ケルヴィン波のエネルギー・擬運動量・ストークスドリフトと渦流 の 3 次元不安定性 福本康秀 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所) 回転流や渦流に立つ波をKelvin波といい,一般に3次元的である.楕円渦流の 流れは,方位波数の差が2の2個のKelvin波がパラメータ共鳴によって不安定性 を起こすというMoore-Saffman-Tsai-Widnall不安定性がよく知られている. ハミルトン力学系のスペクトルの観点からは,共鳴を起こすKelvin波のエネル ギーの符号が異なるか,両方とも0であることが線形(スペクトル)不安定である ための必要条件である. 実際に,波のエネルギーを撹乱振幅について2次まで 計算しようとすると,撹乱を「運動学的に許容される」もの,すなわち,任意 の局所的な循環をすべて保つものに制限する必要がある.Lagrange的方法によ り振幅について2次のKelvin波のエネルギーを計算することに成功し,この副産 物として,撹乱の非線形相互作用によって誘起される振幅について2次の平均流 を計算を求めることに成功した.これにより,振幅について3次オーダの弱非線 形発展方程式を導出する道がひらける. 波同士の相互作用によって誘導される平均流の計算はいろいろな状況で必要 とされ,地球流体の分野では,Generalized Lagrangian Mean (GLM) 理論と して発展している [1].GLM理論と対比させながら,Kelvin波が非線形的に誘 導する平均流と擬運動量やストークスドリフトとの関係を明らかにし,それぞ れの意味するところについて考察する [2]. 参考文献 [1] O. Bühler, Waves and Mean Flows (Cambridge University Press, 2009). [2] Y. Fukumoto and Y. Mie, Lagrangian approach to weakly nonlinear interaction of Kelvin waves and a symmetry-breaking bifurcation of a rotating flow, Fluid Dyn, Res. 47 (2015) 015509.
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