平成27年産 夏秋なす及び無加温なすの土づくりと施肥の注意点 平 成 2 6 年 1 2 月 芳 賀 農 業 振 興 事 務 所 1.土壌診断結果(処方箋)の読み方 ①pH・・・土が酸性か、中性か、アルカリ性を示す表し方 ★酸性側やアルカリ性側に極端に傾くと、特に、微量要素の吸収阻害(土壌中に十分あっても欠乏症 が発生)や過剰症が発生しやすくなる。 ◆土壌のpH(H20)と土壌反応の区分 なすの適正範囲 pH(H20) 反応の区分 8.0 以上 7.6 ~ 7.9 7.3 ~ 7.5 6.6 ~ 7.2 6.0 ~ 6.5 5.5 ~ 5.9 5.0 ~ 5.4 4.5 ~ 4.9 4.4 以下 強アルカリ性 弱アルカリ性 微アルカリ性 中 性 微 酸 性 弱 酸 性 明 酸 性 強 酸 性 極 強 酸 性 6.0 ~ 6.5 ★対策 ★対策 ●基準値より低い場合 →→→ 石灰資材を施用する。 ● 〃 高い場合 →→→石灰、苦土が基準値より低くて も基肥に石灰資材は施用しない。 ◆苦土石灰による酸性矯正の目安量 (農作物施肥基準 栃木県 平成 18 年 1 月より抜粋) (㎏/10 a 深さ 15 ㎝) 土 改良pH 壌 区 分 現在pH 5.0 5.5 6.0 6.5 黒 ボ ク 土 4.5 5.0 5.5 6.0 100 ~ 120 200 ~ 240 100 ~ 120 300 ~ 360 200 ~ 240 100 ~ 120 400 ~ 480 300 ~ 360 200 ~ 240 100 ~ 120 灰 色 低 地 土 4.5 5.0 5.5 6.0 80 ~ 100 160 ~ 200 80 ~ 100 240 ~ 300 160 ~ 200 80 ~ 100 320 ~ 400 240 ~ 300 160 ~ 200 80 ~ 100 (注)深さに応じて目安量も加減する。 ②EC・・・土壌中に含まれる塩類(肥料成分)の指標 ★残存窒素の目安となるが、他の塩類が残りECが高くなる(*家畜ふん堆肥や汚泥堆肥などを連続 して施用すると、石灰や加里が集積してECだけでなく、pHも高くなることがある。 )場合がある。 ※湛水処理をするとEC値は低下するため、湛水前の測定値を基準にする場合は注意する。 ◆施設栽培におけるECの基準値 (単位:ms/㎝) 作物名 土壌の種類 適正値 限界値 黒ボク土及び多湿黒ボク土 0.3 ~ 0.8 1.5 灰色低地土及び褐色低地土 0.2 ~ 0.5 1.0 なす ③りん酸吸収係数・・・土壌がりん酸を吸収(吸着)する力 ★土壌の持つ性質で黒ぼく土は高い。 ④有効態(可給態)りん酸・・・作物に利用されやすい形のりん酸 なすの適正範囲 20~60mg/100g 対策 対策 多いとき 少ないとき →→→ →→→ 測定値が 100 mg以上の場合はりん酸資材を減らす。 不足分をりん酸資材で補う。 ★りん酸肥料を施用する場合の留意事項 pHが基準値以下の場合 → 熔りんを利用することが適当。 pHが基準値より高い場合 → 過りん酸石灰、重焼りんなどが適当。 ⑤CEC(塩基置換容量)・・・土壌の保肥力(肥料を蓄えられる力)。数値が大きいほど保肥力 がある。 ★塩基置換容量の大小は土壌の種類や腐植含量等によって左右されるが、一般的に粘土質土壌や腐植 質土壌が大きく、砂質土壌は小さい。火山灰土壌は、塩基置換容量は大きいが、塩基の吸着力が弱 い。 ⑥交換性塩基(交換性石灰、交換性苦土、交換性加里)・・・土壌中に含まれる石灰、苦土、 加里のうち作物に吸収されやすい形のもの ⑦塩基飽和度・・・CEC(塩基置換容量)の何%が塩基(石灰、苦土、加里)で満たされている かを示したもの〔石灰飽和度 → CEC(塩基置換容量)に対して、どれだけ石灰で満たされて いるかを示したもの〕 ★飽和度の大きいものほど土壌pHが高く、小さいものほどpHが低く酸性反応を示す。 ⑧石灰苦土比、苦土加里比・・・土壌中に含まれる交換性塩基のうち石灰と苦土、苦 土と加里の相互の存在量の比率(バランス)を示したもの ★バランスがくずれると、土壌中に養分があっても欠乏症などを起こすことがある。 ⑨その他 ◆容積重・・・土壌100mℓの乾燥重量のこと。 ◆仮比重・・・単位容積当たりの土壌の固相(体)重量のこと。 ★土壌は固体(固相)、水(液相)、空気(気相)の3つの部分で構成されている。 《参考:成分の拮抗作用と相乗作用》 ◆ある成分の存在によって、他の成分の根からの吸収、生理作用、害作用が抑制される現象を拮抗作用、 逆に、それらが促進される現象を相乗作用という。 【成分間の拮抗性】 【成分間の拮抗性】 、、、、、、、、 、、、、、、、、 抑制をうける成分 右の成分に対して、拮抗的に働く成分 アンモニア モリブデン、カリウム、ほう素 硝酸 鉄 リン 亜鉛、銅、カリウム、鉄 カリウム カルシウム、マグネシウム、ほう素 カルシウム マグネシウム、カリウム、ほう素、マンガン、鉄、亜鉛 マグネシウム カルシウム、カリウム けい素 カルシウム 塩素 リン 亜鉛 鉄 鉄 アンモニウム、モリブデン、マンガン、リン マンガン モリブデン、鉄 銅 鉄 【成分間の相乗性】 【成分間の相乗性】 、、、、、、、、 、、、、、、、、 右の成分に対して、相乗的に働く成分 促進をうける成分 窒素 マグネシウム リン モリブデン、マグネシウム カリウム ほう素、鉄、マンガン カルシウム カリウム、 (カルシウムが低濃度の場合) マグネシウム カルシウム、リン、けい素、 (マグネシウムが低濃度の場合) けい素 マグネシウム 2.土づくり 堆肥は、糞尿臭(悪臭)がしない完熟堆肥を使用する。また、家畜糞堆肥は、種類によって窒素含 量が違うため注意する。 (窒素が多い) 鶏ふん > 豚ぷん > 牛ふん (窒素が少ない) 〈堆肥投入量の目安(㎏/10a)〉 牛ふん堆肥 豚ぷん堆肥 鶏ふん堆肥 ◆堆肥の特性(農作物施肥基準 施 堆肥の種類 3,000kg 1,000kg 500kg 栃木県 用 効 平成 18 年 1 月より抜粋) 果 畜種 施用上の注意 肥料的 牛ふん 中 化学性 物理性 改良 改良 中 中 ○肥料成分を考えて 施用量を決定する。 家畜ふん堆肥 豚ぷん 大 大 小 鶏ふん 大 大 小 牛ふん 小 中 大 おがくず混合堆肥 ○未熟木質は虫害の 発生につながるの 豚ぷん 中 中 大 で注意する。 ○肥料成分を考えて 鶏ふん 中 大 大 牛ふん 中 中 大 もみがら混合堆肥 稲わら混合堆肥 もみがら堆肥 施用量を決定する。 ○肥料成分を考えて 施用量を決定する。 豚ぷん 中 中 大 牛ふん 中 中 中 - 小 小 大 ○物理性の改良効果 が中心 ◆堆肥施用上の注意点 (1)牛ふん堆肥 ①牛ふん堆肥は、肥料成分含有率が他の家畜ふんに比べて低く、繊維質に富み、土壌中で の分解も遅いため、土壌改良的な効果が大きい。 ②一作での肥効率は窒素10~30%、りん酸60%、加里90%程度となるため、連年施用の場 合は加減する。 ③牛ふんに尿が混合した場合は、加里が多くなることがあるため、加里過剰土壌には注意 が必要。 ④もみがらの混合割合が多いときは、土壌改良効果が期待できる。 ⑤おがくず混合堆肥は、未熟の場合発育障害を起こすことがあるため、よく腐熟したもの を使用する。 ⑥稲わら混合堆肥は、水分が高いものが多いため、水分に応じて施用量を決定する。 (2)豚ぷん堆肥 ①豚ぷん堆肥は、肥料成分含有率は牛ふんより高く、鶏ふんより低いが、りん酸含有量は鶏ふ んとほぼ同じである。 ②一作での肥効率は窒素20~40%、りん酸60%、加里90%程度となるため、連年施用の場 合は加減する。 ③副資材が含まれていないものについては、水分が少ない分、肥料効果が大きいため、成 分を把握した上で利用する。 ④もみがらの混合割合が多いときは、土壌改良効果が期待できる。 ⑤おがくず混合堆肥は、未熟の場合発育障害を起こすことがあるため、よく腐熟したもの を使用する。 (3)鶏ふん堆肥 ①鶏ふんは、肥料成分が多く含まれており炭素率も低いため分解が速く、有機物よりも肥料と しての性格が強い堆肥である。 ②一作での肥効率は窒素40~70%、りん酸70%、加里90%程度となるため、連年施用の場 合は加減する。 ③未熟の堆肥は、発育障害をおこすことがあるため、よく腐熟したものを使用する。 ④速効性の肥料として利用できるため、成分を十分把握して利用する。 3.なすの養分吸収特性と施肥の注意点 《なすの栽培における施肥のポイント》 収穫始めから肥料を効かせるとともに、収穫期間中は 連続追肥によって絶えず持続させること!! (1)栽培のポイント ①茎葉の生長は、定植後 1 か月ぐらいから活発になり、茎葉重、果実重ともに生育後半に向 かって急増する。しかし、着果数が増えると果実への同化養分の取り込み量が多く、茎葉 や根への分配量が先細りとなり、栄養成長がにぶってきて、開花数や果数が減少する。 ②初期収量の確保も重要であるが、8月以降に品質の良いものを多く生産することが重要である ことから、草勢維持のための水分管理(あまり乾燥させない)ことが大切である。 (2)養分吸収特性 ①肥料の吸収は、窒素、燐酸、加里ともに生育が進むにつれて増加し、なかでも、収穫始め から収穫最盛期へ、更に、収穫後半に向かって一気に増加する。特に、収穫を始めてから60~ 70日間が最大となる。このため、収穫が始まる頃から肥料を効かせ、収穫期間中は肥効を切 らさないことが重要である。 ②塩類濃度に対する反応は鈍く、野菜類の中では耐塩性が強く、濃度障害を起こしにくい作 物である。EC値の目安は、0.8 ms以下である。 ③苦土の吸収が多く、苦土欠乏が出やすい。 (3)施肥の注意点 ①基肥は、土壌診断の結果に基づいて施用する。土壌診断の結果は、栽培期間中に欠乏症や 生育に異常が発生した場合にも役立つため必ず実施する。 ②追肥は、草勢(花の雌しべの長さ、花弁の色、花の数、葉の大きさ等)をみながら、時期 を調整する。 ③ほ場が乾燥している場合は、追肥と合わせてかん水を行う。(全面マルチの場合は、マル チ下にかん水チューブを設置しておく。) ④草勢が低下してからの追肥は効果の発生が遅れるため、早め(開花盛り)に対応する。 ⑤「園芸用サスペンジョン肥料 1 号」を用いる場合は、ほ場が比較的湿った状態で施用す ると効果的である。 ⑥「IB化成S 1 号」等の化成肥料を用いる場合は、施用後にかん水をするか、降雨の予 報が出ている時に施用すると効果的である。 ⑦台風などで株がもまれた場合は、草勢回復のため窒素成分の入った葉面散布を行う。 ※ 栽 培 の ポ イ ン ト 、 養 分 吸 収 特 性 は 、『 肥 料 取 扱 品 目 解 説 及 び 作 物 別 施 肥 例 年 9月 JA全農とちぎ』から引用 平 成 23 ◆夏秋なす基肥施用量の目安(堆肥の窒素量も計算に入れる) 単位:㎏/ 10 a 台 木 肥料に対する 台木の特徴 肥 料 名 草 勢 、 肥 料 量 牛ふん堆肥 赤なす の 基 準 と な る BB苦土入りなす専用 台太郎 台木。 (自根) 台太郎は低温 期はおとなし 燐焼安加里 1 号 (窒素成分) 露地栽培 3,000 ㎏ 240 ~ 320 ㎏ 20 ㎏ (27 ~ 35kg) 肥 料 名 牛ふん堆肥 はが野有機 666 燐焼安加里 (窒素成分) トンネル栽培 3,000 ㎏ 200 ~ 300 ㎏ 20 ㎏ (15 ~ 21kg) い。 草 勢 が お と な 牛ふん堆肥 カレヘン しい。 BB苦土入りなす専用 3,000 ㎏ 160 ~ 240 ㎏ 牛ふん堆肥 はが野有機 666 3,000 ㎏ 140 ~ 240 ㎏ 草 勢 を 保 つ よ CDU燐加安 60 ㎏ CDU燐加安 40 ㎏ う 肥 料 は 基 準 燐焼安加里 1 号 20 ㎏ 燐焼安加里1号 20 ㎏ より多めに施 用する。 (窒素成分) 低 温 期 の 草 勢 牛ふん堆肥 トルバム は 弱 い が 、 高 BB苦土入りなす専用 温 期 は 強 く な 燐焼安加里 1 号 (28 ~ 36kg) 3,000 ㎏ 200 ~ 280 ㎏ 20 ㎏ トナシム る の で 、 肥 料 (17.4 ~ 23.4kg) 牛ふん堆肥 はが野有機 666 3,000 ㎏ 200 ~ 300 ㎏ 燐焼安加里 20 ㎏ 硫酸マグネシウム 60 ㎏ は少なめに施 用する。 (窒素成分) (23 ~ 31kg) (窒素成分) (15 ~ 21kg) 苦土欠乏に注 意する。 草 勢 は 赤 な す 牛ふん堆肥 耐病VF と 同 等 ~ や や BB苦土入りなす専用 強め。 燐焼安加里 1 号 3,000 ㎏ 220 ~ 300 ㎏ 20 ㎏ 牛ふん堆肥 3,000 ㎏ はが野有機 666 200 ~ 300 ㎏ 燐焼安加里 1 号 20 ㎏ 低温伸長性も ある。 (窒素成分) ○燐焼安加里 1 号 :活着の促進 ○CDU燐加安 :初期生育の促進 ○硫酸マグネシウム :苦土欠乏症対策 (25 ~ 33kg) (窒素成分) (15 ~ 21kg) ◆栽培様式別施肥の目安 ○台木に赤なすを利用する場合の施肥例(10a当たり) 追 栽培様式 基 肥 サスペンジョン肥料 1 号の場合 無加温ハウス はが野有機 666 サスペンジョン肥料 1 号 15 袋 燐硝安加理 はが野有機 666 18 ~ 20 ケース (窒素成分 36 ~ 40kg) BB苦土入りなす専用 サスペンジョン肥料 1 号 12 ~ 16 袋 燐硝安加理 IB化成 15 ~ 20 袋 燐硝安加理 2袋 (窒素成分 36 ~ 46kg) IB化成 15 ~ 20 袋 燐硝安加理 2袋 1袋 (窒素成分 15 ~ 21kg) 露地栽培 (窒素成分 36 ~ 40kg) サスペンジョン肥料 1 号 10 ~ 15 袋 燐硝安加理 18 ~ 20 ケース 化成肥料の場合 1 袋 (窒素成分 21kg) トンネル栽培 肥 (窒素成分 36 ~ 40kg) IB化成 12 ケース 燐硝安加理 7 ~ 12 袋 2袋 1袋 (窒素成分 27 ~ 35kg) (窒素成分 24kg) (窒素成分 14 ~ 24kg)
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