Economic Indicators 定例経済指標レポート

Global Market Outlook
USD/JPY130に変更なし
2015年3月19日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~予想通り「忍耐強く」は削除~
・3月FOMC声明文は予想通り「忍耐強く」の文言が削除された一方で景気判断が下方修正された。労働市場
の強さとスラック縮小を認め、6月利上げの可能性を残しつつも、景気判断を弱気に傾ける(moderated
somewhat)ことでハト派色を演出した格好だ。急速な利上げ観測の台頭とそれを反映した金利上昇、USD高
を抑制したい意図が強い印象を受ける。
・経済見通し並びにドットチャートは大幅に下方改定。FFレート中央値は2015年末が0.625%(12月時点:
1.125%)に低下し、FED内部のコンセンサスが年内2回の利上げに集中していることが示された。民間
エコノミストの利上げ開始時期の予想は6月と9月に集中していたが、少なくともここから判断すると9
月が優勢だろう。失業率は2015年が5.2%-5.3%から5.0%-5.2%へ下方修正され、長期均衡失業率も同じ
く5.0-5.2%(12月:5.2%-5.5%)に引き下げられた。これは最近の失業率低下にも拘らず、なお賃金上
昇圧力が鈍いことを反映したものと思われる。原油価格下落を反映してPCEデフレータは1.0%-1.6%か
ら0.6%-0.8%へ大幅に引き下げられたが、コアPCEデフレータは1.5%-1.8%から1.3%-1.4%と僅かな
修正に留まった。このことは原油安に伴うインフレ率鈍化が一時的現象というイエレン議長の見解に合致
する。
・2月英失業率(ILO基準)は5.7%と前月から変わらず(市場予想5.6%)。2月単月では5.8%と前月のそ
れ(5.6%)から上昇したが、雇用者数が14.3万人増加し、なかでも正社員は13.9万人増加するなど内容は
良かった。3月社会保険基準の失業率は2.4%に低下し、失業保険受給件数は31.0万人減少した。なお、目
下の英国の雇用者数増加ペースを米国の雇用統計に換算すると今月は70万人程度、3ヶ月平均では50万人
程度に相当する強さだ。米国と同様に賃金上昇率は前年比+1.6%と鈍かったが、前年の裏の影響もあるた
め、やや鈍さが誇張されている。
9 (%)
英 雇用統計
8
200
100
100
失業率
6
50
失業保険基準
0
-100
0
4
3
失業保険受給件数(右)
2
-200
-50
-300
-100
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
14
英 雇用統計
300
150
ILO基準
7
5
(千人)
400
(千人)200
就業者数変化
-400
15
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
14
15
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国はイエレン議長会見を受けて大幅にラリー。USD安も追い風となりNYダウは18000回復、
S&P500も一時2100を回復した。欧州株はFOMC未反映につき区々。
・前日のG10通貨はUSDが全面安。イエレン議長会見に米金利低下・USD安で反応。USD/JPYは120近傍に接近、
EUR/USDは1.08を回復した。19日日本時間でもUSD/JPYは同水準で推移。
・米10年金利は▲13.1bpの1.920%。ドットチャートの金利見通しに反応。欧州債市場はFOMC未反映だが、英
雇用統計の賃金上昇率の鈍さを受けたギルト債ラリー、ブンズ債の入札好調、スウェーデン・リクスバン
クの追加利下げを支援材料に独10年金利は▲8.5bp低下して遂に0.2%を割れた。
【国内株式市場・経済指標他】~ロイター短観 製造業DI:鋭く改善~
・日本株は米株高に追随できず安寄り後、下落幅拡大。
・3月ロイター短観で製造業DIは+16と前月から5pt改善したう
40
え、先行きDIも+21と更に5pt改善。輸出持ち直しや国内設備
30
投資需要に加え円安、原油安に伴う収益力改善が反映された模様。
20
日銀短観(3月調査)に期待を持たせる結果だ。反対に非製造業
ロイター短観
10
0
DIは+21と高水準から僅かに軟化。先行きDIも横ばいに留ま
-10
るが、最重要項目の卸売り・小売業のDIは現況・先行き共に改
-20
善しており底堅い印象。第3次産業活動指数が改善基調を強めて
非製造業
製造業
-30
-40
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
いることとも整合的だ。
13
14
直近は先行き
15
【注目点】~USD/JPY130変更なし~
・ハト派のFOMCを受けて米金利は再び2%割れ。それに呼応する形でUSDは全面安となり、利上げを見込んだ
USDロングポジションは修正を迫られた。しかしながら、FEDの利上げが数ヶ月程度後ろ倒しになろうと
も、USD/JPYが130を突破し、EUR/USDがパリティをブレイクするとの予想に何ら変更を加える必要はない。
JPYやEURのショートポジションを構築するにあたって最も重要なリスク選好が保たれているからだ。ここ
数年のJPYや最近のEURは米国経済の堅調さが示され株価も堅調に推移している時にショートポジションが
構築される傾向がある。これは同時にFEDが急激にタカ派に傾斜してリスク選好が阻害されると却って
USD高は進みにくくなるということの裏返しでもある。今回のFOMC結果とそれを反映した利上げ開始時期予
想の後ろ倒しはUSD/JPY、EUR/USDの中長期予想に大きな影響を与えなかったとみる。
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
19433.39
18,076.19
11,922.77
6,945.20
5,033.42
120.37
1.0774
0.323
1.920
1.596
0.197
0.474
1.308
1.273
(円)
19700
前日比
-111.09
227.11
-58.08
107.59
4.49
日経平均株価 12:55 現在
19600
19500
19400
19300
(㌦)
18200
18100
18000
17900
17800
17700
0.26
-0.01
%
%
%
%
%
%
%
-0.043
-0.131
-0.088
-0.085
-0.061
0.040
0.022
%
%
%
%
%
%
%
44.66 ㌦
1151.30 ㌦
1.20
3.10
㌦
㌦
121.5
NYダウ平均株価
USD/JPY
121.0
120.5
120.0
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
119.5
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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