演義問題

2014/5/8
第 4 回 統計力学 1 演義 (スタンダード)
担当 湯川諭、TA 崎山泰樹、吉村高至
演義スタンダードのページ http://bopper.ess.sci.osaka-u.ac.jp/∼yuk/lecture/sm1s2014/
m
気体 壁
dS
1.
vxdt
N 個の同一分子から成る理想気体が体積 V の箱の中に閉じ込められている。図のように、
壁の面積 dS の微小部分に着目し、法線方向に x 軸をとる。この壁の微小部分に対して短
い時間 dt の間に、任意の方向から x 方向に速度 vx を持って衝突する分子を考えると、こ
の分子が体積 vx dtdS の図中領域内に存在した場合、時間 dt の間に面積 dS の壁に衝突す
ることになる。また、衝突の際に壁に分子の運動量は、mvx から −mvx に変化する。
速度 vx , vy , vz から vx + dvx , vy + dvy , vz + dvz の範囲にある単位体積あたりの粒子の数
は、マクスウェルの速度分布 f (vx , vy , vz ) を用いて、(N/V )f (vx , vy , vz )dvx dvy dvz と表す
ことができる。ここで、
x
(
f (vx , vy , vz ) =
mβ
2π
)3/2
[
m(vx2 + vy2 + vz2 )
exp −β
2
]
である。
(a) 単位面積あたりの力積を考えることで、壁が受ける圧力 P を求めよ。
(b) マクスウェルの速度分布における運動エネルギーの期待値 E を計算し、ベルヌーイの関係式 P V = 2E/3 を示せ。
(c) 二種類の分子が存在し熱平衡状態にある場合の圧力はどのようになるか。また、二種類の分子が熱平衡状態にな
く、それぞれで温度が異なるときはどうなるか。
2. 容器中の気体分子の位置の分布について考える。分子は無限に小さく、それぞれ独立に容器の中の各場所に存在し得
るとする。容器の全体積 V を体積 V1 , V2 の部屋に分割し、N = 4 個の区別できる粒子をそれぞれの部屋に N1 個およ
び N2 個ずつ分配する。
(a) 4 個の粒子を 2 個ずつそれぞれの部屋に分配する場合の数を求めよ。
(b) 分子の位置は連続的に変化できるので、分子を一定体積に置く場合の数は無限大となる。今、部屋を微小な体積
a で分けて、その微小体積ごとにしか分子が入らないと仮定して、体積 V1 の 1 つの部屋に 2 個粒子が入っている
場合の部屋の中での配置の仕方の場合の数を求めよ。ただし V ≫ a とする。
(c) 上問の結果より、4 個の粒子を 2 個ずつそれぞれの部屋に分配し、且つそれぞれの部屋のある位置に置く場合の
数を求めよ。
(d) N = 4 個の分子の可能な分布に対して、分配方法の数 W (N1 , N2 ) および確率 w(N1 , N2 ) を求めよ。
3. 全員レポート: 上問を一般化する。容器の全体積 V を n 個の部屋に分割し、それぞれの体積を V1 , V2 , · · · , Vn と
する。全部で N 個の粒子を体積 V1 , V2 , · · · , Vn の部屋にそれぞれ N1 , N2 , · · · , Nn 個ずつ入れる分配方法の数
W (N1 , N2 , · · · , Nn ) は、
N!
W (N1 , N2 , · · · , Nn ) =
V N1 V N2 · · · VnNn
N1 !N2 ! · · · Nn ! 1 2
となる。(前問の a を 1 に取っている。場合の数は a の取り方に依存するが、確率としては依存しないことに注意。)
Nj ≫ 1 の場合、スターリングの公式を用いて、
ln W (N1 , N2 , · · · , Nn ) ∼ N ln N +
n
∑
j=1
Nj ln
Vj
Nj
と書けることを示せ。
Date : 2014 − 05 − 0809 : 26 : 10 + 0900(T hu, 08M ay2014) Rev : 11344