Page 1 神奈川県立教育センター研究集録10:137〜138. 1991 植物組織

神奈川県立教育センター 研究集録10:137∼138 .1991
植物組織の教材化に関する研究
一メマツヨイグサの胚発生について一
岡見 多加志
植物の胚発生の様子を観察するために 、メマツヨイグサの子房を用いてプレパラートを作 った 。いまま
で、
教科書だけで済ませがちの単元であ ったが 、教師が自ら角意したプレパラートを授業で用いることは
有益であると考えた
。
材料と方法
は 1二 め に
(一)材料
理科教育では 、実験や観察を行いながら授業を進
めるよう唱えられているが 、実験や観察がなかなか
材料は 、メマツヨイグサを用いた 。メマツヨイグ
行いにくい分野もいくつか存在する 。その一つに植
サは 、1目花で受精した目時がは っきりしており
物の発生がある 。植物の発生に関しては 、高等学校
子房も犬型なので扱い易い 。この材料は 、6月から
、
の生物の分野では 、個体の形成と分化の仕粗みとい
9月頃まで路傍に生育し 、花の犬きさが2から3c藺
ところが 、動物の記載に比
で花びらと花びらの間に隙間があり 、葉の中肋のと
べて 、植物の扱われ方は極端に少なくどの教科書に
ころが赤みを帯びている(佐竹1989)ことから同定
おいても3分の1程度であ った 。さらに動物に関し
した 。本実験に使用したメマツヨイグサは 、県立教
てはいくつかの実験が知られているが 、種子植物の
育センター 近くのものと県立栗原高校付近のものを
胚発生に関しては筆者の知る限りでは知られていな
用いた
う項目で扱われている
い。
。.
(2)研究の方法
業を取り入れることを目標に 、研究を進めることに
した
。
そこで 、植物の発生の単元で実験観察による授
採敢した子房をまず管瓶にいれ 、FAA液(70%
回
植物の発生に関する実験を取り入れるためには
工タノール30〃 、ホルマリン10皿1 ,氷酢酸2耐1)を
、
どのようなことが必要か検討することから始めるこ
試料が完全に浸る程度加え 、4時間固定した 。次
とにした 。どのような間題が合まれているのかも分
に、
からなか ったので 、教科書に登場する図を作ること
脱水した
別の管瓶に試料を移しn 一プタノー ル法により
。
から行 った 。その方法は 、パラフィン包埋したもの
パラフィン誘導は 、午前中にクロロホルムに浸透
をミクロトームで切断するという従来からの方法で
したのち 、夕方フ ェノール10gをキシレン50〃に溶
ある
かした溶液にいれた 。次に 、ベンゼンに浸してか
。
教材化するためには 、簡単に実験観察を行うこと
ら、
60℃に暖めたパラフィン溶融器内で 、ベンゼ
ができ 、材料も手軽に用意することが可能なことが
ン:パラフィンr1:1の溶液に浸した 。その後
必要である 。生徒による実験や観察が可能な方法を
60℃にして融解したテイシ ュウプレッ プに2時間ず
、
探すことが目的であ ったが 、今回の検討では糧子植
つ3回浸し包埋した
物の胚発生に関して教材化する方法は見つからな
包埋した試料は 、滑走式ミクロトームで10〃皿の
しかしながら 、教師自ら作成したプレパ
厚さに切り 、スライドグラスに張り付けた 。プレパ
かっ
た。
。
ラートで授業を行うことは 、有益であると考えられ
ラートは 、常法に従 って 、キシレン 、100%工タノー
た包
ル、
水の順番に 、それぞれに置換してから酢酸カー
ミンで染色した 。このプレパラートは 、再び工タ
平成2年度 理科教育研究講座研疹員(生物)
ノー ル、 キシレンの順に置換し 、オイキ ットで封入
神奈川県立栗原高等学校
した
一137一
。
a.
胚のう b .珠心
内珠皮 d .外珠皮
C.
箏1図 子房の誰断面
第2図
第1衰
闘花後の子房の大きさ
子房
日数
1
2
3
A
7
10
9
B
9
C
D
G
子房壁
e.
子房の讐断面(拡大)
平 均
E
F
15
7
7
7
7
17
8
9
8
9
11
8
10
16
12
9
10
H
I
J
8.
8
10 .8
14
12
10
11
18
10
10
10
11 .2
4
11
17
15
11
10
20
10
11
10
13
12 .8
5
12
16
16
10
13
22
11
12
12
13
13 .7
6
13
16
21
12
13
21
12
14
14
15
15 .1
7
14
19
22
14
15
20
13
15
14
16
16 .2
8
15
17
21
14
16
24
16
15
16
17
17 .1
9
15
18
24
15
15
24
16
14
15
17 .3
10
15
20
17
17
26
16
8
18 .5
(単位 m)
詰 果 と 考 察
で2倍の犬きさに成長していた
。
種子が形成されていくとき 、まず胚嚢母細胞が分
(1)胚■月辺組讐の形熊
裂し胚嚢ができる 。そして 、めしぺの先端に付着し
開花後22時間目の子房の組織では 、外側から子
た花粉が発芽し 、花粉管をのばし胚嚢で受精する
。
外珠皮 、内珠皮 、胚嚢とな っており 、これらの
子房の成長の過翻こは 、このような段階カミ合まれて
組織が観察された 自この22時間の間に花粉管がのび
いるはずであり 、今回明らかにできなか ったが 、こ
精核と卵細胞中の核とが受精し 、卵細胞は分裂を開
の子房の成長の記録も観察の適期を示すための犬切
始して胚を形成していく 。今回の観察では 、これら
な資料になるものと思われる
房、
。
の過程を観察することはできなか ったが 、観察した
引 用 文 献
ものの中には 、分裂していると思われるもの及び胚
嚢が欠落してしま ったと思われるものなどが観察さ
れた
1.
。
猪野俊平1954植物租織学
内田老鶴圃新社
(2)子房の成長について
2.
濱健夫1958植物形態学 コロナ社
メマツヨイグサの子房は 、子房下位であり開花後
3.
湯浅明1976花細胞と生物学 朝倉書店
より成長を始め 、日数の径 っているものほど成長し
4.
佐竹義輔1989目本の野生植物 平凡社
ていた 。このように 、始め8 ,8mあ ったものが9日
5.
佐野 豊1981組織学研究法 南山堂
一138一