味噌由来乳酸菌のプラスミドの単離と特徴 - 北海道立総合研究機構 食品

北海道立食品加 工研究 セ ンター報告 No.21996[ノ
ー ト]
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ノー ト
味噌 由来乳酸菌 のプラス ミ ドの単離 と特徴
池 田隆幸 ・八 十川大輔 0中 川良二 ・長島浩二
Isolation and Characterization of Plasmids in Lactic Acid Bacteria Extracted
from JapaneseSoybean Paste (Miso)
Takayuki IKEDA,DaisukeYesorawe, Ryoji Narecawe and Koji Nacesurue
乳酸菌 は多 くの発 酵食 品製造 に関与 す る重 要 な菌 の一
の 乳 酸 菌 の 内 40株 が プ ラス ミ ドを保 持 して い る こ とが
つで あ る。北海 道 で は各種 乳製 品,味 噌 ,醤 油 ,漬 物 な
明 らか とな ったが ,プ ラス ミ ドの分 子量 パ タ ー ン等 か ら
どの 乳 酸 菌 関 与 食 品 の 生 産 額 が 食 品 工 業 出 荷 額 の 約
Fig lに 示 す 8つ の タ イ プ に分類 され る こ とが 明 らか と
15%を 占 めてお り,こ れ ら食 品 の付加価 値 をさ らに高 め
な った。 この うち,B18株
るた め に,乳 酸菌 改 良技術 の確 立 は極 めて重 要 な研 究課
題 の一 つで あ る。 中で も,味 噌,醤 油,漬 物 な どの農産
品発 酵 食 品 に極 め て重 要 な役 割 を果 して い る Pιa,oθ
θθ_
してお り,そ のサ イズ もプ ラス ミ ドベ クタ ー として適 当
で あ る と考 え られ た ので,こ の プ ラス ミ ドをベ クタ ー候
ι
郷 属 と呼 ばれ る乳 酸菌 の育 種 改 良技術 は,乳 関係 の 乳
は 1種 類 の プ ラス ミ ドを保 有
補 として選 択 し,pSKPB 18と
命名 し以 後 の解 析 を行 っ
酸 菌 に比 べ て非常 に研 究 が遅 れ て い る。 さて ,遺 伝 子組
た 。また ,こ の分 離 した B18株 は顕 微 鏡観 察 や生 化 学 的
諸 性 質 お よ び リ ボ ソー ム RNAの
塩 基配 列 か ら
換 え技術 は近 年急速 に発展 した育種 改 良技術 で あ り,新
&″ ′
θι
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ι
%s滋 物動″箔 と同定 され た 。
規 食 品 の 開発 や食 品製 造 プ ロセ スの改善 のた め に は必 要
不 可 欠 な技 術 とな りつつ あ る。 この様 な観 点 か ら,我 々
は ル 蒻“οθ
θ
雰 属 を中心 とす る乳酸菌 の 育種 改 良 のた め
の宿 主 ベ クタ ー 系 の 開発 と有 用形質 の探 索 導入技術 の確
Strain
ロ
A6
A9
B18
E7 」 23 J24 M
立 を目指 して い る。 こ こで は遺 伝 子組 換 えに必 要 な プ ラ
ス ミ ドベ クタ ー を構 築 す るた め に,自 然界 か ら乳酸 菌 プ
ラス ミ ドの検 索 を行 ったので報 告 す る。
まず ,乳 酸 菌 の分 離源 として北海 道 内 の味 噌 を製造 し
て い る企 業 4社 か ら発 酵途 中 の 味 噌 10サ ンプル を提 供
して い た だ い た 。 それ ぞれ の味暗 サ ンプル を,滅 菌水 で
10倍 に 希 釈 後 ,15%の NaClと 1%の CaC03を 含 む
GYP寒 天培地 1)に塗布 し 37°
C2∼ 3日 間培 養 した 。寒 天
培地 上 に生 育 して きた コロニ ー の 内,Caco3を 溶 か して
ハ ロー を形成 して い る コロニ ー を好塩 性 乳 酸菌 として分
離保 存 した。その結 果,10種 類 の味 噌 サ ンプル か ら合計
約 200株 の好塩性 乳 酸菌 を分離 した。
次 に,分 離 した菌 の 中 か らプ ラス ミ ドを確認 す る 目的
で ,そ れ ぞれ の菌 を 10%の NaClを 含 む GYP液
体培地
で培 養 した。集菌後 ,プ ラス ミ ドを以 前報 告 した 方法 のに
従 って分離精 製 した。プ ラス ミ ドの検 出 は 0.75%の アガ
ロー スゲル 電気泳 動 で行 った。その結 果,供試 した 200株
Fig.1 Agarose gel electrophoresis of plasmids
from halophilliclactic acid bacteria
M: L-HindIIl marker.l:StrainNo.A4;2:A5;3:
, 4 , 64; : A 9 ;5 : 8 1 86; : E 2 7; : J 2 3 ; 8 : J 2 4
池 田 。他 :味 噌 由来 乳酸菌 の プ ラス ミ ドの単 離 と特徴
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に よる泳動距 離 と,λ ―彫 πdIHマ ー カ ー との比 較 か ら長
さ 3.35キ ロベ ー スペ ア (kb)と 推測 した.2種 類 及 び 3
EθORI
種 類 の 酵 素 で 同時 に切 断 して切 断部 位 間 の 距 離 を測 定
し,Fig.2に 示 す制 限酵素切 断地 図 を作製 した。
pSKPB 18は ,3.35 kbと 比較 的小型 の プ ラス ミ ドで ,
塩 基 配列 の解 析 な どが 容 易 に行 う こ とが で きる と考 え ら
れ た 。 また,外 来遺伝 子 の ク ロー ニ ン グサ イ トとして 6
f り% I I
ムr グ
πグI I
θRI,動 zII,夏 ″ I,32π IⅡの切
塩基認識 の制 限酵素 E6・
断 サ イ トを有 してお り,プ ラス ミ ドベ クター として有 望
〃グ
πグIII
で あ る と考 え られ た。今後 は,さ らに この pSKPB 18の
解 析 を進 め る と共 に,宿 主菌 の形 質転 換 法 の 開発 を検 討
Fig.2 Restriction map Of pSKPB1 8
pSKPB 18を
液 体 培 養 した B18株
か ら分 離 精 製 した
後 ,超 遠 心機 を用 いた平衡 密度 勾 配遠 心 法 ので さ らに精
製 し た。 こ の pSKPB 18を
I,動 “HI,
制 限 酵 素 Bα′
BαπIH,セ ′
H,EC・θRI,Eθ θRV,ル
Ps・
′
I,R%II,動
す る予 定 で あ る。
αI,〃 ′
πdIⅡ,4ク πI,
′
I,Sπ αI,シ カI,Xι αI,X力 οI(いずれ
も宝酒造い製)で ,切 断反応 した。反応 条件 は,そ れぞ
θRI,動 %II,
れの酵素 の最適条件 で行 った。その結果,E6・
Iで 2カ 所切
屁″I,BαπIⅡで 1カ 所ず つ,彫 πdIⅡ,Bα ′
ー
ロ
スゲル電気泳動
断 され ることが明 らか とな り,ア ガ
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π″γ Cわπグ
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