H22年7月_断章第1号_「環境問題と仏教」その2 - 正覚寺 - FC2

りびんぐらいぶず断章(平成 22 年 6 月第 1 号) _「環境問題と仏教」プレゼンテーションを終えて
りびんぐらいぶず断章
平成22(2010)年7月第 1 号
環境問題と仏教(その2)
◆一 .環 境 問 題 と仏 教 の課 題 の接 点
戦 後 の 私 達 は、 「 環 境 」 と は 、 自 己 を 除 く 外 界 を 指 す と 考 え がち で す 。
環 境 問 題 は、当 初 「公 害 問 題 」と称 して、加 害 者 と被 害 者 の対 立 構 造 をと
りました。歴 史 をひもときますと旧 くは明 治 年 代 の足 尾 鉱 毒 事 件 に端 を発 し、
戦 後 は一 九 六 0年 代 から七 十 年 代 にかけて顕 在 化 した水 俣 病 等 の四 大 公 害
問 題 がそ の 例 です 。こ れ が 当 初 の 環 境 問 題 だ っ た の です 。
しかし、地 球 環 境 が有 限 である一 方 において、経 済 活 動 の規 模 が増 大 する
につれ、誰 もが被 害 者 であると同 時 に加 害 者 になるという事 態 を招 くように
なりました。もはや、環 境 問 題 は自 己 を切 り離 した外 界 の問 題 ではなくなった
のです。皮 肉 なことに環 境 汚 染 の進 展 が却 って環 境 の本 質 に目 を開 かせるよ
う に なっ た と い え ます 。
典 型 的 な地 球 規 模 課 題 が 、 地 球 温 暖 化 問 題 で す 。
その仕 組 みは、地 道 な科 学 的 観 測 データの集 積 と解 析 によって明 らかにな
りました。その成 果 が評 価 されて国 連 IPCCが二 00七 年 のノーベル平 和 賞 を
受 賞 した こ と は皆 様 も ご 記 憶 に 新 し いこ とでし ょ う 。
地 球 規 模 課 題 に対 処 するには、本 来 、世 界 的 視 野 から公 平 に対 処 すべきで
あ る の に 、国 家 間 の 利 害 損 得 がこ れを 阻 みま す 。
地 球 温 暖 化 問 題 は 科 学 の 成 果 に 政 治 が 追 い つ け る か ど うか に あり ま す 。
政 治 を支 えるのが社 会 であり、社 会 を構 成 するのが衆 生 ですから、衆 生 をし
て仏 教 理 念 でいかに方 向 転 換 せしめうるかが「環 境 問 題 と仏 教 の課 題 の接
点 」 に な る と 考 えら れ ま す 。
◆二 .社 会 の方 向 転 換 を促 す仏 教 理 念
① 「 小 欲 知 足 ( 欲 望 を 抑 え 、 足 る を 知 ろ う) 」
気 候 変 動 に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル ( I P C C ) パチ ャ ウ リ 議 長 は 「 温 暖 化 の 影 響 を
受 けるのは子 や孫 の世 代 、対 策 を採 り得 るのは現 世 代 の我 々で、そこで、子 や
孫 の時 代 の為 に行 動 を起 こすには「小 欲 知 足 」の東 洋 の智 慧 が必 要 だと説 き
ます。衆 生 には未 来 の衆 生 も入 ります。韋 提 希 が未 来 の衆 生 を慮 ったように、
【URL】http://syohgakuji.web.fc2.com/、【E-Mai l】mhkatata@pluto.dti.ne.jp、平成 22 年7月26日発行、Ver.2 P 1
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地 球 温 暖 化 問 題 では未 来 の衆 生 の苦 悩 を和 らげることが問 われており、それ
に は 、 現 世 代 が 、今 、行 動 を 起 こ さな け れば な ら ない と考 え ら れま す 。
②「勿 体 ない精 神 」
「勿 体 ない」という言 葉 は、ケニヤのマータイ女 史 により世 界 語 となり、近 く
は 、 嘉 田 滋 賀 県 知 事 が 政 治 理 念 に 掲 げ まし た 。
「勿 体 ない」は、ものの命 を生 かしきる理 念 であるのみならず、深 くは、如 来
様 のお救 いに遇 い「慚 愧 と歓 喜 (ざんきとかんき)」の思 いから生 活 次 元 で吐
露 さ れ た お 同 行 の 大 切 の 言 葉 でし た 。
二 0 0 七 年 五 月 、 アジア で の 会 合 で「 ク ー ル ア ー ス 五 十 ( C o o l E a r t h 5 0 」を 訴
え た 当 時 の 安 倍 首 相 の 提 言 は 地 球 温 暖 化 ガ ス ( G HG ) を 現 状 から 5 0 % 削 減 し
ようという明 確 なポリシーを示 したというので、今 も尚 、専 門 家 の間 で高 く評
価 さ れ て い ます 。
地 球 の C O 2 収 支 を 見 ま す と 人 類 の 排 出 量 が 自 然 が 吸 収 す る 量 の 二 倍 に昇
っ て い るの です 。何 と し て でも 排 出 量 を 半 減 さ せ な くて は なり ませ ん 。
九 七 年 に採 択 された京 都 議 定 書 は先 進 国 限 りの削 減 義 務 であり、途 上 国
で 成 長 著 し い 中 国 等 が 削 減 義 務 を 負 わ ない ア ン バ ラン スな 仕 組 み で す 。
そこで、ポスト京 都 議 定 書 の取 組 には、先 進 国 の中 で離 脱 した最 大 の排 出
国 である米 国 にも参 加 を促 し、成 長 著 しい中 国 等 にも共 通 の土 俵 に昇 って貰
わ な く ては な り ません 。
現 状 で は、 先 進 国 と 途 上 国 の C O 2 排 出 量 は 丁 度 5 0 対 5 0 なの で す 。
そ こ で C O 2 排 出 レ ベル を 途 上 国 で は 現 状 維 持 を 、 先 進 国 は 技 術 開 発 に よっ
て ゼ ロ ( は さ す が に 困 難 な の で 、 八 十 % 削 減 ) を 目 指 そ う と い う構 想 な の です 。
そ の 出 発 点 は 現 時 点 、 到 達 時 期 を 2 0 5 0 年 に 設 定 した の です 。
何 重 にも意 味 あるフィフティ(50)を織 りなして「共 通 だが、差 異 ある責 任 」
を設 定 することによって、全 世 界 が一 国 の漏 れなく参 加 できる仕 組 みにしよう
というわけです。当 時 の安 倍 首 相 のこの「クールアース 50」提 言 は、同 じく「勿
体 な い 」 精 神 を 基 礎 にし て い ます 。
「 小 欲 知 足 」 と「 勿 体 な い 」 精 神 は 、省 エ ネ 、 省 資 源 、3 R ( 削 減 、再 使 用 、 リサ
イクル)を促 進 して循 環 型 社 会 と低 炭 素 型 社 会 構 築 を支 援 する理 念 となりう
る の です 。
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③縁 起 と輪 廻 転 生
御 門 主 様 が最 近 の論 文 でお取 り上 げになった「縁 起 」と「輪 廻 転 生 」は、生
物 多 様 性 維 持 を 支 える 共 生 の 理 念 た り得 ま す が、 こ こ で は割 愛 し ま す 。
◆三 .宗 門 や我 々の使 命
日 本 は、気 候 変 動 枠 組 み条 約 第 三 回 締 約 国 会 議 (COP3)でお膝 元 の京 都
で 採 択 さ れた 京 都 議 定 書 の 第 一 約 束 期 間 ( 2 0 0 8 / 4 ∼ 2 0 1 3 / 3 )内 に 9 0 年 比
G H G 6 %の 削 減 義 務 を 負 っ て いま す 。
京 都 に 集 い活 動 す る私 達 は ま ずこ の 事 実 を 忘 れ て はな り ませ ん 。 2 0 0 5 年 に
発 効 した 京 都 議 定 書 の 義 務 の 履 行 は 日 本 の 国 家 的 義 務 なの です 。
これに応 ずるに産 業 界 は乾 いた雑 巾 を絞 る努 力 を重 ねて削 減 実 績 を挙 げ
て 来 た の に、 オ フィ ス部 門 や 、 家 庭 部 門 は却 っ て 増 大 して い るの で す 。
宗 門 の活 動 はいわゆるオフィス活 動 に分 類 されます。期 間 内 に京 都 の御 本
山 でご遠 忌 を営 むからには、かかる国 家 的 義 務 履 行 にどのような共 同 歩 調 を
採 り 得 る かが 問 わ れてい ま す 。
具 体 的 な取 組 としては、今 年 一 月 環 境 庁 が提 起 した国 民 的 運 動 「チャレン
ジ 2 5 キ ャ ン ペー ン 」が挙 げ ら れ ます 。
http://www.challenge25.go.jp/index.html
こ の 中 に 宗 門 や 我 々個 人 が 取 り 得 る 対 策 や 行 動 の 可 能 性 が あり う る と 考 え ら
れます。合 掌 。
(後 書 き)GHG削 減 は叫 べば実 現 できる夢 物 語 ではなく、これを実 効 あらしめ
るためにはその原 資 を捻 出 するためにも国 内 産 業 が其 々の地 域 で成 長 期 に
花 開 く よ う 国 の 補 助 政 策 が 欠 か せ ませ ん 。
その意 味 で環 境 問 題 は決 してきれいごと(顕 彰 隠 密 の顕 の意 味 )で達 成 で
きるものではなく、国 内 産 業 の育 成 と雇 用 の創 出 により国 力 を充 実 させるこ
と ( 隠 彰 の 意 味 ) こ そ 重 要 なの です 。 合 掌
◆正覚寺仏壮例会 毎月第一日曜日午後八時より
◆正覚寺仏婦例会 毎月十六日午後七時半より
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住職
堅田 玄宥
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