微分積分 II 講義メモ (10 月 30 日)

微分積分 II 講義メモ (10 月 30 日)
本日の講義の要点
1. 極値の定義についての補足
テキスト p.95 の極値の定義に従えば, f (x, y) が (a, b) で極大であるとは
(a, b) の近くのすべての (x, y) , (a, b) について f (x, y) < f (a, b)
が成り立つことを言う.これに対し
(a, b) の近くのすべての (x, y) について f (x, y) ≦ f (a, b)
が成り立つことを広義の極大という. f (a, b) が最大であっても,その周りに f (x, y) = f (a, b) を満たす
点が無数にあれば,極大ではない.ただし広義の極大にはなっている.極大だけではなく広義の極大と
いう概念も覚えておく必要がある.
2. 問題 4.3 の 7(極値問題)について
2 変数関数 f (x, y) が C 2 級の時,その極値問題は次のプロセスで考察する.
• 連立方程式 f x (x, y) = 0, fy (x, y) = 0 を解く.
• その解 (a, b) において A = f xx (a, b), B = f xy (a, b), C = fyy (a, b) を求める.
• AC − B2 > 0 のとき,A > 0 なら極小,A < 0 なら極大である.AC − B2 < 0 のときは極値をとら
ない.
• AC − B2 = 0 のときは, f (x, y) − f (a, b) の (a, b) の周りでの正負を直接考察する.
第 1 の関門は連立方程式を解くことだ.その際,代入と「ab = 0」を「a = 0」または「b = 0」と読
み替えて場合分けをするのが基本となる.例えば (3) では
f x = 3x2 + 2x + 2y = 0,
fy = 3y2 + 2x + 2y = 0
だが,第 1 式と第 2 式の差をとれば 3x2 − 3y2 = 3(x − y)(x + y) = 0 を得る.よって x − y = 0 または
x + y = 0 でありこの 2 つの場合に分けて考える.
• y = x の場合は 3x2 + 4x = 0 であり x = 0, または x = −4/3 である.y = x なので (0, 0) と
(−4/3, −4/3) を得る.
• y = −x の場合は 3x2 = 0 であり x = 0 となる.この場合は (0, 0) のみである.
AC − B2 の正負による判定は定理 4.3.4 にまとめられている.正確に覚えておくこと.線形代数で対
称行列の対角化を学習した時はそれと関連させて理解しておくこと.
AC − B2 = 0 の場合の判定は一般論はない.この問題の中では (3) の (0, 0) が該当する. f xx =
6x + 2, f xy = 2, fyy = 6y + 2 なので (0, 0) では A = B = C = 2 であり AC − B2 = 0 となる.さて,この
問題では f (0, 0) = 0 なので f (0, 0) との大小は, f (x, y) の正負を調べればよい.
f (x, y) = (x3 + y3 ) + (x + y)2 = (x + y)(x2 − xy + y2 + x + y)
と整理してみれば f (t, −t) = 0 = f (0, 0) なので極値をとらない.ただし広義の極値を持つか否かはこれ
では不明である.ここでは省略する.
3. 陰関数
関数 f (x, y) について,f (x, y) = 0 は y と x の何らかの関係を定めると考えられる.特に関数 y = φ(x)
が f (x, φ(x)) = 0 を満たすとき, f (x, y) = 0 の定める陰関数と呼ぶ.定理 4.4.1 は陰関数の存在とその
微分を記述する定理である.
4. 定理 4.4.1 の図形的考察
定理 4.4.1 の主張の意味を正確に捉えるのは簡単ではない.また証明も複雑で,自分でじっくり考え
なければ理解できないような代物である.ここではテキストの記述の仕方から離れて図形的考察を元に
定理 4.4.1 の意味を考えてみる.
• f (x, y) が C 1 級なので z = f (x, y) のグラフは滑らかな曲面である. z 座標を高さと捉え,曲面の
(x, y) 地点での標高が f (x, y) であると考える.
• グラフと水平面 z = c との切り口 {(x, y) | f (x, y) = c} は高さ c の等高線である.
• f (a, b) = c のとき z = f (x, y) のグラフの (a, b, c) での接平面は
z − f (a, b) = z − c = f x (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b)
で与えられる(定理 4.2.6).この平面が傾いているとき,すなわち f x (a, b) = fy (a, b) = 0 でないと
き,接平面と水平面 z = c との切り口は直線
f x (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b) = 0
である.
• この直線は等高線 f (x, y) = c の (a, b) における接線である.
以上の考察から次は自然なものに感じられるだろう.
定理 f (x, y) が C 1 級で f x (a, b) = fy (a, b) = 0 でないとき (a, b) を通る等高線 f (x, y) = f (a, b) は
(a, b) の周りで滑らかな曲線でありその接線は次の式で与えられる.
f x (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b) = 0
ここでさらに接線が x 軸に垂直でなければ( fy (a, b) , 0 ならば),等高線は (a, b) の周りで y = φ(x)
の形にかけることが予想される.それを厳密に述べたものが定理 4.4.1 である.
5. 合成関数の微分による陰関数の導関数
f (x, y) = 0 から陰関数 y = φ(x) が定まるとき, f (x, φ(x)) = 0 が成り立つ.この両辺を微分するとき,
x で微分することと, x で偏微分することが同時に現れ混乱する可能性がある.講義では新しい変数 t
を導入し
z = f (x, y),
x = t, y = φ(t)
という合成関数 z = f (t, φ(t)) と考えた.さて陰関数の定義から z = 0(定数関数)である.
0=
dz
dx
dy
= fx
+ fy
= f x + fy φ ′
dt
dt
dt
これから fy , 0 のときは自然に
φ′ = −
fx
fy
が得られる.さらにこの式を t で微分すれば
0=
d
d
( f x ) + fy φ′ + fy φ′′ = f xx + f xy φ′ + fyx φ′ + fyy (φ′ )2 + fy φ′′
dt
dt
であり φ′ = − f x / fy を代入して
f xx − 2
f xy f x
fyy ( f x )2
( fy )2 f xx − 2 f x fy f xy + ( f x )2 fyy
′′
+
+
f
φ
=
+ fy φ′′ = 0
y
fy
( fy ) 2
( fy )2
を得る.これから例題 4.4.2 の式はすぐ導ける.
d f x (x, y)
という記述があるが,これは f を x で偏微分した後, x で微分したものであ
dx
る.講義では f x との合成関数 f x (t, φ(t)) を作り t で微分している.結局同じことになるが,こういうよ
例題 4.4.2 で
うな変数の扱いは間違いにつながる可能性がある.気を付けたほうが良いと思う.
本日の課題とヒント
問題 4.4 の 3 を課題にする.なお求めるのは接線のみで良い.