第 26 回万有仙台シンポジウム Poster 発表要旨 PTP1B 阻害活性を有するダイシダバロン A, B, C の全合成 Total Synthesis of Dysidavarones A, B and C, Potential PTP1B Inhibitors 成田紘一、福井友理恵、佐藤江里、安達剛史、加藤 正(東北薬大) ダイシダバロン類 (1~3) は、海綿 Dysidea avara のエタノール抽出物から単離・構造決定された 天然有機化合物であり、PTP1B 阻害活性を有することが報告されている 1)。また、前例のないダイ シダバラン骨格を有していることから、構造的にも大変興味深い化合物である。 これまでに、Menche らによるダイシダバロン A (1) の全合成が一例報告されているが 2)、我々はより効率的な 1 の合成 ルートの確立を目指し、その全合成研究を行った 3)。また、確立した方法論をもとにダイシダバロ ン B (2) および C (3) の初めての全合成を達成したので報告する。 デカリン環部 4 および芳香環部 5 の Birch 還元条件下でのカップリング反応を含む 3 工程で キノン 6 を合成した(Scheme 1)。得られた 6 に対し、CuBr•SMe2 存在下、LiN(SiMe3)2 を作用 させたところ、ダイシダバラン骨格を有する 7 を良好な収率(84%)で得ることに成功した。そ の後、Wittig 反応とオレフィン部位の異性化を含む数工程の官能基変換を行い、メトキシキノン体 8 を合成した。最後にメトキシ基をエトキシ基へと変換することで、ダイシダバロン A (1) を得る ことに成功した(芳香環部 6 の出発物質である o–バニリンからの総収率 30%, 13 工程)3)。また、 芳香環部 9 を用いて合成したキノン体 10 に対し、同様の環化反応を行ったところ、中程度の収 率 (49%) ながら環化体 11 を得ることができた。環化体 11 からダイシダバロン C (3) へと誘導 し、最後にエキソオレフィンをエンドオレフィンへと異性化させることでダイシダバロン B (2) の 全合成を達成した。 Br Me OTBS OMe O O O O 5 H O Me O 4 Me OMe O THF –40ºC → rt, 48 h 84% O Me 6 Br Me H CuBr · SMe2 LiN(SiMe3)2 Me H O O H O O O Me Me Me O 8: R = Me 1: ダイシダバロン A (R = Et) O 7 O OMe O O O Me Me H CuBr · SMe2 LiN(SiMe3)2 Me 10 THF –40ºC → rt, 48 h 49% OR OMe OTBS OMe 9 O Me H O O O O O OMe Me Me O 11 OEt O exo : ダイシダバロン C (3) endo : ダイシダバロン B (2) Scheme 1. ダイシダバロン A, B, C の全合成 <参考文献> 1) W.-H. Jiao, X.-J. Huang, J.-S. Yang, F. Yang, S.-J. Piao, H. Gao, J. Li, W.-C. Ye, X.-S. Yao, W.-S. Chen, H.-W. Lin, Org. Lett. 2012, 14, 202–205. 2) B. Schmalzbauer, J. Herrmann, R. Müller, D. Menche, Org. Lett. 2013, 15, 964–967. 3) Y. Fukui, K. Narita, T. Katoh, Chem. Eur. J. 2014, 20, 2436-2439. 発表者紹介 氏名 成田 紘一(なりた 所属 東北薬科大学 職 助教 研究室 医薬合成化学教室 こういち)
© Copyright 2024 ExpyDoc