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December 2015
世界ポリオ根絶に向けて
【図①】2015年ポリオ流行状況(2015年11月10日時点)
∼これからのポリオワクチン戦略∼
WHO(世界保健機関)は天然痘に次ぐ根絶のターゲットとしてポ
リオを設定し、1988年より世界規模でのサーベイランス強化や
経口生ポリオワクチン
(OPV)の普及啓発に取り組んできました。
これらの対策により、患者数は順調に減少、今年11月10日時点
での野生株ポリオウイルスによる患者は52例(昨年同時期:278
例)
と過去最低水準で推移しています。
また、昨年ポリオ根絶を
宣言したインドに続き、
アフリカ唯一のポリオ常在国であったナ
イジェリアも昨年7月以降野生株による患者は発生しておらず
【図①】
、ポリオの流行は終息の兆しを見せています。
◆新たな課題
∼ワクチン由来ポリオウイルス
(cVDPV)の流行
C
◆ポリオ根絶計画は最終段階へ
●
he
ck!
現在はパキスタン・アフ
ガニスタンのみで野生株ポリ
オウイルス(1型)による流行
がみられている
(その他の流
行は全てワクチン由来ポリオ
ウイルスによるもの)。
野生株1型 (N=52)
● ワクチン由来1型(N=15)
● ワクチン由来2型(N=2)
ポリオ常在国
【図②】
cVDPVによる型別ポリオ症例数
(2009∼2015年)
2015
2014 ※11/10時点
2009
2010
2011
2012
2013
1型
0
0
2
0
0
1
15
2型
184
55
65
68
65
55
2
3型
1
5
0
3
1
0
0
C
野生株が排除されつつある中、
新たに問題となっているのがワクチン
由来ポリオウイルス
(Circulating Vaccine-derived Poliovirus:
cVDPV )
の流行です。cVDPVは、
人から人へ感染を繰り返すうちに
毒性を取り戻した流行性のワクチン由来ポリオウイルスのことであ
り、
免疫が不十分な集団においての流行が度々報告されています。
この流行は特に2型によるものが多く
【図②】
、
ポリオ根絶達成のた
めには野生株のみならず2型を中心としたcVDPVを排除することも
喫緊の課題となっています。
he
ck!
cVDPVによる流行の多くは「2型」である。
◆cVDPV排除に向けた今後のワクチン戦略
OPV接種は継続しつつcVDPVの問題を解決するため、WHOは「ポリオ根絶・終盤戦略計画2013-2018」の中で2016年を目途に3
価OPVの使用を中止し、cVDPVのリスクが高い2型を除いた2価OPVを導入する方針を示しています
【図③】。
そして全ての流行が
終息した暁には、OPVの使用を中止し、不活化ポリオワクチン
(IPV)へ移行することを計画しています。2018年までにポリオ根絶を
達成するため、今後も世界規模での対策が必要です。
【図③】WHOポリオ根絶・終盤戦略計画2013-2018
1型 2型
3型
1型
3型
2015
ポリオウイルス検出・ 野生株伝播終息
伝播制御
2016
2017
2018(年)
アウトブレイク対応
(特にcVDPV)
免疫システムの強化・ 3価OPV使用中止 IPVを世界的に導入 IPVと2価OPVを
OPV接種停止
のための準備
OPV:3価から2価へ
定期接種化
ポリオ根絶
2価OPV
2014
OPV使用中止
3価OPV
2013
※Polio Eradication & Endgame Strategic Plan 2013‒2018より一部抜粋
エンテロウイルスD68について
出典 : The Global Polio Eradication Initiative、厚生労働省検疫所FORTH
エンテロウイルスD68感染症について
ピコルナウイルス科エンテロウイルス属
今年8月以降、小児を中心にポリオ様麻痺に類似した原因不
(ポリオウイルス
・エコーウイルスと同じ)
明の急性弛緩性麻痺の症例が相次いで発生しており
(8月1
・小児で発症しやすく、大人は無症状もしくは軽症例が多
日∼10月25日間で47症例:日本小児神経学会調べ)、その
い(米国では喘息既往のある小児で呼吸器症状が重症
患者の一部からエンテロウイルスD68(EV-D68)が検出され
ています。EV-D68については、昨年米国でも流行が発生して 臨床症状 化しやすいことが報告されている)。
・発熱や鼻汁、咳といった軽度なものから喘息様発作、呼
おり、重症呼吸不全症例が1,000例以上、
その一部に同様の
吸困難等の重度なものまで様々な呼吸器疾患を呈する。
麻 痺 症 状 が 見られ たと報 告されています。麻 痺 症 状と
・特異的な治療、抗ウイルス薬はなく、対症療法が中心。
EV-D68感染の因果関係について現時点で明らかにはなっ
治療予防
・日常的な感染予防策(飛沫感染予防、手洗い等)が基本。
ておらず、原因究明のための調査が現在行われています。
出典 : 国立感染症研究所 感染症疫学センター、平成27年10月21日 急性弛緩性麻痺(AFP)を認める症例の実態把握について
(協力依頼)、
日本小児神経学会 急性弛緩性麻痺(AFP)を認める症例の実態把握について
(中間報告とお願い)
企画編集:一般財団法人 阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp) 発行:一般財団法人 阪大微生物病研究会/田辺三菱製薬株式会社
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