岩本 一亜 - 仙台医療センター 臨床研究部

直腸癌局所再発規定因子に関する検討
仙台医療センター 外科
岩本一亜
平成19年度 臨床研究報告 H20.3.27
対 象
„
„
1998.1.~2006.12.に施行したRa・Rb直腸
進行癌根治手術323例の臨床病理学的検
討をおこなった。
下部直腸癌根治手術128例について先進
部組織形態の再検討を行い、局所再発寄
与因子を解析した。
Buddingの評価基準
大腸癌研究会より引用
低分化領域の分類
Grade of Poor Differentiation
1. The largest poor differentiation area occupies a field
with x40 objective lens?
NO
YES
A field with
x40
objective lens
Grade C
2. Number of “poorly differentiated cluster” in a field
where the “cluster” is observed to a high degree?
10+
防衛医大 上野先生より借用
0-9
A field with x4
objective lens
Grade B
Grade A
神経浸潤の評価
神経細胞
Bud と同様にGrade 1~3に分類し判定
直腸癌治療成績 (1989-2006)
1
累積生存率
.8
stage I (49)
.6
stage II (111)
.4
stage IIIa (104)
.2
stage IIIb (59)
0
0
1
2
3
4
5
6
7
時間(年)
8
9
10
Kaplan Meier 法 (Logrank p=.0001)
他病死を含む5年生存率
stage I 77.4 % stage II 64.3 % stage IIIa 49.6 % stage IIIb 27.1 %
TMEおよび側方郭清と生存率
直腸癌治療成績
5年生存率 TME(-) 50.8 % v.s. TME(+) 70.2 % (p=0.015)
局所再発率 18.5%
.8
.6
TME +
(局所再発率 16.3 %)
TME -
(局所再発率 20.0 %)
.4
.2
0
時間(年)
0 1
2
3
4
5
6
7
下部直腸癌治療成績
8
9
10
5年生存率
側方 (-) 41.7 % v.s. 側方 (+) 60.1% (p=0.0192)
1
累積生存率
累積生存率
1
局所再発率 22.6%
.8
.6
側方郭清 +
(局所再発率 14.6 %)
側方郭清 -
(局所再発率 27.2 %)
.4
.2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
時間(年)
局所再発(-)
Budding
1
2
3
先進部低分化領域
A
B
C
神経浸潤
1
2
3
局所再発(+)
52 (64.2%)
19 (88.5%)
10 (3.8%)
10 (38.5%)
6 (23.1%)
10(38.5%)
59 (72.8%)
15 (18.5%)
7(8.6%)
6 (23.1%)
12 (46.2%)
8(30.8%)
73 (90.1%)
6 (7.4%)
2 (2.5%)
12 (46.2%)
8 (30.8%)
6 (23.1%)
局所再発(-)
優勢な組織型
well
mod
por
muc
16 (16.2%)
73 (73.7%)
4 (4.0%)
6 (6.1%)
局所再発(+)
1 (3.6%)
25 (89.3%)
1 (3.6%)
1 (3.6%)
n
n0
n1
n2
n3
Depth
sm/mp
A
Ai
Stage
I / ll
llla
lllb
61 (61.6%)
20(20.2%)
15 (15.2%)
3 (3.0%)
23 (23.2%)
62 (62.6%)
14 (14.1%)
60 (60.6%)
25 (25.3%)
14 (14.1%)
12 (41.4%)
7 (24.1%)
4 (13.8%)
6 (20.7%)
2 (6.9%)
22 (75.9%)
5 (17.2%)
11 (37.9%)
7 (24.1%)
11 (37.9%)
局所再発と先進部病理形態
i) Budding
累積生存率
1
Kaplan-Meier
grade=1
(5生:81.8%)
.8
.6
.4
grade=2,3
(57.2%) P=.0447
.2
iiI) 神経浸潤
0 1
2 3
4
5 6 7 8
時間(年)
9
累積生存率
0
10
ii) 先進部低分化成分
累積生存率
1
grade=A
(80.0%)
.8
1
grade=1
(75.7%)
.8
.6
.4
.2
grade=2,3
(55.6%) P=.0447
0
.6
0 1 2 3
4
5
6
7
時間(年)
.4
grade=B,C
(56.8%)
.2
0
0 1
2 3
4
5 6 7 8
時間(年)
P=.0386
9
10
8
9 10
小 活 1
„
„
直腸癌に対するTMEおよび側方郭清によ
り予後および局所再発は改善した。
局所再発に関して先進部組織形態が寄与
因子となっており、ことに低分化成分は多
変量解析でも有意差がみられた。
括約筋温存手術の占める割合
(下部直腸癌150例)
1989-93
0%
1994-98
0%
直腸切断術
括約筋温存術
(低位前方切除)
1999-2003
18 %
肛門距離 4 cm 未満
(37例)
14 %
18 %
60 %
肛門距離 4-5 cm
(62例)
33 %
肛門距離 5cm 以上
(51例)
75 %
100 %
下部直腸癌・肛門管癌
方法・対象
検討1: 1990.1~2006.12の間に根治手術を施行した下部直腸癌
149例および肛門管癌10例を対象とし、前期: 1990.1.~2000.12.
と後期: 2001.1.~2006.12.にわけ臨床病理学的特徴を検討した。
検討2: 内括約筋温存術式を導入した2005年以降の37例に関
しては、術後のSoilingならびに排便回数について各術式に
よる比較検討をおこなった。
検討1: 前期96症例および後期 63症例の比較検討
術 式
前期(1990-2000)
後期(2001-2006)
APR
LAR
SLAR
ISR
APR
LAR
SLAR
ISR
肛門からの距離と術式
28
APR
後期 32
43
前期
LAR
50
SLAR
38
ISR
30
0
20
40
60
(cm)
検討1: 前期96症例および後期 63症例の比較検討
病 期
stage I
27.7%:27.3%
40
前期
後期
20
0
stage IIIb
stage II
13.2%:34.3%
27.7%:27.3%
stage IIIa
38.5%:22.7%
術式と局所再発
(%)
35
30.8
30
25
20
15
17.7
17.2
前期局所再発
後期局所再発
12.7
10
SLARおよびISRの術後観察期間は最長で
2年6ヶ月(中央値1年7ヶ月)
5
0
LAR局所再発5例中3例が吻合部再発で再手術
全体
LAR
SLAR
ISR
連合縦走筋の剥離の意義
連合縦走筋
① 肛門管口側の腫瘍ではDST可能
② ISRでの会陰操作で内括約筋切除が簡便で 部分切除も容易
図は消化器外科 2007-8 直腸癌の治療より引用
検討2: 各術式と排便障害の検討
術式
Soiling
術後半年
術後1年
術後2年
ISR
なし
3回
1-2回
ー
ISR
なし
ストーマ
3回
ー
ISR
あり
10回
7-3回
ー
ISR
改善
頻回
8回
3回
ISR
あり
頻回、便失禁
便失禁(軟便時)
便失禁(ごく希に)
SLAR
なし
便秘
正常
正常
SLAR
なし
2-3回
正常
正常
SLAR
なし
4-5回
正常
正常
SLAR
なし
4-5回
3-4回
正常
SLAR
なし
10-3回
3回
正常
SLAR
改善
10-12回
3回
正常
SLAR
改善
10回以上
5-6回
3回
LAR 21 例の検討では、1年で5例(24%)、2年で1例(4.8%)が排便4回/日以上
小 活 2
1 ISRおよび連合縦走筋剥離をおこなったSLARは 根
治性を損なわない優れた術式と考えられた。
2 ISRでは排便障害の頻度が高く、腫瘍の位置による
慎重な術式の選択が肝要である。
今後の直腸癌治療
局所再発のリスク因子: 先進部組織形態、腫瘍マーカー、遠隔転移
手術方法の選択: 括約筋温存手術、自律神経温存側方郭清
腹腔鏡補助下手術、多臓器合併切除
補助化学放射線療法の選択: 経口抗癌剤(TS-1, ゼローダなど)
静注抗癌剤(オキサリプラチン、アバスチン)
術前後放射線治療
局所再発症例の早期発見: 尿路系の症状(水腎症、排尿障害)
新たなマーカー 血清p53