
・昨日発表の日本の2月日経サービス業PMIは51.2と1月から1.2pt軟化。総合PMIは51.0へと1.6pt軟
化したものの、直近1年のレンジ内にあり“腰折れ”には距離がある。国内外経済の減速が業況を下押し
する一方、原油安が緩衝材となっている模様。
・昨日発表の中国の2月財新サービス業PMIは51.2と1月から1.2pt軟化。総合PMIは49.4へと悪化した。
この時期は春節に絡んだ季節調整の難しさがあるため額面どおりに受け止めることは避けたいが、好転の
兆しに乏しいのは事実。
60
日本PMI(Markit)
65
中国 PMI(Markit)
58
製造業
56
60
総合
54
サービス業
52
55
50
48
50
46
サービス業
44
総合
45
42
製造業
40
40
10
11
12
(備考)Markitにより作成
13
14
15
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
12
13
14
15
16
【注目点】
・本日発表の2月雇用統計ではNFPが+19.5万人と堅調なペースを保ち、平均時給は前年比+2.5%の伸び
を確保すると予想されている。失業率は4.9%で1月と同水準に留まる見込みだ。ただ、昨日発表のISM
非製造業から判断するとNFPのコンセンサスのリスクはやや下方向にあると判断され、どちらかという
と利上げ観測の後退に繋がる結果となりそうだ。
・一方、平均時給が予想以上に加速した場合は厄介だ。物価指標に目を向けると2月のコアPCE、コアC
PIがそれぞれ+1.7%、+2.2%まで上昇しており、ここへ来て利上げを支持するレベルまで伸びを高め
ている。景気の先行指標であるISM製造業景況指数が50を割れるのをよそに遅行指標のインフレ指標
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
(物価・賃金)が加速すれば、そのバランスの悪さがリスクオフを誘発する可能性がある。そうなれば米
株安・原油安が新興国不安を巻き込んで再発する可能性があり、USD/JPYは反落し易い状況に陥る。これま
で幾度となく経験してきたとおり、利上げ観測が高まっても、それがバランスの良い米景気回復期待(≒
先行指標の改善)を伴っていない場合、USD/JPYは米株下落を横目に下落する。要するに米国株が反発する
ような地合にならないとUSD/JPYは上値が重い状況が続くということだ。
130
S&P500 USD/JPY
2300
120
2100
110
1900
S&P500(右)
100
1700
USD/JPY
90
1500
80
1300
13/01 13/07 14/01 14/07 15/01
(備考)Thomson Reutersにより作成
15/07
16/01
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
3