ファイナンスのための数学基礎 第1回レポート解説 担当:楠美 将彦 e-mail:[email protected] 問題 1.1 プロジェクトAはこれから 10 年間に年末ごとに 3 億円、プロジェクトBはこれから 5 年間 に年末ごとに 6 億円利益が出ることがわかっているとする。割引率が年 5 %ならば 、現在価値で評価 するとど ちらが何億円大きいだろうか。 (ただし 、単純な N P V の計算とし 、答えは小数点以下第 2 位 まで求めてみよう。) 解答 1.1 プロジェクトA:1 年目の年末の利益の現在価値を第 1 項、公比 える。 初項 1 − 公比項数 = 1 − 公比 3 1.05 1 1.05 1 1− 1.05 1− 初項 1 − 公比項数 = 1 − 公比 1 1.05 1 1− 1.05 10 として考 10 = 23.17( 億円) プロジェクトB:1 年目の年末の利益の現在価値を第 1 項、公比 6 1.05 1 1.05 、項数 1 1.05 、項数 5 として考える。 5 1− = 25.98( 億円) したがって、プロジェクトBの方が 2.81 億円大きな価値がある。 問題 1.2 今、100 万円を 2 カ所に 10 年間預ける。金融機関Cは名目利子率が年 5 %の連続複利体系 を採用している。金融機関Dは名目利子率が年 5.1 %の年 2 回の複利体系を採用している。10 年後に ど ちらの金融機関の残高が何万円多いだろうか。 ( 小数点以下第 4 位まで求めてみよう。) 解答 1.2 C:連続複利のケース 100 × e0.05×10 = 100 × e0.5 ∼ = 164.8721 D:年 2 回のケース 100 × 1 + 0.051 2 2×10 = 100 × (1.0255)20 ∼ = 165.4677 したがって、年 2 回の複利体系の金融機関Dが 165.4677 − 164.8721 = 0.5956( 万円)だけ多い。 ( ちなみに 、Dが年 5.0 %の年 2 回複利なら、およそ 163.8616 万円である。) 問題 1.3 今、200 万円を借り入れた。毎年末 20 万円ずつ支払うとすると、10 年後の残高は何万円か ( 小数点以下第 2 位まで求めてみよう) 。 また、残高が 0 になるのは何年目か。整数で答えなさい。ただし 、利子率の水準は、固定で年 5 %と する。 解答 1.3 1 年末 y1 = 200 × 1.05 − 20 = 190 2 年末 y2 = y1 × 1.05 − 20 1 x = 1.05x − 20 , −0.05x = −20 , x = 400 an+1 − 400 = 1.05(an − 400) an − 400 = (a1 − 400) × 1.05n−1 an = (190 − 400) × 1.05n−1 + 400 an = 400 − 210 × 1.05n−1 a10 = 400 − 210 × 1.0510−1 ∼ = 74.22 以上の結果から 、10 年後の残高は 74.22 万円である。また、残高が 0 円になる時点を求めるには 、 an = 0 を代入した以下の式を解くと良い。 an = 400 − 210 × 1.05n−1 0 = 400 − 210 × 1.05n−1 400 = 210 400 = ln 210 400 = ln ÷ ln 1.05 210 ∼ = 14.20 1.05n−1 (n − 1) ln 1.05 n−1 n したがって、整数ならば 15 年で残高が 0 になる。 問題 1.4 今、ある企業の利益( y )が次の式で表されるとする。ただし 、x, z はそれぞれ市場動向を 示すパラメータであるとする。このとき、x = 1, z = 2 で評価すると各パラメータの変化が利益にど のように影響するのかを式で表しなさい。 ( 次の式を全微分しなさい。) y = f (x, z) = 3x3 + 4x2 z + 2z 3 解答 1.4 ∂y = 9x2 + 8xz ∂x dy = , ∂y = 4x2 + 6z 2 ∂z ∂y ∂y dx + dz = (9x2 + 8xz)dx + (4x2 + 6z 2 )dz ∂x ∂z この式に、x = 1, z = 2 を代入する。 dy|x=1,z=2 = (9 + 16)dx + (4 + 24)dz = 25dx + 28dz 問題 1.5 株価( y )と為替レート( x )が次の関係で表されることがわかっているとする。為替レート dy を求めなさい。) の変化に対する株価の変化を求めなさい。 ( 次の関数の dx f (x, y) = 4y 3 + 3x2 + 2y + 3xy + 1 = 0 2 解答 1.5 陰関数定理を利用すると次のように解ける。 ∂f (x, y) = 6x + 3y, ∂x ∂f (x, y) = 12y 2 + 2 + 3x ∂y 6x + 3y dy =− dx 12y 2 + 2 + 3x 問題 1.6 u(x, y) = x6 y 3 は同次関数かど うか確認しなさい。同次関数ならば 、何次同次ですか。 解答 1.6 オイラーの定理を適用してみる。 ∂u(x, y) ∂u(x, y) x+ y ∂x ∂y = 6x5 y 3 × x + 3x6 y 2 × y = 6x6 y 3 + 3x6 y 3 = 9x6 y 3 = 9 × u(x, y) よって、9 次同次関数である。 問題 1.7 次の式を x = 1 の周りで 2 次導関数までテイラー展開しなさい。 y = (4x − 3)6 解答 1.7 y = f (x) と置き、微分する。 df (x) = 6 × (4x − 3)5 × 4 = 24(4x − 3)5 dx d2 f (x) = 24 × 5 × (4x − 3)4 × 4 = 480(4x − 3)4 dx2 次の各項の値を求める。 f (1) = 1 , df (1) = 24 dx , d2 f (1) = 480 dx2 以上の予備計算から、テイラー展開をした式は以下のようになる。 f (x) = 1 df (1) 1 d2 f (1) 1 480 f (1) + (x − 1) + (x − 1)2 (x − 1)2 = 1 + 24(x − 1) + 2 0! 1! dx 2! dx 2 問題 1.8 ある企業の利益関数が P = −x3 + 3x2 + 24x + 30 と表されるとする。この企業の利益を極 大にする生産量はいくらだろうか。ただし 、P は利益、x は生産量を表す。 解答 1.8 dP = −3x2 + 6x + 24 = −3(x2 − 2x − 8) = −3(x + 2)(x − 4) dx [−6x + 6]|x=−2 d2 P = −6x + 6 dx2 = 18 > 0 [−6x + 6]|x=4 = −18 < 0 したがって、x = −2, x = 4 の時に極値をとり、2 階の条件を確かめると 、x = 4 の時に利益が極大 ( P = 110 )になる。 3 3 1 問題 1.9 今、ある人の効用関数 u = x 4 y 4 がわかっているとき、効用最大化の消費の組み合わせ (x, y) を求めなさい。 ただし 、それぞれの財の価格は x は 5 円、y は 10 円とし 、予算が 2000 円であるとする。 解答 1.9 ラクランジュ関数を作り、各変数で偏微分したものを = 0 と置く。 3 1 L = x 4 y 4 + λ(2000 − 5x − 10y) ∂L 3 1 1 = x− 4 y 4 − 5λ = 0 (1) ∂x 4 ∂L 1 3 3 = x 4 y − 4 − 10λ = 0 (2) ∂y 4 ∂L = 2000 − 5x − 10y = 0 (3) ∂λ 以上の 3 つの式を解くと、効用最大化をする組み合わせがわかる。 まず、(1) 式と (2) 式をともに、= 40λ の式にして、等式にする。 1 1 = x 4 y− 4 6x− 4 y 4 × x 4 y 4 1 3 = x 4 y− 4 × x 4 y 4 6y = x 6x− 4 y 4 1 3 3 3 3 3 ここで、両辺に x 4 y 4 を掛ける。 1 1 1 3 この結果を (3) 式に代入すると 、答えは、x = 300 , y = 50 ( u = 191.6829 , λ = 0.09584 ) となる。 問題 1.10 次の不等式制約下の最適化問題を解きなさい。ただし 、1 階の条件までの確認でよい。 0.5 max x0.5 1 x2 x1 ,x2 解答 1.10 s.t. x1 + 3x2 ≤ 24 , x1 + x2 ≤ 10 まず、ラグランジュ関数を作る。 0.5 L = x0.5 1 x2 + λ1 (24 − x1 − 3x2 ) + λ2 (10 − x1 − x2 ) 各変数の 1 階の導関数を求めると以下のようになる。 ∂L ∂x1 ∂L ∂x2 = 0.5x1−0.5 x0.5 2 − λ1 − λ2 = 0 (1) = −0.5 0.5x0.5 − 3λ1 − λ2 = 0 (2) 1 x2 各 λ についての条件を見ると以下のようになる。 ∂L ∂λ1 ∂L λ1 ∂λ1 ∂L ∂λ2 ∂L λ2 ∂λ2 = 24 − x1 − 3x2 ≥ 0 (3) = λ1 × (24 − x1 − 3x2 ) = 0 (4) = 10 − x1 − x2 ≥ 0 (6) = λ2 × (10 − x1 − x2 ) = 0 (7) 4 λ1 ≥ 0 (5) λ2 ≥ 0 (8) まず、(4) の式と (7) の式から 4 通りの解を考えることができる。これらを順に確認していく。 (その 1 ) λ1 = 0 , λ2 = 0 この場合、(1) 、(2) の式から x1 = 0 (x2 ≤ 8) もしくは x2 = 0 (x1 ≤ 10) となる。 (その 2 ) λ1 = 0 , 10 − x1 − x2 = 0 この場合、(1) 、(2) の式から x1 = x2 となる。また、これらの結果を条件式( 10 − x1 − x2 = 0 )に 代入すると、x1 = x2 = 5 となる。 (その 3 ) 24 − x1 − 3x2 = 0 , λ2 = 0 この場合、(1) 、(2) の式から x1 = 3x2 となる。また、これらの結果を条件式( 24 − x1 − 3x2 = 0 ) に代入すると、x1 = 12, x2 = 4 となる。 しかし 、(6) の式を満たさないので 、解の候補から外れる。 (その 4 ) 24 − x1 − 3x2 = 0 , 10 − x1 − x2 = 0 この場合、2 つの条件式から x1 = 3, x2 = 7 となる。 ( 条件から詳細な計算をすると、λ1 ∼ = −0.2182 , λ2 ∼ = 0.9820 となり、(5) 式を満たさないので解の 候補から外れる。) 以上の解の候補を目的関数に代入すると、最大値となるのは(その 2 )x1 = 5, x2 = 5 の場合である。 5
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