チーズホエーの有効利用に関する試験研究

チ ー ズ ホエ ー の有効利用 に関す る試験研究
(H7)
加 工 食 品部 畜 産 食 品科 田 村 吉 史 川 上 誠
研 究 の 目的 と概 要
牛 乳 よ リチ ー ズ を製 造 す る場 合 , 約 9 0 % が ホ エ ー と して排 出 され て い る 。 現在 主
に 行 われ て い る ホ エ ー の 有 効 利 用 や処理 に は , 大 きな設 備 が 必 要 で あ るた め , 処 理
量 の 大 き い 大 手 乳 業 メ ー カ ー では行 な え て も, 中 小 の メ ー カ ー では 難 しい 。 そ こで ,
ー
一
中小 の メ ー カ ー で も可 能 な ホ エ ー の 利 用 方 法 の つ と して, ホ エ 中 に含 ま れ る乳
ー
糖 分 を酵 母及 び 酢 酸 菌 に よ り発 酵 させ , ホ エ を原 料 とす る食 酢 の 製 造 につ い て 検
討 した 。
試験 研 究 の 方 法
ー
乳 糖 を ア ル コ ー ル 発 酵 出来 る酵母 の倒 ″″ θr “ μ θs ″ ″ f " ¨ 用 いて , ホ エ 中に
O わa c t ″ ′εθιf S u b s p .
含 まれ る糖 分 で あ る乳糖 をア ル コー ル 発 酵 させ , 次 い でИc θι
a c θιf I F 0 1 4 8 1 8 T 株及 びИεθι
οわa ει釘 ″ s t θ″ f " 口S I F 0 1 4 8 1 4 株を用 い て 酢 酸発 酵
させ た. 酢 酸発 酵 は , 5 0 0 m l 容 バ ッフル 付 き フ ラ ス コ に 1 0 0 m l の液量 を入 れ , 3 0 ℃ で
1 2 0 r p m の撹 拌 を加 え て 行 った。
酵 母 の 培養 に は, Y M L 培
地 ( 酵母 エ キ ス0 . 3 % , マ ル トエ キ ス 0 . 3 % , ポ リペ プ トン
0 . 5 % , ラ ク トー ス 1 . 0 % ) を用 いた。
試験 に使 用 した ホ エ ー は, 1 0 % 脱
脂 粉 乳 溶 液 に l N H C l を用 い てp H を 4 . 6 と し, 1 0 0
℃ , 3 0 分 間加 熱 して カゼ イ ンを沈殿 除去 した 。 必要 に応 じて2 ∼ 3 倍 濃縮 液 を 調製 し
た。 ま た , 発 酵 時 の p H 調製 は , 別 途 滅 菌 した l N N a C l を加 え る こ とに よ って 行 な った.
エ タ ノール は GLC,酢
酸 は HPLCに
よ って定 量 した .
実験結 果
ー
地 の ラ ク トー ス 濃度 を 変化 させ た 場 合 の , 供 試 酵 母 に よ る エ タ ノ
ル 発 酵 の 変化 を示 した 。 ラ ク トー ス 濃度 の 増 加 と と もに エ タ ノ ー ル 量 は増 加 した 。
ラ ク トー ス 濃度 1 6 % 程度 が エ タ ノ ー ル 発 酵 させ る上 で 良好 で あ った。 ま た , 供 試 酵 母
図 1 にY M L 培
は 8 % 程度 の エ タ ノ ー ル 量 が 限界 であ った。
ー
図 2 に 3 倍 濃縮 した ホ エ ー を用 いて , 各 温度 によ リエ タ ノ ル 発 酵 させ た場 合 の エ
ー
タ ノ ー ル 量 の 変 化 を示 した . 3 倍 濃縮 した ホ エ ー の ラ ク ト ス量 は 1 4 % 程度 あ り, 理
ー
論 的 には 7 % 程度 の エ タ ノ ー ル が生 成 され る . エ タ ノ ル か ら酢 酸 へ の 変換 は , 理 論
的 に は 1 対1 であ る こ とか ら, 3 倍 濃縮 ホ エ ー を使 用 す る こ とで, 食 酢 にす るた め の 十
分 な量 の エ タ ノ ー ル が 得 られ た。供 試 酵 母 に よ る良 好 な 発 酵 温度 は , 3 0 ℃ で あ る こ
とが 示 され た.
ホ エ ー の エ タ ノ ー ル 発 酵 に よ り約 5 . 5 % のエ タ ノ ー ル を 含 む ホ エ ー を作 製 し, こ れ
を殺 菌 後 酢 酸発 酵 させ た ところ, 約 5 日 で酢 酸分 3 . 5 % とな った. 撹 拌 発 酵 した こ とに
―-15-―
よ り, エ タノー ル の 蒸発 が起 こ り理論 値 よ りも低 い 値 とな ったが , 作 製 され た ホエ
ー 原料 の 食酢は, ミル ク臭 を持 つ特 徴 を有 して いた。
要約
ー
ー
チ ー ズ生 産 によ る副産物 であ るホ エ を利用 して食酢 の 製造 を検 討 した 。 ホエ
の ア ル コー ル 発 酵条件 を検討 した と ころ温度 は, 3 0 ℃ が 良好 であ り, 次 いで行 う酢
ー
ー
ー
酸発 酵 で も, 良 好 な発酵 がみ られ た. 約 5 . 5 % のエ タ ノ ル を含む ホ エ の エ タ ノ
ル 発 酵品を酢酸発酵 させ たところ, 約 5 日で酢酸分 3 . 5 % とな った. 理 論値 よ りも若千
ー
低 い酢酸量 とな ったが , 作 成 された ホエ 原料 の 食酢 は, ミル ク臭 を持 つ 特徴 を有
して いた。
͡
じ 劇す ミ H
︵
じ 囃 ミ ー ヽ いH
︵
10
15
3)
発酵日欧( d ●
ソ
20
25
30
!0
│)
d●
発l l 日敗〈
ソ
´ ヽ
ー
図 1 エ タ ノ ー ル 発 酵 に お け る ラ ク ト ス濃 度 の 影 響
-16-
図 2 エ タ ノ ー ル 発 酵 にお け る温 度 の影 響