野木幹男:エフェクターを使いこなす! DAW ソフト全盛時代になって大きく様変わりしたのがエフェクターまわり。手軽に多くの種類のエフェクター を使えるようになり、そのルーティンも自由自在に設定できるようになりました。ただフレキシビリティが高く なった分、使いこなすのは難しくなったと言うこともできます。複数のエフェクターをかけ合わせるにしても、 どんなエフェクターをどんな順番でかけるか、どんな音源に、どのようなプロセスでかけるのかといったことに よって、その効果は大きく異なります。1 つ 1 つのエフェクト効果やパラメーターに習熟すると同時に、その組 み合わせやかけ方に関しても詳しく考察していきましょう。 第 16 回:ドラムのエフェクト ( 2009 年 12 月 14 日 ) 今回はリズム・セクションの要、ドラムのエフェクトについて解説していくことにしましょう。ドラムもエフェクト次第 で質感やグルーブ感をがらりと変えることができるので上手く活用したいものです。 ■個々のパーツにかけるエフェクト 基本形は例によってコンプレッサーと EQ の組み合わせということになります(fig.1)。これによって、エンベロープと音 色を調整することができます。この組み合わせはバスドラ、スネア、タムなどのいわゆる太鼓系それぞれに使うときめ細 かなサウンドを作ることが可能です。対してシンバル等の金物類でニュアンスが重要な時にはコンプレッサーであまりつ ぶさない方が良い結果となる場合もあります。 fig.1 ドラムのエフェクト・ワーク例 コンプレッサーは音の粒建ちを揃える目的のほかに、ベースと同様にアタック・タイムを調整することによってアタック を強調することができます(fig.2)。ドラムの場合はリリースタイムが短く、ほぼ一定しているのでエンベロープのコント ロールがしやすいと言えるでしょう。コンプレッサーを音作りの道具としてより積極的に活用することができます。コン プレッサーにゲート機能が付いている場合には余分な余韻をカットしてタイトなサウンドに仕上げることも可能です。 コンプレッサーでエンベロープを調 fig.2 コンプレッサーとゲートでエンベロープを調整 整した後に EQ で音の調整を行いま す。ドラムの場合、ノイズ成分が含まれて いてスペクトルの帯域が広いので強調す る部分によってサウンドががらっと変わ り、これだけでもバリエーション豊かな音 作りをすることができます。 バラード等の場合にはリバーブも積極的に利用されます。楽曲にもよりますが、一般的にはバスドラはドライで、スネア とタムをメインにリバーブをかけます。ホールやルームなど長めのものが合うでしょう。もちろん必要に応じてディレイ を使ってもいいでしょう。また、ショート・ディレイを使うとロック系など臨場感のある元気なサウンドに演出すること ができます。 fig.3 ゲートリバーブで独特な雰囲気に ゲート・リバーブは主にスネアに使われま す。リバーブとノイズ・ゲートを組み合わ せたようなエフェクトで、リバーブ音を減 衰途中でバサッと切ってしまいます (fig.3)。リバーブが急になくなる喪失感 が独特な雰囲気を生み、80 年代に流行り ましたが、現在でも使いどころによってはなかなか新鮮です。リバーブが途切れるまでの時間を調整することによってグ ルーブ感をコントロールすることも可能です。さらにロック系では主にスネアに対して歪み系のエフェクトをかけてワイ ルドなサウンドを作り出すことができます。 ■ドラム・セット全体にかけるエフェクト ここまではドラムの個々のパーツにエフェクトをかける場合の話ですが、ドラム・セットとして全体的にエフェクトをか けるアプローチもあります。よく使われるのはドラム・セット全体にトータルにコンプレッサーをかけるというやり方で す。楽曲全体にトータルにコンプレッサーをかけることがありますが、これとは別にドラム・セットだけにコンプレッサ ーをかけておくとドラムとしてのサウンドをまとめることができます。ドラム・セットに使用するコンプレッサーは通常 のものでもいいですが、マルチバンド・コンプレッサーなども試してみると良い雰囲気を出せることがあります。またフ ランジャーやフェーザーなどを全体にかけるとかなり派手なサウンドとなり、スポット的に導入するとシーンによっては 効果的です。 今回まではリズム系のパートの典型的なエフェクトを見てきましたが次回は上物であるストリングを解説しましょう。
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