OE10 仮想化技術研究 要旨 1. 経緯 近年、仮想化技術は広く普及・実用化してきており、実際に多くの企業でも仮想基盤が 導入されている。また、仮想化技術を取り入れることのメリットとして、一般的に「サー バの集約化」等が進み「管理コスト」を削減するといった点などが挙げられる。しかし、 本来、サーバ管理の効率化を目的の一つとして導入されている仮想化技術であるにも関わ らず、運用の現場においては、却って管理を煩雑化してしまっている一面が存在する。実 際に、OE10 参加メンバが所属する全ての企業において、仮想環境に関する何らかの課題を 抱えていることから、その他大多数の企業でも、同様に課題を抱えていることが推察でき る。そこで、OE10 では「仮想環境を最適に運用するためには、どういった手法が有効なの か?」といった観点から研究を行い、効果的な解決策を導き出すことを目標とする。 2. 現状把握 まずは、各社が抱えている課題を把握するため、参加メンバの所属する部門における「設 計」、 「構築」 、 「運用」の担当者および「システム利用者」を対象に「仮想環境に関するト ラブルや課題は何か?」という着目点のもとアンケートを実施した。その回答結果からは 「運用」部門において、最も多くのトラブル・課題が発生している傾向が見られた。シス テムの管理を担当している「運用」部門において、数多くの問題が抽出されることは想定 内ではあった。一方で、「その問題の発生原因についても、同様に運用部門において組み込 まれたものなのか?」という視点に立つと、必ずしもそうとは限らない。 3. 仮想環境の安定運用を阻害する要因の分析 まず、仮想環境の構築から運用が開始されるまでの流れを『設計』『構築』『運用』の 3 つのフェーズとして定義した。その定義に基づき、トラブルの根本原因がどのフェーズに あるのかをアンケート結果より分析した。 その結果、1 つのフェーズのみで、問題とその発生原因が完結しているケースはわずかで あり、ほとんどのケースにおいて、発生原因は、他のフェーズでの作業や考慮漏れによる 影響であることが判明した。更に、それらは『設計』フェーズにおいて組み込まれている 割合が圧倒的に多いことが見えてきた。 我々は、その原因が「設計時に必要な情報の不足」にあると考え、「物理環境の情報をい かに把握し、設計に取り込むか」その手法を提案する。 4. 中長期計画の必要性 『設計』フェーズでの問題を解消する手段を検討する中で、そのポイントのみにアプロ ーチするだけでは解消されない問題があることが判明した。それは「リソースの無駄使い (資源の過剰)」 「オーバーコミットによるリソース不足(資源の枯渇)」等の仮想環境の最適 化に関する問題である。我々はこれらの問題の要因は、無計画に仮想化を進めていること 2014 Beacon Users' Group OE10 仮想化技術研究 要旨 にあると考え、中長期的な視点での仮想化計画を立てる必要性を説く。 中長期計画では、既存の物理資産を計画的に仮想化して行く為の指針となるマスタスケ ジュールを作成し、それに基づき仮想化を推進していくことを目的とする。 中長期計画として、以下の 3 つの柱を定義した。 ①既存資産の棚卸 ②仮想化の移行計画 ③仮想基盤の資産管理 中長期計画を実践することで、随時最適な仮想環境を維持することが可能になる。例え ば、急なサーバの仮想化要件が発生した場合でも、上記の図のように、仮想環境の使用状 況が可視化されているため、仮想基盤上へのサーバ追加の可否を適切かつ迅速に判断する ことができる。結果として「資源の過剰化」および「資源の枯渇」を未然に防ぐことがで き、仮想基盤を効率的に使用し、かつ長期間の運用に耐えうる環境を継続することが出来 るのである。 5. 結論(理想的な仮想環境に必要な要素とは) 理想的な仮想環境の構築・運用のために以下の2つを提案する。 1.設計時に運用側が情報を適切に提供すること 2.中長期計画を立案・実践すること 日々システムを運用している担当者だからこそ見えてくる「仮想化する上でのリスク」 といったものは必ず存在する。運用担当者の視点を取り込むことで、設計時に必要な真の 情報の収集と中長期計画の立案が可能になると我々は考える。 つまり、運用担当者が率先して仮想環境の設計に携わり、中長期計画に則って運用を行 うことが重要なのである。 2014 Beacon Users' Group
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