産業組織論 II 第6 講 練習問題

産業組織論 II 第 6 講 練習問題
練習問題の答え合わせがしたい場合は,解いたノートを持参しオフィスアワーに研究室まで来ること.
(部分的な解答でも構
わない.
)もしくは個別にアポイントメントをとること.
6.1 (二段階ホテリングモデル) 二浦屋と三浦屋は横浜市におけるラーメン市場の複占企業であると仮定する.横浜市の各
消費者は「理想的なラーメンはこうあるべきだ」という一家言を持っており,その理想的なラーメンの “立ち位置”を
x というパラメータで表わすとする.消費者の好みは十分に多様化しており,“さっぱり醤油ラーメン”を究極と考え
る消費者 (i.e., 立ち位置 x = 0) から “こってり豚骨ラーメン”を至高と考える消費者 (i.e., 立ち位置 x = 1) まで幅広く
存在している.講義と同様に,0 から 1 までの間の任意の立ち位置を持つラーメンに対して,そのラーメンを理想と
する消費者が同数存在すると仮定し,消費者全体の数は 1 で基準化する.以降は消費者をその理想とするラーメンの
立ち位置で区別する.即ち,“消費者 12 ”は x =
1
2
を理想のラーメンと考える消費者のことを指す.各消費者はラーメ
ンの消費から一律に 1000 の満足度を得るが,自身の理想から乖離したラーメンを消費することにストレスを感じ,不
効用が発生する.不効用は実際に消費したラーメンと理想のラーメンの立ち位置の距離に 500 をかけた形で発生する.
消費者 x の効用関数は具体的に以下の形で与えられている元する.

 1000 − 500(x − x)2 − p
N
N
ux (i) =
 1000 − 500(xM − x)2 − pM
if i = N
(1)
if i = M
二浦屋と三浦屋はラーメン価格だけでなく,ラーメンの味も選択できる場合を想定する.具体的には以下のような二
段階ゲームを考察する:
第 1 段階 二浦屋・三浦屋の双方が同時手番で “ラーメンの味”を選択する.二浦屋・三浦屋の味の立ち位置をそれぞれ
xN , xM で表す.簡略化のため,味の選択肢としては,0(i.e., さっぱり醤油), 12 (i.e., 醤油豚骨),1(i.e., こってり
豚骨) の三つの中から選択するものとする.
第 2 段階 両社の味の立ち位置がお互いに分かった後,二浦屋・三浦屋は同時手番で価格を選択する.二浦屋・三浦屋
の価格をそれぞれ pN , pM で表すとする.価格は 0 以上の任意の値を選択することが出来る.消費者は両社の味・
価格を観察した上でどちらかのラーメン屋を選択する.
議論を単純化するため,どの味のラーメンを選択しても生産に伴う費用は同一であり,費用関数 C(qi ) = 100qi で与
えられているとする.(qi は企業 i の生産量) またキャパシティ制約にも直面しておらず,横浜全体の需要を一社のみ
で賄えるとも仮定しておく.このとき以下の問いに答えよ.
(1) xN = xM を仮定する.この状況における各社の利潤関数を導出し,最適反応を求めよ.また xN = xM のケース
におけるナッシュ均衡価格を求めよ.
(2) xN < xM を仮定する.価格が一般に pN , pM で与えられた場合の両社の需要関数 DN (pN , pS ; xN .xM ), DM (pN , pS ; xN .xM )
をそれぞれ導出せよ.
(3) xN < xM のケースにおける各社の最適反応を導出し,このケースにおけるナッシュ均衡を導出せよ.
(4) これまでの結果を踏まえた上で第 1 段階のゲーム的状況を利得行列を用いて表せ.
1
(5) 部分ゲーム完全均衡における各社の味・価格,並びに均衡利潤をそれぞれ求めよ.
6.2 (不完全情報ゲーム) 情報集合を用いて以下の同時手番ゲームのゲームの木を書け.
(1)
松屋
200
200
400
25; 25
50; 0
0; 50
45; 45
すき家
400
(2)
次郎
L
太郎
R
U
4, 1
3, 0
M
2, 3
5, 2
D
1, 0
4, 2
6.3 (積の微分) 本問では 6.5 で使用する,掛算の形の微分について解説する.例えば関数 f (x) を以下のように定義する:
f (x) = g(x)h(x)
(2)
即ち,関数 f (x) は関数 g(x) と h(x) の掛算で与えられている.具体的には以下のような形が考えられる:
f (x) = x(x − 2)
(3)
f (x) = x2 − 2x
(4)
(3) 式を整理すると,
したがって関数 f (x) を x で微分すると,
f ′ (x) = 2x − 2
(5)
となる.本問の目的は,このような掛算の形の関数の微分を行う際に (4) のように一旦展開してから計算するのでは
なく,(3) の状態のまま求める練習を行うことである.一般に積の微分の公式は以下のように与えられる:
f ′ (x) = g ′ (x)h(x) + g(x)h′ (x)
2
(6)
即ち関数 f (x) の微分は,関数 g(x) のみを微分して関数 h(x) はそのままの項と,関数 g(x) はそのままで関数 h(x) の
みを微分した項の足し算で表される.注意: 両者を同時に微分しているわけではない!この公式を用いた場合,(3) は
以下のように計算することが出来る:
f (x) = (x)′ (x − 2) + x(x − 2)′ = x − 2 + x = 2x − 2
(7)
以上のことを踏まえた上で以下の関数を積の公式を用いて x について微分せよ.
(1) f (x) = x(x + 5)
(2) f (x) = x5 (x − 7)
(3) f (x) = (x + 1)(x − 2)
6.4 (合成関数の微分) 本問では 6.3 を踏まえた上で,6.5 で使用する微分の公式を解説する.具体的以下のような入れ子構
造になっている関数を考える:
f (x) = (x − 2)3
(8)
この関数は,関数 g(y) = y 3 の変数 y の部分が関数 h(x) = x − 2 となっている関数と見ることが出来る.このような
関数を合成関数と呼称する.(8) を微分する際,一旦展開した後に微分する方法が考えられる.即ち,
f (x) = x3 − 6x2 + 12x − 8
(9)
f ′ (x) = 3x2 − 12x + 12
(10)
したがって
このような展開するステップを踏まずに (8) から直接微分する方法を練習することが本問の目的である.合成関数
f (x) = g(h(x)) の微分の公式は以下のようになる:
f ′ (x) = g ′ (h(x))h′ (x)
(11)
即ち,まず外側の関数で微分し,次に中の関数を微分し,両者を掛け合わせたもので与えられる.この公式を用いる
と (8) の微分は以下のように計算できる:
f ′ (x) = 3(x − 2)2 × (x − 2)′ = 3(x − 2)2 = 3(x2 − 4x + 4) = 3x2 − 12x + 12
以上を踏まえた上で以下の計算をせよ.
(1) f (x) = (x + 1)5
(2) f (x) = (2x − 1)3
(3) f (x) = x(x − 2)3 (ヒント: 6.3 で紹介した積の微分の公式も一緒に用いること)
3
(12)
6.5 (二段階ホテリングモデル) 本問では 6.1 で考察した二浦屋・三浦屋の二段階ホテリングモデルを更に一般化する.具体
的には味の選択として 0, 1/2, 1 以外の点も選択できると仮定する.残りの点は 6.1 と変化ないものとする.このとき
以下の問いに答えよ.
(1) 6.1 の (1)-(3) の結果を用いて,縮約ゲームで各社の直面する利潤関数 π
ˆN (xN , xM ),π
ˆM (xN , xM ) を求めよ.
(2) ∂ π
ˆN (xN , xM )/∂xN ,並びに ∂ π
ˆM (xN , xM )/∂xM をそれぞれ計算せよ.
(3) xN , xM が 0 から 1 までの間で変化する場合,∂ π
ˆN (xN , xM )/∂xN と ∂ π
ˆM (xN , xM )/∂xM の符号はそれぞれどう
なるか,計算せよ.
(4) (3) を踏まえた上で部分ゲーム完全均衡で選択される味・価格,並びに均衡利潤をそれぞれ求めよ.
4