Holly You and Me vol.1 紅葉色の春、訪れて 堀内優美 ■裏山 モミジの新芽が顔を出しはじめた。 根元に近い枝から芽吹き、初夏を迎える頃にはてっぺ んの枝まで葉をつけ、立派な緑の樹木となる。モミジとい えば秋を連想しがちだが、四季を通じて七変化する様は 美しく魅力的だ。 幼少の頃、祖母に連れられ、家のそばにある裏山(扉 の写真)をよく散歩した。標高80メートルの小さな山であ ったが、春には桜、秋には紅葉と賑わいをみせていた。 裏山への散歩が日課だった祖母は、私が幼稚園から 帰ってくると、「山へ登らんか」と言っては連れ出した。 ■新芽 ある日、山道を歩いていると、道端に小さなモミジが地 面からちょこんと生えているのを見つけた。 5つに切り込まれた葉っぱが土から顔を出す光景に、 「見て!おばあちゃん。モミジが地面から生えてるよ!」。 めずらしがって興奮する幼い私に祖母は、「ああ、モミジ の芽やな」と言って根からすくい上げるように優しく摘み、 家に帰るや植木鉢に植えて水をやった。 「これはな、おまえさんの背を超す大きな木になるんや で」 祖母の言葉に私は、へぇ……と感心し、「じゃあ、どっち が先にノッポになるか競争だね」なんてことを言いながら 楽しみに観察した。 小さな芽はやがて二叉に分かれて枝を持ち、2つ3つと 葉をつけていく。夏が来る頃には10センチほどの高さに なり、秋になるといっちょまえに紅葉した。 <アイデアニュース編集部より> サンプル版は、ここまでとなります。もし良ければ、商品 版をご購入くだされば幸いです。 →商品のページへ
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