January 2016 新 型 が 流 行 ! !ノロウイルス感 染 症 に ついて ノロウイルス感染症は、例年12月から1月にかけて流行のピークを迎える 冬の食中毒の代表的なものです。一昨年、国内で報告された食中毒患者 のうち半数以上がノロウイルスを原因とするものでした。 また、貝類等食 品からの感染だけでなく、ヒトを介した感染も多く見られ、特に保育園や 小学校等子どもが集団生活をする場所で感染が広がっています (図1)。 図1.ヒト⇒ヒト伝播の疑い例における 推定感染場所の割合(2014/15シーズン) 家庭 福祉養護 施設 ノロウイルスの特徴:遺伝子型が多く組み換えも起こる! ノロウイルスの遺伝子群はGⅠ∼GⅤの5つに分類され、主な流行はGⅠ とGⅡで起こっています。 さらに、GⅠは1∼9、GⅡは1∼22種類の遺伝子 型に分類され、それぞれの抗原性は互いに異なるため、過去にノロウイ ルスに感染していても、別の型が侵入するとまた感染してしまう可能性が あります。 また、 ノロウイルスはしばしば遺伝子の組み換えを起こすことが 知られており、 その分類をさらに複雑化しています。 不明 宴会場 ホテル 飲食店 その他 子どもが 集 団 生 活して いる 場所での感染 が多い 保育園 老人ホーム 小学校 計227例 幼稚園 病院 ノ ロ ウ イ ル ス の予 防 ノロウイルスGⅡ.17変異株の登場 これまで、流行の主な遺伝子型はGⅡ.4でしたが、 関東近隣において昨年1月からGⅡ.17が検出され 始め、2月にはGⅡ.17が優位となりました。そして、 検出されたGⅡ.17を解析した結果、既報のGⅡ.17 とは異なる新規遺伝子型である可能性が示唆され ました。 現時点ではこの変異株に対する免疫を持たない集 団が多いこと、 また、2015年秋以降に検出されている ノロウイルスのほとんどがGⅡ.17であることから、今 シーズンの流行拡大が危惧され、厚労省からも注意 を呼びかける案内が発出されています。 ◆予防の基本は石けんを使った手洗い 石けんには、 ノロウイルスを直接失活させる効果はありませんが、手の汚れ を落とすことにより、 ウイルスを手指からはがれやすくする効果があります。 { 注意 1 石けん + すすぎ 15秒 もみ洗い 10秒 } ウイルス残存率 100万分の1に ×2回が効果的 ◆ノロウイルスの消毒 エタノールは効果がないため、市販の塩素系漂白剤を希釈した次亜塩素酸 消毒液(消毒する対象に応じて濃度を調節したもの) を用いて消毒します。 GⅡ.17は、GⅡ.4と比較して現在市中で使 用されているノロウイルス診断検査キットに よる検出感度が低いとの報告があります。 出典 : 国立感染症研究所IASR,感染性胃腸炎の流行に伴うノロ ウイルスの感染予防対策の啓発について (厚労省), ノロウイルスの消毒方法(食品安全委員会), 食品衛生分科会食中毒部会 資料3(平成25年10月30日) 患者の 周囲環境 調理器具は塩素濃度200ppm、 カーテン、衣類、 ドアノブ等 は200∼500ppm、 トイレ、浴槽は300ppm以上の消毒液で 浸すようにペーパータオル等で拭き取る。 患者のふん便・ 破棄するのが望ましいが煮沸消毒も有効。煮沸できない場合 嘔吐物が付着 は、もみ洗い後、塩素消毒(200ppm)。二次感染を防ぐ上で した衣類等 は、 もみ洗いせず消毒液(1,000ppm) で漬け置きが好ましい。 嘔吐物等はペーパータオル等で静かに拭き取り、 ビニール (この際、汚染物が浸る量の次亜塩 嘔吐物・ふん便 袋に密閉して破棄する による汚染場所 素酸消毒液(1,000ppm)を入れることが望ましい)。床は 200ppmの消毒液で拭き取り後、水拭きする。 梅 毒 ならび に 先 天 梅 毒 が 増 加しています! 予防 毒の発症リスクが高まるため、予防には、妊娠早期の 梅毒抗体検査と感染が認められた場合の早期治療、 および妊娠中の梅毒感染の防止を図ることが重要。 2000 1500 治療 10 8 9 993 500 1264 1301 1000 0 ペニシリン系抗菌薬が有効であり、耐性菌は報告さ れていない。 12 ■男 ■先天梅毒 ■女 650 5 177 2011 11 4 692 4 4 183 2012 235 2013 387 2014 6 494 2015 先天梅毒報告数︵人︶ 先天梅毒の 治療 予防と 妊娠16週以降の胎児が感染すると先天梅 図2. 梅毒患者報告数と先天梅毒報告数の年推移 梅毒患者報告数︵人︶ 梅毒の報告数は2010年以降増加傾向にあり、2015年にお いては女性の患者増加が顕著に見られました(2015/10/28 時点で前年同時期の約2倍)。 こうした背景の中、先天梅毒 の報告数も増加傾向にあり (図2)、今後さらなる増加が懸 念されます。 2 0 (IASR Vol.36 p.230: 2015年11月号より作図) ※2015/10/8時点 出典:国立感染症研究所:IASR(先天梅毒の動向,梅毒2008∼2014年), 2015年第44週 IDWR,感染症発生動向調査事業年報 企画編集:一般財団法人 阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp) 発行:一般財団法人 阪大微生物病研究会/田辺三菱製薬株式会社 ▲上記本文中の内容に関するお問い合わせは、お受けしておりません 5BI-432A-
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