OE11 システム運用における顧客満足についての研究 要旨 背景 昨今、企業経営ひいては企業活動全般においてシステム(IT)は大前提となっており、 ほとんどの企業においてシステム導入が不可欠となっている。そのような状況下では、シ ステムの安定稼動や障害発生時の早期復旧は最優先課題となり、それゆえ我々運用部門の 人間はそこに重点を置いて業務にあたってきた。 しかしながら、SLAを遵守し、安定稼働と障害発生時の早期解決について重点的に取 り組んできた運用部門に対する他部門からの評価は、必ずしも高いものとは言えない。そ れどころか、運用部門の自己評価と他部門からの評価の間に大きなギャップを生んでいる とさえ言われている。 具体的には、我々が重点を置いている「安定稼動のための運用・管理」は、利用部門か らの期待に十分に応えられていることがうかがえる。一方、 「利用部門のニーズに応じた構 築・刷新」は、利用部門の期待値を大きく下回るという状況になっている。 この利用部門からの期待値や評価におけるギャップを埋めることで、利用部門からの評 価を得る=顧客満足度を向上させることができるのではないかと考えた。 課題の抽出と仮説立案 ITILでは、顧客を「サービスの受益者、サービスの資金に対する拠出責任がある人」、 ユーザーを「日常的にサービスを利用する人」と定義されているが、当研究会では、我々 の直近の存在である「システム利用部門」を顧客と定義することとした。 そして、 「システム利用部門」の満足度を高めることで利用部門の業務効率を高め、結果 としてITILで定義される顧客の満足度向上につながると考えた。 【図1】 顧客の定義 課題の抽出にあたり、自分たちがこれまで経験してきた「顧客満足の低下を招いた事例」 を収集した。事例(事象)に共通するキーワードとしてニーズが抽出され、 「システム運用 部門としてニーズを的確に捉え、期待に応えることが顧客満足度向上につながる」という 仮説を立案した。 ⇒ 【図2】 課題抽出 2014 Beacon Users' Group OE11 システム運用における顧客満足についての研究 要旨 解決策の提示と検証 顧客満足度向上のために、ニーズを的確に捉えると言っても運用部門の我々にはニーズ 把握のノウハウを持ち合わせていない。そこで誰もが使えるガイドラインがあれば、顧客 のニーズを的確に捉えられるのではないかと考えた。 [解決策]CBOKの策定(システム運用における顧客のニーズ把握に関する知識体系) これまでの経験を知識体系として昇華させる形でCBOKのカテゴリの設定を行った。 具体的には、失敗事例と本番プロジェクトにCBOKを使用する事で、上記の課題が解消 されるか、CBOKの実現性について検証を行った。 【図3】 CBOKカテゴリ [検証結果] CBOKを用いることで利用部門のニーズ把握についての有効性が確認された。 具体的な検証結果については下記の図4の通り。 カテゴリ1 プロジェクトの初期から参画することで、顧客の要望の意図や背景を 把握でき、達成できる顧客要望の増加に効果があった。 カテゴリ2 ニーズホルダー選出チェックリストを使い、施策・現場ニーズ双方を 把握する事で、かたよりのないシステム提案に効果があった。 カテゴリ3 ニーズ確認書を使って、顧客とのミーティングを重ねることで、認識 のズレを防ぐことに効果があった。 カテゴリ4 メリット・デメリットシートを使うことで、本番稼動後の顧客の混乱 を防ぐことに効果があった。 カテゴリ5 Before/After シートを使うことで、システム変更や導入に対する理解 度のギャップを埋めることに効果があった。 カテゴリ6 稼動状況評価シートを使って、稼動1年後まで評価をして頂くことで システムの改善に効果があった。 【図4】 CBOK検証結果一覧 考察 検証を通じ、顧客のニーズを的確に捉えることは顧客の真に望むシステム変更や導入に つながり、顧客満足度は向上すると考える。また、今後CBOKへのカテゴリの追加やチ ェックリスト等をさらにバージョンアップさせることで進化させると共に、現行のCBO Kをテーラリング適用することにより高い効果が望めるものと考える。 2014 Beacon Users' Group
© Copyright 2024 ExpyDoc