大阪湾における青潮の発生

大阪湾における青潮の発生
○
神野
夏樹・藤原
隆一(東洋建設(株)鳴尾研究所)
・矢持
進(大阪市立大学)
キーワード:青潮・大阪湾・観測・水質汚濁・水循環
著者連絡先:[email protected]
【目的】最近,大阪湾奥部では成層化が顕著となる夏季に
び 3.5m 岸壁から吊された小型メモリ水温計(アレック電
青潮が発生するようになった(入江ら,2003;西村ら,
子製)を用い 10 分間隔で測定した.青潮は貧酸素化した
2004;藤原ら,2005).本研究は,2004 年に発生した比
低温の底層水が湧昇する現象であるが,青潮の発生時に,
較的規模の大きい青潮が発生したときに実施した調査結
海底上 3.5m の水温が急低下し,海底上 0.5m のそれとほ
果および近年における発生状況を示すことで,大阪湾が東
ぼ同じになる現象が捉えられている.また,別途毎日測定
京湾や三河湾と同じく青潮の定常発生海域となったこと
している水温,塩分および DO の鉛直分布(0.5m 間隔)
を明らかにする.
も,青潮発生時には一様になることが確認されている.
【2004 年の青潮】2004 年には,7/30-31(1回目)およ
28
海底上3.5m
び 8/28-29(2回目)に,台風接近に伴う陸から海に向か
水温(℃)
う強風に伴い青潮が発生した.これらの詳細については,
先述の藤原らが報告しているので,ここでは概要を示す.
1回目の発生時(7/30-7/31)には,普段は海底付近に
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26
海底上0.5m
生息しているマアナゴやマゴチなどを含む魚介類が海面
青潮発生
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8/23 8/24 8/25 8/26 8/27 8/28 8/29 8/30 8/31
を遊泳するとともに,時間の経過とともに斃死する小魚
9/1
2004
(種類等は不明)が見られた.当日実施した目視観察およ
Fig.2 青潮発生時の水温の時系列
び後日実施した湾内の聞き取り調査では,西宮防波堤の沖
【青潮の発生回数】入江らおよび西村らの報告および目視
側,神戸港,大阪港および泉南方面での青潮発生は確認さ
および聞き取り調査による青潮の発生回数を整理すると,
れず,Fig.1 に示す破線で囲んだ西宮防波堤より岸側の沿
規模の大小は無視すると,2002 年(3 回),2003 年(1
岸域が青潮の発生範囲であったと推定された.
回),2004 年(2 回),2005 年(5 回)および 2006 年(3
夙
川
回)となり,5 年連続して青潮の発生が確認された.
【まとめ】大阪湾奥部では 2002 年以降毎年青潮が発生し
芦屋川
西宮浜
南芦屋浜
甲子園
浜
青潮発生範囲
ており,東京湾や三河湾とならび,青潮の発生が常態化す
鳴尾川
る海域となっていることが判明した.今後,青潮の発生に
中島川
鳴尾浜
よる漁業への影響が懸念される.
武庫川
西宮防波堤
淀川
参考文献
1)
正蓮寺川
5km
Fig.1. 青潮の発生範囲
力の影響,土木学会第 58 回年講,Ⅱ-312,2003
2)
2 回目の発生時(8/28-8/29)における水温の時系列を示
したものが Fig.2 である.観測場所は,鳴尾浜(Fig.1 参
照)にある自社岸壁(-5.5m)であり,海底上 0.5m およ
入江ら:湾奥部停滞性水域の貧酸素水塊の挙動に及ぼす風応
西村ら:尼崎西宮芦屋港における貧酸素水塊の湧昇に関する
連続調査,土木学会第 59 回年講,2-161,2004.
3)
藤原ら:大阪湾で発生した青潮の現地調査,海洋開発論文集,
第 21 巻,pp.361-366,2005.