ビケンワクチンニュース2016年10・11月号を掲載

10・11
October・November 2016
麻しん
患 者 数 が 増 加 し て い ます!
麻しんの患者報告が2016年33週以降急増しています。2016年
37週(9月21日)時点の麻しん患者数は130例であり、昨年1年間
の麻しん患者数(35例)
をすでに大きく上回っています。大阪では
関西国際空港において集団感染も報告される等、輸入例を発端
に感受性のある集団で感染が拡大していると推察されます。
40
30
患者報告の多い都道府県は
大阪府(52例)
、千葉県(21例)
、
兵庫県(18例)
です。
25
20
15
国外
13%
接種なし
27%
不明
33%
21
17
10
0
国内
81%
麻しん患者の予防接種歴
2016年第1∼37週(n=130)
3
0
1
1
0 0 0 0 0
3
5
7
1
0
9
1 1
0
11
1
13
0 0 0 0 0
15
17
2
0 0 0
19
21
0 0 0
23
25
1 1
27
2
29
3
1 1
31
33
35
37
39
41
43
45
47
49
51
週
出典:IDWR 2016年9月21日時点のデータ
日本は長年の対策により昨年3月にようやく麻しん排除国※として
WHOより認定を受けたばかりです。今回のような流行を繰り返さない
ためにも、
日本全体で感染防御対策に取り組む必要があります。
※麻しん排除達成の認定基準:適切なサーベイランス制度の下、土着株による
麻しんの感染が3年間確認されないこと、又は遺伝子型の解析によりそのこと
が示唆されること。
患者のうち6割がワクチン
接種なしもしくは不明です。
2回接種
14%
23
13
5
13%が国外での感染であり、特
にインドネシアでの感染が多く報
告されています。
37
35
国内または
国外
6%
麻しん推定感染地域
2016年第1∼37週(n=130)
週別麻しん報告数
2016年第1∼37週(n=130)
(人)
1回接種
26%
厚生労働省より 医療機関の皆様へ
◆発熱や発しんを呈する患者が受診した際は予防接種歴の
確認など麻しんの発生を意識した診療を行ってください。
◆麻しんと診断した場合は診断後24時間以内に最寄りの
保健所へ届け出てください。
出典 : 国立感染症研究所 感染症疫学センターIDWR、
平成28年8月24日 事務連絡 麻しんの広域的発生について
(情報提供)
TOPICS
麻しんはなぜ流行するの?
麻しんは飛沫感染や接触感染だけでなく空気感染もする感染力の非
常に強いウイルス性疾患です。感染力の強さは「基本再生産数(R 0)」
で示されますが、インフルエンザと比較しても圧倒的に強いことが分
かります
(右図)
。
また、潜伏期間は約10∼12日ですが、発疹出現の3∼
5日前からすでにウイルスを排出しており、
この間に周囲の人へ感染を
拡大させる恐れがあります。
麻しんの流行を防ぐには社会全体が一定の免疫を獲得しておくことが
重要となります。基本再生産数から導き出される麻しんの集団免疫率
(H)※は90∼95%であり、MRワクチン定期接種率の目標値はこれに基
づき95%と設定されています。 ※集団免疫率(H)=(1−1/R0)×100
MRワクチン定期接種(1期・2期)
を
確実に実施しましょう。
【メーカーからのお願い】
阪大微研会では、毎年小児の定期接種分が十分確保できる量を製
造しておりますが、成人など任意接種分にすべて対応できる供給量
は確保できておりません。現在、早期の増産に向け最優先で取り組
んでおりますが、厚労省からの通知(平成28年9月9日 事務連絡「麻
しんの広域的発生に伴う乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンの
供給に係る対応について」
)
にもありますように、
まずは定期接種を
優先的に実施いただきますよう、
ご協力をお願い致します。
基本再生産数(R0)
1人の感染者が周囲の免疫を持たない人に
感染させる2次感染者の数
【インフルエンザの場合】
R0=2∼3
インフルエンザ
感染者
感染
2次感染者
免疫を持たない集団で2∼3人に感染します。
【麻しんの場合】
R0=16∼21
麻しん
感染者
感染
2次感染者
免疫を持たない集団で16∼21人に感染します。
出典:国立感染症研究所 感染症疫学センター 麻しん Q&A、平成20年度 感染症
危機管理研修会プログラム4 資料、2012年11月5日 保育所における感染
症対策ガイドラインの見直し検討委員会(第2回)議事録
企画編集:一般財団法人 阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp) 発行:一般財団法人 阪大微生物病研究会/田辺三菱製薬株式会社
5BI-456A16Ⅸ128
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