レポート課題 (1 月 15 日出題) の解答例とコメント 【問題 3.7】 T をエルミート変換とし,α をその固有値とする.T (⃗p) = α⃗p, ⃗p , ⃗0 とおく. (T (⃗p), ⃗p) = (α⃗p, ⃗p) = α(⃗p, ⃗p) = (⃗p, T (⃗p)) = (⃗p, α⃗p) = α(⃗p, ⃗p) と ⃗p , ⃗0 より (⃗p, ⃗p) > 0 なので α = α を得る.ゆえに α の虚部は 0 であり,α は実数である. 同様に T を歪エルミート変換とすれば,α = −α を得る.α の実部は 0 なので α は純虚数または 0 である. • α = α を満たす複素数が実数であることは基本事項だ.ただし α = −α から α は純虚数であるとしては いけない. • 実は T が歪エルミート変換なら iT はエルミート変換になる.iT の固有値は T の固有値の i 倍なので i 倍が実数になるのは純虚数または 0 ということになる. 【問題 3.9】 随伴変換の定義から (T ∗ (⃗y), ⃗x) = (⃗y, T (⃗x)) が成り立つが,これは T が T ∗ の随伴変換であることを意味している.ゆえに (T ∗ )∗ = T である. S , T を V の線形変換で随伴変換を持つものとする. ((T + S )(⃗x), ⃗y) = (T (⃗x) + S (⃗x), ⃗y) = (T (⃗x), ⃗y) + (S (⃗x), ⃗y) = (⃗x, T ∗ (⃗y)) + (⃗x, S ∗ (⃗y)) = (⃗x, (T ∗ + S ∗ )(⃗y)) より (T + S )∗ = T ∗ + S ∗ が成り立つ.以上から (T + T ∗ )∗ = T ∗ + (T ∗ )∗ = T ∗ + T, (T − T ∗ )∗ = T ∗ − (T ∗ )∗ = T ∗ − T = −(T − T ∗ ) であり T + T ∗ はエルミート変換,T − T ∗ は歪エルミート変換である.特に T = 12 (T + T ∗ ) + 12 (T − T ∗ ) より, T はエルミート変換と歪エルミート変換の和として表せる. ここで T = S 1 + S 2 かつ S 1 はエルミート変換,S 2 は歪エルミート変換とする. 1 1 (T + T ∗ ) − S 1 = − (T − T ∗ ) + S 2 2 2 と表せば,左辺はエルミート変換,右辺は歪エルミート変換である.右式の両辺を S とおけば,S はエルミー T= 1 1 (T + T ∗ ) + (T − T ∗ ) = S 1 + S 2 2 2 ト変換かつ歪エルミート変換なの d (S (⃗x), ⃗y) = (⃗x, S (⃗y)) = −(⃗x, S (⃗y)) が成り立つ.よって (⃗x, S (⃗y)) = 0 が常に成り立つ.ここで ⃗x = S (⃗y) とおけば S (⃗y) = ⃗0 を得るが ⃗y は任意なの で S = 0 である.よって S1 = 1 (T + T ∗ ), 2 S2 = 1 (T − T ∗ ) 2 であり,表し方は一意的である. 【コメント】 • 解答例は随伴変換の基本性質を示すことによって証明を与えた.もっと直接的な方法としては ((T + T ∗ )(⃗x), ⃗y) = (T (⃗x), ⃗y) + (T ∗ (⃗x), ⃗y) = (⃗x, T ∗ (⃗y)) + (⃗y, T ∗ (⃗x)) = (⃗x, T ∗ (⃗y)) + (T (⃗y), ⃗x) = (⃗x, T ∗ (⃗y)) + (⃗x, T (⃗y)) = (⃗x, (T + T ∗ )(⃗y) これによって T + T ∗ がエルミート変換であることが分かる. • 表示の一意性は直和と関係がある.線形変換全体の集合は和とスカラー倍が定義されており線形空間で ある.エルミート変換全体と歪エルミート変換全体はそれぞれその部分空間である.問題の主張はこの 和空間が直和であることを示せばよい.すなわち共通部分が 0 元だけということを示せばよい. 証明の中で,エルミート変換かつ歪エルミート変換なら 0 写像であることを示しているがこれはまさ に直和であることの証明である.
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