小児股関節フォロー撮影における 被曝線量低減の試み 23

23 小児股関節フォロー撮影における
被曝線量低減の試み
大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部
○村井雅美・播摩優子・小川隆由・田中克尚・岸本健治・村上進 【目的】
現在,小児股関節フォロー撮影では,通常の撮影と同線量で撮影しているが,定期的に何度も撮影を
行うこと,ウォーレンバーグ線などの計測のみを目的としていることから,今回,フォロー撮影において
必要最低限の画質を維持し,どの程度線量を低減できるか検討した.
【方法】
1.模擬ファントムの作成
小児股関節を想定し,太さの違う鶏の骨を水中に入れ,アクリルと組み合わせ
被写体厚を8cmと11cmに変化させたファントムを作成した.
また,コントラストを測定するため1cm厚のアクリルを入れた.(Fig.1)
(Fig.1)
2.線量を変化させてファントムを撮影
被写体厚8cm,11cm ,各々グリッド無しと,3:1グリッド使用の4系列を撮影し,Fixモードで処理した.管電
圧はグリッド無し56kV,あり66kV,S値400の線量を1とし, 1/2,1/3,1/4,1/5となるようmAs値を変化させた.
3.視覚評価
系列ごとに線量を変えた画像を並べ,小児整形外科専門医2名が計測できる限界値を視覚評価した.
4.物理評価
ROIは9mm径とし,DICOMデータのデジタル値から,1cm厚のアクリル円柱でコントラストを, ノイズの指標としてバックグラウンドの標準偏差(SD)を測定した.また,NDD法により表面線量を算出した.
グリッド無し
3:1グリッド
【結果】
視覚評価 S値(表面線量) (Table.1)
ファントム厚
8 cm
11 cm
グリッド
無し
S値1200
(0.027mGy)
S値800
(0.072mGy)
3:1
グリッド
S値1600
(0.028mGy)
S値1600
(0.05mGy)
(11cm)
0.072mGy
0.1mGy
0.036mGy
0.05mGy
S値 800 (1/2) S値 1600
(1/4)
(視覚評価)
小児整形外科専門医が評価したファントム画像での限界値をTa
ble.1に示す.また, Fig.2 は11cmにおけるグリッドの有無による
(Fig.2)
比較で,限界値と評価された画像と同じS値の画像を示す.限界 表面線量
(mGy) 表面線量-S値 (Fig.3)
値とされた画像ではグリッド使用の方が表面線量が少なくなる. 0.5
11cmG(物理評価)
0.4
11cmG+
S値とコントラストの関係から,線量に関わらずコントラストは一定
8cmGであるとわかり、S値とSDの関係から,線量を低減するとノイズは 0.3
8cmG+
v
増加するが,グリッドを使用した方がコントラストが高くなるので, 0.2
限界値と評価された画像のSDは高くなるとわかった.また,表面 0.1
線量とS値の関係から,今回は非常に少ない線量である為,S値
0
1200以上にしても線量低減効果は少ないとわかった.(Fig.3)
200 400 600 800 1000 1200 1600 2000
【考察】
S値
視覚評価により3:1グリッド使用時でS値1600(1/4)まで低減できるとされたが, S値1200以上で
被曝線量の低減効果は少ないこと,微妙な線量設定,個人の体格差によりS値が高くなる恐れがあるため,
S値1200を目標とするのが適当と考える.また,体厚が8cmではグリッドを使用しても,しなくてもよいと
思われるが,8cmを超えると3:1グリッドを使用した方がよいと考える.
注)当院の撮影はFixモードを主に使用しており,今回の発表ではS値を線量の指標として用いた.
Autoモードを使用しての撮影においては今回の我々の結果は適応されない.
【結論】
小児股関節フォロー撮影では,当院で通常時のS値400の撮影に比べ,被曝線量を3分の1まで
低減可能である.