IK01・OK01 スキル継承のためのドキュメント管理はじめに「きょうは会社休みます。」貴方はこの一言を電話して会社を休むことができますか？今日やるはずだったあの作業、貴方しか持たない「スキル」が必要ではないですか？スキル継承は、どの企業も抱える共通の課題である。スキル継承が十分に行えなければ、個人依存による属人化の進行や、団塊世代の定年によるスキルの空洞化などが発生し、サービス品質の低下に繋がる。「スキル」には技能的なスキルやビジネススキルなど様々なものが存在するが、本研究においての「スキル」は主に業務スキルを指し、「本質を理解した上での業務遂行を可能とする能力」と定義し、その継承に有用な方法として、「ドキュメント管理」に着目し研究を行った。研究内容 1.スキル継承のための重要な要素スキル継承が行えない要素、スキル継承をスムーズに行なうために必要な要素は、大きく以下の４つに分類される。【凡例】 ◎：非常に良い効果〇：良い効果〇人間関係が良好〇任される〇ペアプログラミング〇信頼獲得【モチベーション】〇達成感【 OJT】〇褒められる〇給与アップ〇明確な目標 ×：悪い効果〇組織的な協力体制 ◎かわいい子と一緒に働ける ×コーチャーのスキル不足 ×世代ギャップ〇資格取得〇番付表 ×業務背景の理解不足 ×業務多忙による時間不足 ×ドキュメントを作らない〇スキルの数値化【スキル管理】〇冠位十二階〇スキルマップの作成〇業務別の担当推移 ×ドキュメントが古い【ドキュメント管理】〇作成の効率化 ×ドキュメントの乱立〇運用ルールの定義〇ドキュメント棚卸図 1. スキル継承を阻害・促進する要因 2.ドキュメント管理に焦点を定めた理由この４つは、いずれもスキル継承において重要な要素である。しかし、以下の２点を念頭に、優先的に解消すべき問題を検討した結果、『ドキュメント管理』の問題解消に焦点を定めた。「スモールスタート」･･･１人の社員、１つのドキュメントからスタート可能「即時的な効果」･･･ドキュメントを使用する１つのスキルについて継承が円滑 2014 Beacon Users' Group IK01・OK01 スキル継承のためのドキュメント管理 3.ドキュメント管理の問題点ドキュメント管理において、以下の問題があるのでは無いかと仮説を立て、既存ドキュメントの分析を行った。・ドキュメントの品質に問題がある。・ドキュメントの管理に問題がある。その結果、ドキュメントの品質には差があり、ミスした際のリカバリ手順、わからない言葉での記載や、図解の説明不足など、必要な情報が記載されていないものが有ることが判った。また、多くのドキュメントには作成日・更新日の記載は有っても、ライフサイクルの記載は無く、最新化されているかどうか把握出来ないなど、管理上の問題も存在した。 4.解決策～『ドキュメント評価基準』の策定これらの問題を解決するため、「一定の基準を定めドキュメントを評価する事で、品質の問題点が明確化されるのではないか？」また「定期的に評価する事で、ドキュメントの管理を行えるのでは無いか？」と推察し、『ドキュメント評価基準』の策定を行い、ドキュメントを効率的に評価・改善することを可能とした。策定にあたっては、先の分析結果だけでは無く、市販されている料理やスポーツの本を分析し、『スキル継承のためにドキュメントに含むべき項目』や『理解しやすいドキュメントの条件』等を評価基準に盛り込んだ。さらに、策定した評価基準を用いてメンバー各社にて既存ドキュメントの評価を試行し、その結果を分析することで、より評価基準の精度を高めた。 5.解決策２～『ドキュメント評価基準』の活用当研究において、『ドキュメント評価基準』は既存ドキュメントの評価・改善だけでは無く、様々な事に利用可能である事が判った。その例として、以下のような項目が挙げられる・手順書をレビューするための基準。・手順書を作成するにあたってのガイド。・手順に対する理解度の判定。・定期的に使用する事で、ライフサイクルの目安。 etc… 結論この『ドキュメント評価基準』を使用しドキュメントの作成・更新を行うことであなたの『スキル』は円滑に継承できる。ドキュメントが伝える貴方の想いが、モチベーション、スキル管理、OJT の各要素にも良い影響を与え、より円滑な『スキル継承』を可能としていく。～きっと長期休暇の取得申請にも上司は嫌な顔をしなくなるだろう～ 2014 Beacon Users' Group