LED照明を用いた 果実品質評価のための

カンキツ果実に含まれる蛍光物質の特定
共同研究機関:東北大学,愛媛大学
背景
選果場での検査作業
1次選別
腐敗,日焼け,傷などの検査
Rotten part
糖度測定
糖度,酸味などを測定
外観測定
傷,形状などを測定
2次選別
箱詰め前の最終検査
Normal part
腐敗部に紫外線を照射すると
蛍光反応を示す
Fig. Rotten orange
カンキツ果皮の蛍光物質の特定
実験Ⅰ ミカンの蛍光物質の分析
蛍光物質の抽出方法
ヘキサン
供試材料
エバポレーター
サンプル
温州ミカン南柑20号の果皮
(フラベド層も含む)1kg
果皮の粉砕
果皮
物質の抽出
シリカゲルを詰める
提供 EYELA
分液ロート
提供 アズワン株式会社
減圧濃縮
液液分配
吸着剤
ガラスカラム
抽出液
メタノール層に
ついて分離
提供 アズワン株式会社
液体クロマトグラフィー
溶媒
薄層クロマトグラフィー
サンプル
Relative intensity
蛍光物質の解析結果
Methyl ether group
Aromatic ring

NMR解析結果より,フラボノイドで糖が
なく、メチルエーテル化されている可能
性がある.

ミカンの蛍光物質は複数である.

シネセチン,タンゲレチン,ノビレチン,
ヘプタメトキシフラボンの可能性がある.
混合液とサンプルを同定
Chemical sift
Fig. NMR spectrum
OMe
H
O
C
H
H
OMe
H
OMe
OMe
OMe
OMe
OMe
H
OMe
Fig. Benzene (left) and methyl ether
(middle) and flavonoid (right)
H
OMe
H
OMe
Fig. Sinenstein (left) and tageretin (right)
Me = CH3
実験Ⅱ 腐敗部位検出実験
蛍光成分全体での励起,蛍光スペクトル
8
A bsolute intensity
7
A bsoulute Intensity
14
Peak
6
5
4
3
2
1
12
Effective area
10
8
6
4
2
0
0
400
450
500
550
W avelength(nm )
Fig. Fluoresce spectrum
600
300
350
400
450
W avelength(nm )
Fig. Excitation spectrum
500
<目的>
ミカン果皮より抽出されたサンプル(3-2)中に含まれる分子の分子量をMSで測定し、
推測される構造と比較することで、蛍光物質の分子式を決定する。
NMRの結果からサンプル中に含まれる蛍光物質は、
Nobiletin,Tangeretin,Sinesetin,Heptamethoxyflavoneの
いずれかであることが推測されている。(山本君卒論より)
各分子の構造、及び分子量は以下の通りである。
Tangeretin
Sinesetin
Nobiletin
3,5,6,7,8,3’,4’-
372.373
372.373
402.399
Heptamethoxyflavone
432.425
その他の構造異性体あり
サンプル3-2及び、標品(Nobiletin,Tangeretin)について質量分析を行った
Nobiletin,Tangeretinについては標品を購入できたが他二つについては、購入できなかった(販売していなかっ
た)。
<試薬>
・サンプル3-2
・Nobiletin(Wako 149-07521)
・Tangeretin(Wako 208-15671)
・蒸留メタノール(溶媒)
<装置>
Applied Biosystems社製 API 2000 LC/MS/MS
・四重極型
・イオン化法:ESI法
<測定結果-Blank(MeOH)>
ブランクに多くのピークが現れた→装置の汚れが原因?
この結果よりサンプルは250~500amuの範囲(赤枠内)について測定を行うこととした。
<測定結果-Tangeretin(標品)>
373.2にピークが見られる。→Tangeretin(分子量: 372.3)を観測
(プロトン分,分子量が大きく観測されている)
<測定結果-Nobiletin(標品)>
403.2にピークが見られる。→Nobiletin(分子量: 402.3)を観測
<測定結果-sample>
パルミトイル酸?
Blank由
来
Heptamethoxyfavone
Nobileti
n
Tangeretin
Tangeretin,Nobiletinのピークはほとんど見られない。
433.2のHeptamethoxyfavoneのピークが見られる。
257.0が主ピークになっているが、これはパルミトイル酸かもしれない。(パルミトイル
酸は蛍光を持たない)
まとめ
・サンプル(3-2)、および標品(Tangeretin,Nobiletin)のMSを測定した。
→標品で理論的なピークと実測したピークが一致した。
→サンプルでは、Tangeretin,Nobiletinのピークはほとんど観られなかった。
→サンプルでは、433.2の位置にピークが観れらた。

この分子量はHeptamethoxyflavoneと一致する。
→サンプルで、257の位置にピークが観られたが、これはパルミトイル酸かもし
ない。パルミトイル酸は蛍光を持たない。
れ
・蛍光物質の同定
→今回の測定から、蛍光物質の正体は4つの候補の内、 Heptamethoxyfavoneで
あ
る可能性が高い。蛍光物質の同定のためには、 Heptamethoxyfavoneの
純
品を用意し、その励起波長及び蛍光波長を測り、ミカンのものと一致するか 確
かめるのが、最も簡単な方法であると考えられる。
→ Heptamethoxyfavoneには構造異性体が存在する。 Heptamethoxyfavoneの詳し
い構造まで決めるためにはサンプルの精製度をあげてNMRなどを測定しな お
す必要がある。今回の実験にあたり、参考にした文献では3,5,6,7,8,3’,4’
Heptamethoxyflavoneの存在が報告されている。
参考文献
1:J. Agric. Food Chem. 1987, 35, 525-529
2:J. Agric. Food Chem. 1994, 42, 1697-1700
参考: Heptamethoxyfavoneの構造異性体
3,3′,4′,5,5′,7,8‐Hep
tamethoxyflavone
5,6,7,8,3′,4′,5′‐Hep
tamethoxyflavone
3,3′,4′,5,5′,6,7‐He
ptamethoxyflavone
2′,3′,4′,5,5′,6,7‐Hepta
methoxyflavone
3,5,6,7,8,3′,4′‐He
ptamethoxyflavone
2′,3′,4′,5,5′,7,8‐Hept
amethoxyflavone