研究結果報告書 平成26年1月10日 公共財団法人 長野県学校科学教育奨励基金 理事長 小根山 克雄 様 学校名 長野県木曽青峰高等学校 学校長名 1 外山 勇一 印 研究テーマ 木曽町開田高原と福島の標高差とカルシウムの有無によるトマトの生育比較 2 研究グループ名 木曽青峰高等学校 飯田祥史 3 加藤明良 森林環境科3年(5名) 上條哲矢 高木二千翔 古畑夏基 指導者 教諭 清水 秀文 4 研究の動機及び目標 本校の所在する木曽町福島は標高808mの位置にあり、同じ町内の開田高原は標高1180mに黒ボク 土の農耕地が広がっている。直線距離では15kmの中に380mの標高差を持つがこのことによる気候の 違いを探り、また南米高地の原産であるトマトの中で、簡単で大量に収穫しやすく品種改良されたイタリア ントマトを栽培して、トマトの生育にどのような影響があるのか調べる。 土壌のカルシウムが不足することによりトマトの実に起こる尻腐れを黒ボク土にカルシウムを混ぜることに よって抑えることができる事例を知り、その効果を調べる。 ① 開田・福島の畑の温湿度を測定し、環境の違いを調べる。 ② 環境の違いがトマトの生育にどのように影響するか調べる。 ③ カルシウムの施肥量を変えて、欠乏症の発現に環境の違いが 影響するか調べる。 5、研究内容の概要 (1)研究期間 写真1 尻腐れ病 ・6月21日~9月20日 (2)研究の方法 ①木曽町開田高原髭沢標高1180m木曽町福島万郡標高797mの畑でトマトを栽培する。 1 ② 温湿度の測定を行う。 データーロガーを地上15㎝に設置し、素焼き鉢で蓋をする。 1時から24時までの毎正時24回の観測値の平均から、日 平均気温湿度をもとめた。 ③カルシウム欠乏症の発現の有無を調べる。 (3)研究計画 ①苗数 トマト ・万郡6本 ・開田6本 写真2 データーロガーの配置 ②区画・面積 ・縦 3m ・横 4.5m ・1区画は 2.7 ㎡ ・50cm間隔で植え付ける。1 鉢の面積は 0.09 ㎡。 ・開田(Ca+)と(Ca-) 万郡 写真3 (Ca+)と(Ca-) 苗の定植 写真4 支柱の設置 ③肥料計画 ・標準 1㎡あたり ・堆肥 2kg ・対照 カルシウム(卵殻)あり ・卵カルシウム 0.2kg ・配合肥料NPK (10:10:10) 120g 標準区に対し、卵カルシウムを除いた施肥 ③ 品種 パスタ(金子種苗) パスタ、ピザ、カレーなど調理用トマト 平均 1 果重 100g前後の縦長形の調理用トマトであり、果色は濃赤色、光沢があり、果肉が硬く 店持ちに優れます。また、草勢はやや強く、めがね等の生理障害の発生が極めて少ない品種で 2 ある。 6、研究のまとめと今後の課題 (1)土壌環境 (新型土壌養分検定器 Dr.ソイルで測定) 9月6日各実験区より表面土壌を採取して調査 表‐1 Ca+ カルシウム(㎎/100gsoil) 開田 Ca- 400~600 リン酸(㎎/100gsoil) 100 100 50 10 10 カリウム(mg/100g soil) 150 150 pH 6.5 5 Ca+ Ca- カルシウム(㎎/100gsoil) 200 50 リン酸(㎎/soil) 35 25 マグネシウム(㎎/100g soil) 表‐2 万郡 マグネシウム(㎎/soil) 1 カリウム(mg/ 100gsoil) 35 pH 1 35 6 5 開田の黒ボク土では、万郡よりカルシウム値が高いことがわかった。 (2)調査結果 ①草丈 6 株の平均 300 CM 200 100 0 開田 万郡 図‐1 草丈 カルシウム+区 300 CM 200 100 0 3 図‐2 草丈 カルシウム-区 ②合計着果数 200 個 150 100 50 0 開田 万郡 図‐3 合計着果数 カルシウム+区 個 ・カルシウム+ 開田637個 万郡950個 160 140 120 100 80 60 40 20 0 開田 万郡 図‐4 合計着果数 カルシウム-区 ・カルシウム- 開田588個 万郡845個 ③一日の平均気温・湿度 4 図‐5 1日の平均気温の変化 35 30 25 ℃ 20 15 開田 10 万郡 5 0 図‐5 1日の平均気温の変化 1日の平均湿度の変化 120 100 80 ℃ 60 開田 40 20 万郡 0 図‐6 1日の平均湿度の変化 表‐6 開田と万郡の温度比較 最高温度(℃) 6月 7月 8月 9月 (3) 最低温度(℃) 温度差(℃) 開田 33.09 6.59 26.5 万郡 36.09 11.21 24.88 開田 41.94 12.24 29.7 万郡 42.22 16.41 25.81 開田 44.45 10.39 34.06 万郡 43.74 13.38 30.36 開田 38.58 3.75 34.83 万郡 38.68 9.29 29.39 考察 5 図 1 図2を見ると、カルシウムの有無では草丈の差はないが開田より万郡ほうが草丈が大きい。 図3図4 カルシウム+のほうがどちらも着果数が多く特に開田はその傾向が多く見られた。場所の比較で は開田より万郡の着果数が多いく、図 5 のように開田より万郡の平均気温が高いことが関係していると思わ れる。 このことから、トマトの収穫量にカルシウムが影響することが分かったが、また気温の与える影響も大きい ことが分かった。 (4)課題 尻腐れの発病数を調べたが時間の都合上データをまとめきれなかった。また着果数の違いは土壌による ものか気候によるものか条件設定をして調べる必要がある。 7 その他 使用器具 ・温湿度計 MicroLite2RH(佐藤商事) ・新型土壌養分検定器 参考資料 島根県農業技術センター環境部土壌環境グループ 「ボタンの促成栽培用苗木生産における石灰質肥料の効果」 6 Dr.ソイル(富士平工業社製)
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