属人化排除の話をしよう~ナレッジ継承の鍵は『聞く

OE15 東日本システム運用研究会
運用ナレッジの活用と整備
論文要旨
■研究のきっかけと目的
システムやサービスを運用している現場では、常に安定したシステム稼働と環境変化へ
の迅速な対応が求められている。しかしこれらの現場では、 特定の業務プロセスが特定の
担当者に強く依存しており、こうした属人的な体制のままでは、作業、オペレーションの
標準化に結びつかず効率も悪くなる。また特定の担当者に頼り切っていれば、現場内で今
まで築き上げたスキルやノウハウもシェア できない。その結果品質の高いサービスをユー
ザーへ提供することが困難になり 、サービス品質を劣化させヒューマンエラーに 起因した
サービス停止などのアクシデントが発生しかねない。実際に、大手データセンター事業者
や金融業界で相次いだサービス停止や情報流失の事故は記憶に新しいところだ。 これらの
アクシデントは、企業の社会的信用の毀損を招き、時には多額の賠償金を請求されること
もある。
これらの課題を解決するため本研究では、属人化された業務、知識、ノウハウを洗い出
すためのヒアリングシートを作成 することで、属人化した未成熟な運用管理から脱却する
ための確固たる運用設計を確立することを目的とする。
■考察範囲
本稿では、属人化されたナレッジを可視化するためのヒアリングシート作成を中心に据
える。ヒアリングシートを作成するため、様々な面から問題を考察する。
・ 属人化がもたらす様々な弊害
属人化がもたらす弊害を研究会所属メンバーの日常現場から考察し、現場で起きて
いる問題を洗い出す。
・ 運用ナレッジの定義
本稿で扱う運用ナレッジを定義する
・ 運用ナレッジ管理の適用基準(システム規模別 )の定義
可視化するための運用ナレッジ管理システムの適用基準をシステム 規模別に考察す
る。
・ ヒアリングシートの作成
属人化されている業務 、知識、ノウハウを洗い出すため、ヒアリングシートを作成
し、業務可視化の基となる要素を抽出する。
・ プロセスモデルによる 属人化されたナレッジの共有方法
ヒアリングシートの聞き取り内容を適応したプロセスモデルを SECI モデルに当て
はめることに元々はフォーカスしていたが、ヒアリングシートによる 現場での聞き
取り検証作業が困難だったため、ヒアリングシートによるナレッジの可視化に焦点
を充てることとする。
・ 作成したヒアリングシートの検証
©2014 Beacon Users' Group
OE15 東日本システム運用研究会
運用ナレッジの活用と整備
作成したヒアリングシートを各現場で検証。属人化されている業務の有無はある程
度把握できたがナレッジの掘り起しにまでは 至っていない。ヒアリング項目を見直
し、再度現場で検証し更なる発展を目指す 。
・ 見直したヒアリングシートで再検証
ヒアリングシートを見直し、カテゴリー別にヒアリング項目を分けた。再度現場で
検証したところ、 カテゴリー別にヒアリング項目を分けたことで、前回と比較して
一部回答者から具体的なナレッジの掘り起こし には成功した。しかし全体的にみる
と回答の精度にばらつきがあり、今後さらなるヒアリングシートの見直しが必要。
・ ヒアリングシート作成、検証から感じた課題と目標の考察
ヒアリングシートの作成、検証、見直し、再検証から出てきた課題を分析し、今後
の職務を遂行する上で目標を考察する
■結論
この問題提起を踏まえ、本研究会では、運用部門が取り組むべき活動の具体的な方向
性を示すための検討を進めてきた。 問題を分析するにあたり、研究会メンバーの各々の
現場で問題や不満を洗い出し、分析してもらった。可視化が実現できない最大の原因は、
長年親しんできた運用システムを変更することへの不安や手間、また売り上げに直結す
る改善活動ではないので、脱「属人化」することへの対価がなかなか見出せずに、二の
足を踏んでいるのが現状である。
解決に向け対応したものの十分に効果を発揮していないケースも少なくないと考えられ
る。問題解決のためにはどのような方策がありえるのか、スキル、ナレッジの継承が比
較的うまくいっている現場ではどのような施策を採用しているのか、我々が研究するべ
き論点は多数存在している。
本研究会では、 属人化された業務、知識、ノウハウを洗い出すためのヒアリングシー
トを作成し、紹介したいと考えている。最終的には、このヒアリングシート を使って各々
の現場で脱「属人化」された運用モデルが構築され、機能することを目指している。 ま
た脱属人化した運用モデルの構築には、ナレッジの共有方法も大きな課題である 。この
点については、本研究では考察のみにとどめているが、今後より深い研究がおこなわれ
ることを期待している。
本研究会が皆様の現場教育の一助になれば我々一同も幸いである。
以上
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