平成26年度

 2014 期末試験正解例
問1(1 点×20) 1) 1-シクロデセンカルボン酸 2) フェニル酢酸メチル 3) (S)-6-ブロモ-3-ヘプタノン
4) 安息香酸無水物 5) N-エチルメタンアミド 6) 2-ブチルブタンジアール 7)塩化アセチル
8) シクロヘキサノンオキシム 9) 4-オキソペンタン酸 10) 3-メチル安息香酸
4)を無水安息香酸、8)をシクロヘキサンオキシムと書いた誤答が多く見られた。また、1)の化合物
を シクロデケン〜とした誤答が非常に多く見られた。
11)
12)
O
13)
H
1
H
HO
5
9
O
3
16)
17)
O
OC2H5
1 OH
OCH3
O
H
OCH3
18)
O
CN
O
15)
O
Cl
19)
O
OC2H5
O
14)
O
20)
O
H3CO
OCH3
O
O
2
4
問2(5 点×2 + 10 点×1)メカニズムの説明で.電子の動きを示す屈曲矢印の方向を逆に書い
た者は 0 点。 教科書の章末問題(10.60)で講義の時の宿題と同じ問題である。宿題を(単に解答集や他人の回答を丸
写しにするのでは無く)自力で解いていれば簡単に正解できるはずである。
方法1:カルボン酸に大過剰のアルコールを加えて、酸触媒の存在下で加熱する。
O
H
+ HO
H+
O
O
+ H2O
O
メカニズムは教科書 p.321 の図 10.4 を参照
方法2:カルボン酸のカリウム塩とヨウ化アルキルを反応させる。
OK
+
O
I
O
+
KI
O
メカニズムは教科書 p.324 を参照
問3(20点 部分点あり) この問題の前半は、教科書の章末問題(11.35 で講義の時の宿題と同じ問題である。宿題を(単に解答
集や他人の回答を丸写しにするのでは無く)自力で解いていれば簡単に正解できるはずである。
酸または塩基触媒で処理すると問題の化合物はいったんエノール化し、それがもう一度ケト型に戻る
ときにラセミ化が起こるために光学活性を失う。一方、強塩基の存在下でヒドラジンと反応させると
Wolff—Kishner 反応によりケトンのカルボニル基がメチレン(-CH2-)になる。するとこの化合物から
不斉炭素が無くなるため、光学不活性となる。
問4 (20 点 部分点あり ただし、アルドール反応とアルドール縮合が区別できていない者は 0 点)
プロパナールとブタナールには共にα水素が存在する。それぞれのアルデヒドを英語の頭文字を使っ
て P と B で表すとすると、この混合物のアルドール反応では P アニオンと P、P アニオンと B、B ア
ニオンと P、B アニオンと B という 4 種類の反応が起こり得る。
OH
O
O
+
H
5
H
H
H
H
H
2
O
O
O
+
H
6
OH
O
H
H
H
H
H
2
O
H
+
H
H
6
H
H
H
H
1
O
OH
O
+
H
2
O
O
H
5
O
H
1
O
OH
O
1
H
2
O
H
1
O
問4’ (20 点 部分点あり) 2,2-ジメチルプロパン酸のブチルエステルとプロパン酸の tert-ブチルエステルをそれぞれDとPと
いう略号で表すことにする。それぞれの構造を見てみると、D には酸性度の高いα水素が無く、クラ
イゼン縮合反応での求核種であるエノラートアニオンにはなり得ない。一方 P にはα水素があるので、
こちらは P アニオンとなり得る。従って反応は P アニオンと D、P アニオンと P という 2 種類のみ
のはずである。
O
O
O
+
O
O
O
O
4
3
O
1 O
O
O
O
O
O
O
+
O
O
O
O
O
3
1 O
O
問5(1 点×10 + 1 点×5 + 2,2,1点) a) 1) CH3CH2CH2MgBr
2) H+
f) 1)LiAlH4 2) H+
b) HOCH2CH2OH / H+
g) Ag+(アンモニア性硝酸銀)トーレンス試薬
c) PCC
h) H2O / H+ or OH-
d) 1) NaBH4
2) H+
i) H2N-OH
e) Na2Cr2O7 /H+
j) H2N-NH-C6H3(NO2)2 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン
講義中に強調したにもかかわらず、NaBH4 や LiAlH4 を H+存在下で使用するような表現の誤答が多
くあった。極めて遺憾である。
ア)酢酸ベンジル イ)N,N-ジメチルエタンアミド ウ)塩化アセチル (塩化エタノイル)
エ)酢酸エチル オ)3-オキソブタン酸エチル (アセト酢酸エチル)
設問で名称を問うているのに構造式のみ書いた者が多かった。当然 0 点
1)目的化合物はα,β−不飽和カルボニル化合物(ケトン)である。これをカルボニル縮合反応で合成
するにはアルドール縮合を用いればよい。アルドール反応生成物から脱水により炭素−炭素二重結合
が生成しているはずであり、さらにヒドロキシはカルボニル基のβ−位にあったはずである。従って
次式に示すように 2,6-ヘプタンジオンの分子内アルドール反応で合成できる。
O
H
O
O
O
H
CH
CH O
CH OH
-H2O
H
O
O
CH3
NaOEt
O
カルボニル縮合反応ではなく、ケトンのαブロモ化ならびに脱 HBr を用いた誤答が多くあった。
2)目的化合物はβ−ケトエステルである。これをカルボニル縮合反応で合成するならばクライゼン
縮合を用いればよい。従って次式に示すようにヘキサン二酸ジメチルの分子内クライゼン縮合反応で
合成できるはずである。
O
O
MeO
OMe
O
MeO
O
O
OMe
MeO
O
OMe
NaOEt
O
O
OMe
3)目的化合物はα,β−不飽和カルボニル化合物(アルデヒド)である。これをカルボニル縮合反応で
合成するとするとアルドール縮合を用いればよい。アルドール反応生成物から脱水により炭素−炭素
二重結合が生成しているはずであり、さらにヒドロキシはカルボニル基のβ−位にあったはずである。
また、ベンゼン環以外の環構造がないことから分子間でアルドール反応が進行したことがわかる。た
だし、α水素をもたない芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド)だけではアルドール反応は進行しな
いので、他のアルデヒドとの交差アルドール反応が進行したはずである。
OH
O
H
-H2O
C
H
O
H
C
H
H
O
HC
O
O
CH
H
C
H
O
H
+ HC
H
H
NaOEt
O
H2C
H
H
交差アルドール反応では生成物が複数になるが、ベンズアルデヒドにはα水素が無いので、こちらの
アルデヒドを大過剰用いればアセトアルデヒドから生成したエノラートアニオンとベンズアルデヒ
ドが反応する確率が高くなり,本問の目的物が優先して生成すると考えられる。