6/03 配布問題

力学 II 演義(スタンダード) No.6 (2014 年 6 月 10 日) 提出分
小テスト問題:質量 m の質点が x 軸上を運動する問題を考えよう.Lagrangian は
˙ =
L(x, x)
m 2
x˙ − U(x)
2
と書ける.時刻 ti から tf までの質点の軌道を x(t) とし,作用積分を
∫
tf
S=
˙
dt L (x(t), x(t))
ti
と定義しよう.
(1) 軌道 x(t) をわずかに変形したものを x(t) + δx(t) とする.ただし,時刻 ti と tf における質点の位置は固
定されているとして,δx(ti ) = δx(tf ) = 0 とする.この軌道の変化によって生じた作用積分の変化は,
∫
tf
δS =
˙ + δx(t))
˙
˙
− L (x(t), x(t))}
dt
{L (x(t) + δx(t), x(t)
ti
˙ の一次近似で評価せよ.
と書ける.被積分関数を δx(t),δx(t)
(2) 部分積分を使って,作用積分の変化分を,
∫
δS =
tf
[· · · ] δx(t)dt
ti
の形に変形せよ.
(3) 任意の δx(t) に対して δS = 0 だとすると,[· · · ] の部分は(t の関数として恒等的に)ゼロでなけらばな
らない.これが Newton 方程式 mx¨ = −dU/dx を導くことを示せ.
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問題 1(変分の直観的理解):小テスト問題を別の視点から考察しよう.時刻 t = ti に xi を出発し t = tf に xf
に到着する軌道 x(t)(つまり x(t) の関数形)を与えると,作用積分
∫
S[x(t)] =
tf
∫
˙
L(x(t), x(t))dt
=
ti
t2
t1
[
]
m 2
x˙ − U(x) dt
2
が定まるのであった.このように,作用 S[x(t)] は x(t) の関数形を与えると値が定まるという意味で,関数の
関数(汎関数)である.ti から tf までの時間を ∆t = (tf − ti )/M 刻みで区切り,分点となる時刻を tn = ti + n∆t
(n = 0, 1, 2, · · · , M) と定めよう.そして,各分点時刻における質点の位置を xn = x(tn ) と書く.x(t) の関数形
は各時刻 t = tn で質点が通過する座標 xn = x(tn ) を指定すれば(近似的に)定まるから,S を M − 1 個の変数
x1 , x2 , · · · , xM−1 に依存する(通常の意味の)関数だとみなせる.この (M − 1) 変数関数は,積分を和で近似す
ることにより,
]
M [
(
)
∑
m xn − xn−1 2
− U(xn ) ∆t
S(x1 , x2 , · · · , xM−1 ) =
2
∆t
n=1
˙ n ) を (xn − xn−1 )/∆t で近似した.
と表せる.ここで x(t
(1) 関数 S(x1 , x2 , · · · , xM−1 ) の全微分 dS を計算せよ.
(2) 関数 S(x1 , x2 , · · · , xM−1 ) が極値を取るとき dS = 0 である.∆t−1 dS = 0 に (1) の結果を代入した後,
M → ∞ の極限(∆t → 0)を取れ.その結果,Newton の運動方程式が導かれることを示せ.その際,
lim
∆t→0
x(tn + ∆t) − 2x(tn ) + x(tn − ∆t)
xn+1 − 2xn + xn−1
¨ n)
= lim
= x(t
∆t→0
∆t2
∆t2
に注意せよ(x¨ = d2 x/dt2 の意味).この式は x(tn ± ∆t) を Taylor 展開すれば出てくるので各自確認す
ること.
こうして,変分が多変数関数の全微分を拡張した概念であることが分かった.
問題 2(最短経路):二次元平面上の二点 P:(0, 0) と Q:(a, b) を結ぶ最短経路を変分法で求めたい.そのために
二点を結ぶ経路を (x, f (x)) (0 ≤ x ≤ a) と表そう.経路の始点と終点が P, Q であるという条件は, f (0) = 0,
f (a) = b と表せる.また,経路の長さ L は
∫
a
√
L=
0
(
)2
df
1+
dx
dx
(1)
と書ける.
(1) f (x) をわずかに δ f (x) へずらしたことによる L の変化を δL とする.δL を δ f (x) の一次近似で評価
して,
∫
a
δL =
[· · · ]δ f (x)dx
0
の形に表せ.
(2) f (x) が最短経路を表すときには任意の δ f (x) に対して δL = 0 であり,[· · · ] の部分はゼロでなければな
らない.このことから f (x) が満たすべき微分方程式を導け.
(3) (2) で得た微分方程式を f (0) = 0, f (a) = b の条件の下で解いて, f (x) を決定せよ.
問題 3(場の Lagrangian 密度)
:弾性体の時刻 t,位置 x における変位(場)を ψ(x, t) とするとき,この力学
系の作用は,
∫
S[ψ] =
∫
dt
dxL(x, t)
 ( )2
( )2 
∂ψ 
1  ∂ψ

L = ρ
−κ
2
∂t
∂x 
と書け,L(x, t) を Lagrangian 密度と呼ぶ.ここで空間の座標は,一般化座標としての場 ψ を区別する番号
付けのパラメーターに過ぎないことに注意しよう.場の任意の無限小変化を δψ(x, t) とする.ただし,時刻
t = t1 , t2 および x = x1 , x2 では δψ = 0 であるとする.この変化に対する作用の変分がゼロ (δS = 0) という条
件から波動方程式
が導かれることを示せ.ただし c =
√
1 ∂2 ψ ∂2 ψ
=
c2 ∂t2
∂x2
κ/ρ とする.