IE02 要件定義を考える 要旨 【背景】 システム開発では「要件定義」が非常に重要な役割を持っている。プロジェクト失敗時 に原因を突き詰めると「図 1.工期遅延理由」にある通り、理由の半数は「要件定義」であ る。また、当研究グループで実施した要件定義アンケートにて、115 名に回答を頂いた。そ の中の要件定義に携わった半数以上がプロジェクト中に要件定義の失敗による仕様変更を 経験している。 図 1. 工期遅延理由* 図 2. 要件定義の失敗 *(システム・リファレンス・マニュアル(SRM)の作成、http://www.ipa.go.jp/about/jigyoseika/04fy-pro/chosa/srm/srm3.pdf、IPA、2014/11/12 閲覧) 当研究グループ内では、漠然と「要件定義は難しい」との意識があるが、要件定義とは どのようなものなのかを研究するとともに、失敗を成功に導く方法を研究し、要件定義成 功に貢献するためのマニュアル作成を目標に研究を開始した。 【目的】 最初に、調査・研究を行う上で要件定義とはどのようなものであるか、また、要件定義 の成功とはなんであるかをメンバーで討議した結果、各ステークホルダーからヒアリング した要件をただまとめるだけでなく、潜在的な要望や、リリース後の業務運用も考慮し、 適切な実現範囲を見極めることがポイントであるという結論になった。 以上の討議から、要件定義の成功を以下のように定義した。 「リリース後の業務運用や潜在的なユーザ要望を考慮した上で過不足がない事」 上記を当研究グループが考える要件定義の成功として位置づけ、一般的な要件定義の手 順、既存の要件定義手法から成功に導く方法を研究し、作成するマニュアルの前提とする こととした。 このマニュアルを利用することによって、要件定義漏れが無くなり、ある一定の品質が 保たれたシステム構築が可能となり、プロジェクトを成功へと導くことを目的とした。 2014 Beacon Users' Group IE02 要件定義を考える 要旨 【研究詳細(方法) 】 要件定義に関するプロジェクト関係者の意識調査・事例収集のため、Beacon ユーザ会メ ンバーを対象とした要件定義アンケートを実施した。要件定義に関する意識調査から、ア ンケート対象者の携わったプロジェクトの情報、利用している要件定義手法等の統計調査 を目的とした。その結果、115 名のメンバーから回答いただいた。その内、過半数である 65 名のプロジェクト関係者が要件定義の失敗を経験し、ユーザ部門へのヒアリング不足、 発注側の暗黙知の無理解、レアケースの考慮不足、運用の情報不足など原因も多岐に渡る ことが判明した。 図 3. 集計対象のプロジェクト概要 図 4. 要件定義の失敗原因 前述の Beacon ユーザ会メンバーを対象とした要件定義アンケートにて取得した失敗事例 および当研究グループメンバーが関わった失敗事例に対して、研究グループで研究した要 件定義を成功させるための手法、気を付ける事項を用い「要件定義成功に貢献するための マニュアルと事例集(Q&A) 」を作成した。成功するための手法や気を付けることは、収集 した事例の中から、要件定義の知識体系である BABOK の考え方と照らし合わせ、特に有用 であると研究グループが判断したものを採用した。 【結果・考察】 今回、研究した内容の成果物として BABOK の考え方を参考に作成したマニュアルと事例 集(Q&A)が、プロジェクトの成功に有効であるということの検証が必要となるが、本テ ーマは複数年度での研究テーマとなっており、2 年間の活動を想定している。次年度では今 回作成した要件定義マニュアルについて模擬プロジェクトを設定し、使用した上で要件定 義を実際に行い、精度の検証、及びブラッシュアップを目標としている。このマニュアル が要件定義を成功させるための一定の指針となると幸いである。 以上 2014 Beacon Users' Group
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