乳癌について - 栃木県立がんセンター

乳癌について
女性の立場でかたる乳がんのお話し
栃木県立がんセンター 外科 原尾美智子
がんに関する数字
• 2006年の1年間で、栃木県民でがんになった人数
・・・9696人(男:5741人、女:3955人)
• 1年間に日本人女性の乳がんになる人数
・・・約5万人(2005年度)
• 女性のがんの第一位・・・乳がん
参考資料:栃木県がん対策推進計画(1期計画)(P.4)
部位別のがん罹患率
女性のがんの内訳(2006年)
1:乳房(16%)
2:胃(14%)
3:結腸(12%)
罹患率(りかんりつ):
一定期間の間にどれだけ新たな
症例が見つかったか
時代別 がんにかかる人数の割合
年齢別 がんにかかる人数の割合
万人当たり罹患率
10
大腸
肺
年齢と乳がんの罹患率
特に40歳代後半~
60歳代前半で罹患
率は大きく増加して
いる
2005年
1980年
国立がん研究センターがん対策情報センター
年齢と乳がんの死亡率
2009年
乳癌は35歳以上
の死亡率が増加
しており、特に50
歳~60歳代前半
の増加が目立つ
1985年
1965年
国立がん研究センターがん対策情報センター
乳がん検診の指針 ( 2004.4 )
・対象年齢 40歳以上
・実施回数 2年に1回
・検診内容
問診・視触診・マンモグラフィ
40歳以上50歳未満----2方向撮影
50歳以上----------------1~2方向撮影
乳がんの自然史とマンモグラフィー検診の救命効果
致死(40回倍化)
1kg≒ 1兆個
がん細胞数
臨床期 (30回倍化)
1g ≒ 10億個
全身疾患
局所疾患
前臨床期
0.1-0.5g≒100万-1
億個
MMG検診救命効果
(20-25%)
乳がんの倍化時間: 90日
5 がん発生後年数 10
マンモグラフィ検査とは?
乳房を薄く圧迫して撮影する乳房
専用のX線写真です
できる限り薄くした方が良好な画
像が得られます
MLOとCCの2方向の撮影方法が
あります
超音波(エコー)検査とは?
胸にゼリーを塗り、探触子で乳房を見て
いきます
腫瘍の大きさや広がり、血流や硬さなど
を調べます
乳がんの初発症状は
疼痛 2%
皮膚陥凹、発赤など 2.5%
腋窩リンパ節腫脹 1%
他臓器転移症状など0.5%
乳頭分泌など 5%
しこり 89%
栃木県立がんセンター 1995-2003 868例
乳がんの原因
生活環境
家族因子
社会環境
内分泌環境
家族性乳がんとは?
• 全乳がんの5~10%
• BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子に変異
• 70歳までに乳がん発症リスクは
– BRCA1遺伝子変異→56~87%
– BRCA2遺伝子変異→37~84%
第一度近親者に3人以上の乳がん患者
第一度近親者に2人以上の乳がん患者
• 40歳未満 もしくは
• 同時性または異時性両側乳癌
もしくは
• 同時性あるいは異時性多臓器重複癌
生活習慣による乳がん予防効果
バランスの良い食事
食べ過ぎない
太りすぎない
動物性脂肪を少なく
アルコールは控えめに
ストレスを
ためない
禁煙
適度な運動
世界との比較
万人当たり死亡率
10
各先進諸国の乳
がん死亡率が減
少している中日本
は増加の一途を
たどっている
マンモグラフィ検診の普及---- 20%↓
薬物療法の進歩と普及 ----- 20%↓
診断の流れ
問診、視触診
画像診断(マンモグラフィ、乳房超音
波)
細胞診、針生検、マンモトーム生検、外科的生検
診断
精査
画像診断(CT、MRI)
Stage(病期)別の生存率
95%
年生存率
10
89%
79%
59%
52%
25%
(%)
臨床病期
早期
進行
マンモグラフィ検診の有用性
・乳癌死亡率減少効果 ------- 20%
・低侵襲治療によるQOL向上
乳房温存手術の増加 --- 60%→80%
腋窩リンパ節郭清省略 --- 50%→85%
化学療法の使用率減少 -- 80%→25%
自己触診(セルフチェック)
・月に一回(月経終了後から排卵日ごろまで)
・鏡で乳房に変化がないかみる
*乳房・乳頭の左右差
*皮膚の発赤
*えくぼ症状
・しこりがないか指の腹で触る
・乳頭からの異常分泌がないかつまんでみる
乳癌検診の利点・欠点
利点
・早期発見、早期治療による生存率向上
・低侵襲治療によるQOLの維持
1.乳房温存手術の増加
2.腋窩リンパ節非郭清の増加
3.化学療法の使用の減少
欠点
・不必要な精密検査
・精神的ストレス
・過剰な治療
乳がんの臨床病期(ステージ)
Stage 0
非浸潤癌
乳管内または小葉内にとどまる
StageⅠ
StageⅢ
( A, B, C )
腫瘍径 :2cm以下
リンパ節転移なし
腫瘍径 :5cm~, 皮膚、胸壁浸潤
リンパ節転移 著明
StageⅡ
( A, B )
腫瘍径 :2 - 5cm
リンパ節転移 あり
StageⅣ
他の臓器に転移がある
乳がんの治療
初期治療
手術
放射線
薬剤
局所療法
抗がん剤
全身療法
ホルモン剤
抗体療法(ハーセプチン)
手術
放射線照射
転移・再発後治療
局所療法
薬剤
抗がん剤
ホルモン剤
抗体療法
全身療法
日本での乳がん手術の変遷
%
60% 乳房温存
38%
胸筋温存乳切
1980
1985
1990
1995
胸筋合併乳切
拡大乳切
2000 年
乳房温存療法の適応
・乳房部分切除術+放射線治療
・原則は3cm以下の単発性乳がん
・乳房切除術と同等の生存成績
・60%の患者さんが乳房温存療法
センチネル(見張り)リンパ節生検
がん細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節
センチネルリンパ節に
転移(-)
ほかのリンパ節転移の
可能性は低い
後遺症を軽減し、生活
の質を向上することが
できる
LevelⅢリンパ節
LevelⅡリンパ節
センチネルリンパ節
LevelⅠリンパ節
腫瘍
再建の時期
ステージによって変わります
1期再建:胸の喪失感の軽減
2期再建:体調が安定している状態であればいつでも可能
術式による違い
メリット
デメリット
人工物
手術時間が短い
自家組織
自然な形
非対称性
バックの破損
被膜硬縮
痛み、炎症、感染
手術時間が長い
皮弁部壊死
薬物療法
どの薬を使うかは乳癌の個性による
薬物療法の個別化
エストロゲン受容体
HER2タンパク
エストロゲン受容体
・女性ホルモンであるエストロゲンと結合
・乳がん全体の75%程度が陽性
・陽性細胞はエストロゲンの刺激をうけ増える
→ホルモン療法の適応となる
エストロゲン
エストロゲン受容体陽性
がん細胞
エストロゲン受容体陰性
がん細胞
HER2タンパク
HER2タンパクが発現しているとは乳がんの増殖能が高い
乳がん全体の約20%で陽性
抗HER2療法(ハーセプチン、タイケルブ)が効く
IHC法:スコア0、1、2、3
FISH法:遺伝子コピーが2.2倍以上
HER2陽性乳がん細胞
HER2タンパク
いつ薬物療法を行うのか?
術前薬物療法
腫瘍が大きい
温存を希望
悪性度が高い
温存乳房
胸壁
鎖骨上
放射線治療
診断
手術
術後薬物療法
局所コントロール
予後の予測
再発を予防
術後抗がん剤はどのように選ぶか?
• がんの性格からより効果的である薬剤を選ぶ
• 再発の可能性
• 患者さんの希望
ホルモン療法のまとめ
本日の内容のまとめ
~予防~
バランスの良い食事、運動を行うこと
~診断~
定期的な検診受診、自己触診を行うこと
~治療~
決して焦らず、受け身になりすぎず、主治医と信頼関
係を築くことで納得のいく治療を受けてください